紅と藍の別れ?
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日もそれなりに高くなった頃、ようやく鬼宮は悟浄の腕の中で目を覚ました。
鬼宮「ん?うーん、俺、寝てた?」
悟浄「おはようございますお嬢様、まずは朝食をどうぞ」
鬼宮「ふにゃぁあ!な、なんで、悟浄の膝の上にいる?!」
悟浄の口説き文句に、寝起きの思考が一度で吹き飛んだらしい鬼宮がパニックに陥る。
悟浄「ぉわっと、そんな暴れんなって。落ちるから!今はジープで移動中。凛華ちゃん、帰って来てすぐ俺様にしがみついて寝ちゃったからそのまま抱えて移動してたの。状況理解できた?」
優しく、ジープの定位置に鬼宮を降ろしながら、悟浄が説明してやる。
鬼宮「全然、覚えてない。確か、森の中で妖怪退治して、月が西に傾き始めた所までは覚えてる。それから、超音波でジープの位置を確認して戻ってきたんだ。それで、悟浄を見つけて、地上に降りた所までは,、なんとか記憶がある」
悟浄「あー、じゃ、妖怪化解けてからはあんまり覚えてないのね?」
鬼宮「うん、一座に居た時も、術を使い過ぎた時は似たような感じで。アニキにいつも迷惑かけてた。早く武装解いて飯食えって、よく言われた」
悟浄から朝食をもらい、咀嚼しながら、鬼宮は話し出す。
悟空「アニキって凛華、、兄ちゃんとかいたの?」
鬼宮「あー、違う違う。一座をまとめてた座長。半妖だったけど、一番慕われてて、みんなアニキって呼んでた。半妖なのに、妖怪にも人にも寛大でさ。よほど悪さをしてる妖怪じゃなきゃ退治の依頼を受けなかったんだよ」
そこで、ごくんと鬼宮は朝食を食べ終える。
悟空「ハンヨウってことは悟浄と一緒?」
鬼宮「そう。そして、座長の最後の言葉が、俺達の仇を取ってくれ、だったんだよ。仲間と殺し合って全身傷だらけになりながら、最後に俺の目の前で自害した。俺が、唯一慕ってた人だ」
鬼宮の声が陰る。
仲間を失った時の事でも思い出しているのだろうか。
いつも以上に暗い声に、悟浄の胸は強く締め付けられる思いがした。
悟浄「凛華ちゃんはさ、そのアニキって人の事、好きだった?」
それは自身が聞きたくても、ちょっと勇気がいる質問だった。
でも、聞かないと鬼宮に想いを寄せる悟浄は先に進めない気がした。
鬼宮「んー?アニキはアニキだったな。あーうーん、恋愛対象だったかって意味なら、ライバル多すぎて、男に対して使う言葉じゃないかもしれないけど、高嶺の花みたいな感じ?一座には女も少なくなかったし、みんなアニキの女になりたがってたな。俺はそうだなぁ・・・うーん、うーん、アニキは統率力も高くて、いつも凛としてて強かったから、憧れではあった。超えてやりたいって思いは強かった。異性としては・・・あんまり見てなかったかな」
一生懸命、腕を組んで当時の事を思い出して語る鬼宮の顔には、眉間に皺が寄っている。
よほど当時は、恋愛とは無縁だったらしい。
そのことにほっと胸を撫で下ろす悟浄だが、ある意味これからが試練だとも感じる。
鬼宮はこれまで妖怪化する夜だけ体を預けてきてくれたが、それ以上の接触は今朝以外はありえなかったし、彼女の口から好きの一言は言われたことがないのだ。
悟浄は何度も好きだと言っても、いつも生返事ばかりだ。
もし、最後が迫っているなら、その前にちゃんとした返事が欲しかった。
悟空「なぁなぁ、アニキって凛華よりも強かったのか?」
悟空が恋愛事情よりも、アニキの強さに興味を持つ。
鬼宮「あぁ。強かった。アニキの武器は俺と違って少し長めのレイビアでさ。俺の一座は、三部構成で、第一陣はアニキの指揮で、アニキが一番に影を縫いつける。それに乗じて敵が混乱した所を俺が率いる第二陣の大立ち回り舞台が狩る。俺らが狩り損ねた雑魚共を、第三陣が狩るって感じだった。人数的には一座は15人くらいだったかな。一つの陣は小さくて、5人で構成されてたから」
悟空「へえ、集団での戦闘って面白そうだな」
悟空はごく自然に、一座の戦い方に感心しているが、他の三人は違った。
妖怪を専門に狩りをしていた一座を壊滅に追いやった、一人の妖怪幻術師の恐ろしさを想像する。
たった15人と言ってしまえばそれまでだが、訓練され妖怪退治に慣れた集団。
その一人一人に全員触れて幻覚に落とし、全滅させる技量を持った相手と対峙した場合、果たして自分達はその幻術から逃れられるだろうか。
昨日、一目散に逃げろと言った鬼宮の言葉が、一座の構成を聞いた今だからこそ、その重みが伝わる。
鬼宮「みんな、強かったよ。アニキは群を抜いて素早かったんだ。術中に落とすのも早くて、行指示も的確でさ。いつも最高の状態で俺らにバトンを渡してくれる。そんな凄い人だったんだよ。俺が乗り越えたかった人だ」
三人の胸中を知ってか知らずか、鬼宮は言葉を紡ぐ。
悟空「あのさ、そのアニキってのが、ハンヨウなら、悟浄と同じなんだろ?そしたら、悟浄も昨日凛華がやったみたいに影、操れたりすんのかな?」
興味津々と言った様子で瞳を輝かせて、悟空が身を乗り出して聞いてくる。