紅と藍の別れ?
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地に落ちているクナイの影が盛り上がり、影の外へと人の手が出てきた。
影から人の両手が出てくる。
続いて、見慣れた藍色の髪をサラサラと流して、鬼宮の頭部が影から現れた。
悟空「え、えっええ!凛華?な、なんで、影の中から?」
鬼宮「悟空、何を驚いている?俺は影使いだぞ?」
悟空の驚嘆の声に、影から上体を出し終えた鬼宮は、両手を地に着いたまま、一行の目の前で残りの下半身も影の中から出した。
鬼宮「悟浄、お疲れ様。気付いてくれないかと思った」
クナイの影から完全に出て、振り返り気味に悟浄に声をかける鬼宮に、彼は持ち上げていたクナイを捨てて抱き着いた。
鬼宮「ごっ悟浄!そんなに心配だったか?」
突然抱きつかれて、声が裏返るが、小さく耳元で囁かれた言葉を聞いて、彼女は笑みを零した。
悟浄「・・・よかった、生きててよかった」
鬼宮「心配かけた。悟浄が気付いてくれなかったら、どうしようかと思った」
喉の奥でくつくつと笑う鬼宮。
彼女の温もりが腕の中にあるというのに、失ったのではという恐怖心が抜けきらず、腕の力が抜けない悟浄の腕に彼女はそっと手を当てる。
鬼宮「俺は、生きてるから、死んでないから、大丈夫だ」
八戒「えーと、お熱いところ、申し訳ないんですけど。凛華さん、どうやって助かったんですか?」
八戒の問いに、視線を悟浄から外して、鬼宮が答える。
鬼宮「あぁ、それな。悟浄、ちょっと離して」
悟浄「あ、ぉ、おぅ」
鬼宮に促されて、我に返った悟浄が恥ずかしげに離れ、彼女は自分の首元から何かを剥がしとった。
悟空「それは?」
そんな悟浄を気にするでもなく、素直な疑問を発する悟空。
鬼宮の手の内にあるのは、肌色の折れ曲がった紙切れのようなものだ。
鬼宮「これはな、耐鋼札だ」
悟空「たい、こうふだ?」
鬼宮「あぁ、文字のごとく、鋼に耐える札だ。鋼で強い衝撃を与えると、それを弾く効果がある物で、退治屋の間では緊急時の護身用に使うんだ。素材を手に入れるのが難しいんだが、なんとか間に合ったから」
三蔵「それで、弾いたと?」
鬼宮「そう」
悟空「え?え?どういうこと?」
悟空以外の3人は合点がいった様子だが、疑問符を浮かべたままの彼に悟浄が解説を入れる。
悟浄「つまりだ。凛華ちゃんは、そこに転がってる死体と自分の影を繋いで、わざとクナイで首を切り落とす方法を取ったんだろ?自分の首にその札を貼っておいて、首に衝撃が来た時にクナイの影に入ったんだよな?」
鬼宮「そうそう。さすが俺が仕込んだだけはあるな、悟浄」
悟浄の解説に鬼宮はご満悦そうだ。
三蔵「おい、詰めが甘いぞ」
ガウン!
静かな物言いに次いで、三蔵の拳銃が妖怪の死体の心臓部に穴を開ける。
クナイを握りかけていた死体が、サラサラと砂になって風に流され消えていった。
鬼宮「接近戦タイプは下手に近づけないからな。後処理、助かったよ、三蔵」
言いながら、彼女は愛用クナイを拾う。
三蔵「てめー。分かってて、仕事押し付けやがったな」
鬼宮「この程度が仕事に入るのか?どこでも拳銃ぶっ放す最高僧様だから、たまには動かない的を撃ったところで、大した仕事にもならんだろうよ」
くつくつと笑いながら、微笑む鬼宮に対し、三蔵は青筋を浮かべる。
三蔵「てんめぇ」
悟浄「凛華ちゃんっ」
三蔵が切れかかるのを無視して、悟浄が辛そうな声を出す。
そんな彼を正面から見つめて、鬼宮はいつもと変わらぬ声を出す。
鬼宮「どうした、悟浄?俺が、術をまともに習得できてない教え子を残して、死に急ぐような薄情者に見えたか?」
悟浄「っ!それ、は」
視線を外した悟浄に歩み寄り、鬼宮は彼の頬の傷を撫でる。
鬼宮「最後は、ケリつけてくれるんだろう?」
藍色の瞳に映る愛情の色を受け取って、半分安心する悟浄だが、不安が拭い切れない。
悟浄「あぁ、忘れてない。でもっ」
鬼宮「俺が、いつ離れると言った?仇を討つまで追従するとは言ったが、その後、離れるとは言った覚えはないぞ?」
悟空「あ、じゃぁ、凛華!これからも一緒にいてくれんの?」
二人の間に、無邪気な悟空が割って入る。
鬼宮は意味ありげに、視線を同行者達に向ける。
鬼宮「八戒、お前、日記付けてたよな?これまでの三仏神カードの決済も書いてたな?」
八戒「え、えぇ。そうですけど?僕、計算間違ってました?」
鬼宮「そうじゃない。お前らは、妖怪退治屋でもないのに、出費が多すぎる。旅をしてるからほぼ収入がないというのに、支払いは三仏神カード頼り。そのほとんどが悟空の食料品と、三蔵と悟浄のタバコと酒。財布を管理するなら、禁酒と禁煙をさせなければなるまい?」
悟浄「ちょっ、凛華ちゃん?」
三蔵「おい、何を考えてやがる」
禁煙禁酒を出され、日頃の数少ない楽しみが制限される喫煙家二人が抗議した。
鬼宮「悟空も、少し節制しようか?」
悟空「え!俺も!」
鬼宮「野宿の時の食事も缶ばかりだからな。八戒も買い物のリストを見直すのと、運転荒いのを直せ」
八戒「えーと、僕も?ですか?」
鬼宮「このペースで、旅を続けてたら三仏神カードをストップさせられそうだからな。経済管理の指導が必要なんじゃないか?なぁ、三蔵?」
三仏神カードストップ話題を出され、三蔵が渋い顔をする。
三蔵「どのくらいだ?」
三蔵の短い問いに、鬼宮はわざとらしい質問を返す。
鬼宮「それは、己の心に聞くべきじゃないか?」
三蔵「〜〜〜!!勝手にしろ!おい、八戒、行くぞ!」
三蔵は、いつも以上に気に食わないという顔をして鬼宮、の隣を西に向かってすれ違っていく。
八戒「やれやれ、凛華さんには敵いませんねぇ」
八戒もにこやかな笑顔を浮かべながら、三蔵に続いて歩き出し、ジープを車に変化させた。
何も言わずに乗り込む三蔵。
悟空「良かったな、悟浄!」
ニヤついた顔をして、悟空が悟浄の脇腹を小突いてジープへ、駆けていく。
悟浄「おい!こら、チビ猿!何すんっ」
鬼宮「悟浄。愛してる」
いつものやり取りを遮って、ボソリと鬼宮が呟いた。
彼女も他のメンツに続いて歩き出す。
悟浄「凛華ちゃん!」
鬼宮「どうした、悟浄?」
悪戯そうに振り向く彼女に、悟浄はそっと頬へ手を添えて、キスを落とした。
悟浄「俺も、愛してる」
鬼宮「あぁ、ありがとう」
静かに微笑んで、二人もいつも通り西への旅路を再開する。
ジープに乗る寸前、鬼宮は一瞬だけ、東を見やった。
そして、心の内だけに言葉を紡ぐ。
(ありがとう…)
それは、誰に向けられた言葉なのか。
真意は彼女しか知らない。
~紅と藍の別れ?~(完)