【終章〜保護者公認〜】
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布団から出ていては寒いだろうと、布団へ戻すため、手を掴めば、思い切り引っ張られた。なんの準備もしていなかったクロウリーは、簡単に身体を引き寄せられ、椿に覆いかぶさる形になってしまった。
目の前に椿の顔が見え、ドクン、と脈が大きく跳ねる。
「つっ、椿!押し潰してしまうである!離しっ、!っのあ?!」
「んー......」
かなりぐっすりと眠っているのか、クロウリーの声は届かず、離すどころか更に引っ張られてしまう。その力強さと言ったら、男のクロウリーが反抗できないほど。
ぎゅうぎゅうと壁際に押し込まれ、椿が腕の中に顔を埋めてくる。何故か足も固められ、もぞもぞと安定の位置を見つけたかと思えば、そのまますやぁ、と寝入ってしまった。
その間、たったの数秒。
頭が追いつかないクロウリーは、自分の状況を確かめるように周囲を見回し、腕の中にいる椿の存在に、息を飲む。
(こ、これでは、まるで......っ、!)
「っ、椿っ、離してほしいである!」
「あっ......たか......」
「......はぁ」
離す様子のない彼女に、ため息を吐く。......もう、これ以上は無理そうだ。
抱き枕にされて居るので、左手だけでそっと布団をかけなおして、行き場のない手を暫く彷徨わせる。自分を抱きしめている冷えた椿の腕が、少しずつ暖かくなるのを感じて、抜け出すのを諦めた。
彼女に触れないように、布団の上に手を置く。......正直、自分の横でここまで安心されると、少しばかり恥ずかしくなってしまうのだが。
「......この教団では、安心していいのである」
「.........酔っ払いの戯言だから、聞き流せ」
顔にかかる髪を、肌に触れないように払ってやる。それと同時に、眠っていた筈の椿が、やけにはっきりとした言葉で返してきた。返ってくるとは思わなかった発言に、声が返されたことに、クロウリーは硬直する。
しかし、椿はそれを気にすることなく、続ける。
「......さっきの、嘘じゃないから。好きでいる事を許してくれるだけでいいから............。でも、お前が良ければ、いつか......アレイスターと呼ばせてくれ」
「............」
「無理なら、諦めるから」
――ちゃんと。
そう告げる椿に、答えが出ない。
......確かに、私は愛する者を壊した事を話した。それを踏まえた上で、彼女は自分を好きだという。......それが余計、クロウリーの答えを濁らせていた。
返事をする事が出来ずにいたら、規則正しい寝息が聞こえて来た。どうやら椿は、今度こそ寝入ってしまったらしい。クロウリーは気づかぬうちに止めていた息を吐き出して、全身の力を抜いた。
(......心臓の音が落ちつかないである)
予期しない事に、どうしたらいいのかと思考を巡らせるが、やはり答えは出ない。椿から視線を外して、窓越しに部屋を照らす月を眺めた。うっすらと差し込む月明りは、あの町の時よりも、淡く、弱弱しい。
その分、優しさを感じるもので、不思議と落ち着くような気がした。
「......アレン。私は、......ちゃんと進めているであるか?」
ふと、縋るように友人の名を呟く。彼は今、別の任務で違う場所へと向かっている。もし無事に帰ってきたら、彼と2人を会わせたいなと考えながら、クロウリーは目を閉じた。彼の独り言は、誰に聞かれる事もなく、闇夜に溶けていく。
(......少しだけ寝るである。こ、コレは、っ、椿が温もりがないと眠れないと瑠璃が言っていたから、見守ってるだけである!応えたわけでは......ないである。私は......エリアーデを忘れないである)
暗い視界の中、浮かぶ最愛の人物にそう言い訳をして、呼吸を繰り返す。......そうして愛する者を壊し、此処にたどり着いた吸血鬼は浅い眠りに落ちた。
己が愛しく想う人と、己を愛おしく想ってくれる人の狭間で、揺られながら―――