紅と藍の別れ?
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一方、鬼宮の取ってる部屋に入った3人。
悟浄と八戒は一つしかないベッドに座らされて、彼女自身は反対側にあるテーブルを挟んだ椅子に座る。
荷物の中から、蝋燭とガラスでできた筆ペンと買ってきたバンクルを取り出す。
八戒「自作の妖力装置なんて、どの位の効力があるのでしょうか」
準備を進める鬼宮に八戒が質問を投げかける。
そんな八戒を一瞥だけして、鬼宮は答えない。
八戒「あ、僕の時は調整師の方がやってくれたんで、こういう作業見るのが勉強になるなぁと」
悟浄「おい、八戒、凛華ちゃんの邪魔になる」
鬼宮「別に。元は妖力制御装置の基本知識は、妖怪退治屋なら誰でも持ち合わせてる知識だ。戦闘から離脱した奴らは、それを生業にしてる奴も多い。だが、俺の場合はこうして自分に使うことにはなるとは思わなかった。妖怪封じの為に作ったことはあるがな。ここで見たことは、あまり口外するな。一応、退治屋の秘密業務の内だからな」
言いながら、鬼宮はカーテンを閉めて遮光して、蝋燭に火を灯す。
鬼宮「集中するから、質問は後から受け付ける。全てが終わるまで黙ってろ」
悟浄「八戒、口出しすんなよ?」
八戒「悟浄からその言葉を聞かされるとは思いませんでしたね。分かってますよ。黙ってます」
それぞれの回答を聞いてから、鬼宮は深呼吸をする。
そしてバンクルを、机にそれぞれ2つの水晶部分が外側になるように置く。
暫し目を閉じて深呼吸を繰り返していく内に、鬼宮の影に変化が訪れる。
(これは、妖力だけを影に流しているんですかねぇ)
八戒が疑問に思っている内にも、鬼宮の影だけが妖怪化していく。
部屋に溢れだす殺気のない妖気。
鬼宮の影には蝙蝠の翼が生えて、耳も尖っている。
影が妖怪化すると、目を開きガラスペンを手に持つ。
蝋燭が照らす手元の影も、爪が異様に伸びて妖怪のそれになっているが、本体の方は人のままだ。
彼女は終始無言。
ガラスペンを持ったかと思うと、それを壁に広がった自身の妖怪化した影にインクでも付けるように、ちょんとつけて、そこから糸状に影を伸ばして、何やら不可思議な文字へと変化させていく。
(・・・梵字にも似てますが、違うみたいですね。文字と言うよりは記号に近い気もしますが)
八戒の疑問をよそに、作業は淡々と続いていく。
妖怪の影から黒い影を引き延ばして、記号化していき、徐々に妖怪化していた影が無くなっていく。
ついに、手元の影すら無くなった時、部屋には黒い記号文字で溢れていた。
ついで、バンクルを一つ手に取ると、水晶部分に、自分の周囲に広がった記号文字を左右から均等に持ってきて、まるで模様付けでもするようにペン先を走らせる。
それをもう一方のバンクルにも施して、全ての記号文字をバンクルに納め終わった時、やっとガラスペンを置いた。
フッと息を吹きかけて、蝋燭の火を消し、カーテンを開ければ、先程まで完全に消えていた鬼宮の影が自然と床に落ちる。
それは、ごく普通の人型をしていた。
鬼宮「終わったぞ。何か質問はあるか?」
椅子に戻り、バンクルを手に付ければ、一瞬だけバンクルの水晶と銀板の部分に模様が浮かび上がるが、瞬時に消えた。
悟浄「影って、あんなふうにも操れるんだな」
鬼宮「俺がしたのは、影投影と影封印だ。通常は、人型を取ってるメタモルフォーゼした妖怪の本来の姿を映し出す為に、影に対象者の妖力だけを投影する。それを特殊な記号文字に置き換えて、封印する対象物にバラバラに封じていくんだ。ガラスペンを使うのは、術者の力を反映させる意味合いが強いな。ガラスペンの中にも術者の影が入るからな」
八戒「鬼宮さんは、今回ご自身の妖力だけを影に投影して、それを封印したと言うことですか?影が全くない状態でも行動できていたようですけれど、それはどうしてですか?」
鬼宮「影は本来、光ある所の反対側にできる。暗闇の中では、影はできないが、人はそれでも行動できるだろう?その原理と同じだ。俺は、妖怪化した己と言う影を封印した。故に、バンクルを付けてる限り封印された姿になることはない。だが、外してしまえば、封じられていた影が本体に戻り、妖怪化するという仕組みだな」
八戒「なるほど、じゃぁこれからは、紅い月にも怯えなくていいわけですね」
鬼宮「要のハウライトが壊れなければな。あとは故意に外さなければ、問題ない」
八戒「分かりました。じゃ、僕は戻りますね。1人部屋に3人も居たのでは狭苦しいですからね。念のため、今夜も一泊していきましょう。妖力制御装置の安定性も確認したいですし。三蔵へは僕から話を通しておきます」
鬼宮「あぁ、そうしてもらえると助かる」
立ち上がった八戒を見送ろうとして同じく立った鬼宮に悟浄が声をかける。
悟浄「ちょっと、待った。ってことはもう紅い月の夜に俺は必要ないわけ?」
唐突の質問に、一瞬場が静まる。
八戒「悟浄、それはお二人で話し合ってくださいね?僕は失礼します」