紅と藍の別れ?
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そんな大部屋の声を聴きながら、1人部屋の鬼宮は、蝙蝠の翼に包って一人丸くなっていた。
蝙蝠は常に超音波を発して、対象物との距離などを図ると言う。
今、鬼宮はこの町で起こっていることのほとんどを把握できていた。
情報が多すぎて頭痛がする。
彼女も悟浄同様、努力していた。
要らない情報を取捨選択して、整理する。
妖怪化が進む体では、必要不可欠なことだった。
額に汗が滲む。
それを手の甲で拭きながら、深い呼吸を繰り返す。
自身の手を見て、鋭く尖った爪が目につく。
鬼宮「自分は、妖怪か人間か。どちらだ?」
それに返す返事はない。
日頃なら、悟浄が「凛華ちゃんは凛華ちゃんだろ?それ以上でもそれ以下でもないって」と肯定してくれる。
町の状況が整理できてくると、段々と悟浄のありがたみが分かってくる。
「凛華ちゃんはさ、十分女性として綺麗だと思うぜ?もっと自信持てよ」
「戦える美人ってカッコいいじゃん。俺様、か弱いだけの女の子もいいけど、力強い女の子の方が好みよ?」
「容姿だけで、妖怪か人間かなんて決めなくていいじゃん。凛華ちゃんは綺麗で可愛くて、俺からしたら愛らしい女の子だよ」
いつも紅い月の夜に、囁く悟浄の言葉が脳内にコダマする。
鬼宮「悟浄。お前は、何を期待している?自分は、お前の好意に応えられるものなど、何も持っていない」
「それでもいいんだよ、俺、凛華ちゃんの事が好きだから」
独り言にも、悟浄の言葉が、再び頭の中にコダマとして返ってくる。
「俺、凛華ちゃんがどんな妖怪になっても、嫌いにならない。ずっと傍で見守っててやる」
鬼宮「悟浄。自分には、何もない。だから、そんな綺麗な目を向けるな」
昨日言った言葉と共に、鬼宮の脳裏に悟浄の笑顔が浮かぶ。
自身を妖怪化させる紅い月と同じなのに、正反対に優しく包む紅い髪と瞳の男。
初めて会った時から、隠そうとしてきた彼への想いが、久しぶりの一人の夜に、静かに心の中で形を成そうとしていた。
鬼宮「・・・寂しいよ、悟浄」
一人の部屋にか細い声がこぼれていく。
もちろん、返事は返ってこない。
ただ寂しさだけが鬼宮の中で募っていった。
一筋の涙が頬を伝う。
伝い始めた涙は止まらなくて、情けなくて寂しくて恋しくて、声もなく妖怪化した体で、一晩中静かに泣いていた。