【第23章〜プチ小噺〈男風呂in教団〉〜】
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「乾かしてもらったのか? 瑠璃、いつもより毛並みがいいな」
「ストラーイク♡めっちゃ、タイプさぁー♡」
「あ?」
くるくると今にもそこで踊り出しそうなラビに、ハートを飛ばされた本人――椿が、訝し気に顔を顰めた。
着崩れた服は、第一印象をあまりよくはしなかった。
「誰よ、アンタ」
「大人の雰囲気さぁ♡ねぇねぇ、名前教えて!キレーなお姉さん♡」
「はぁ?うっざ。ナンパなら他所を当たってどうぞ。行こう、ミランダ。瑠璃」
急接近してくるラビに、毒を吐きつけ、背を向けて歩き出す椿。まるで不快な生き物を見たと言いたげなその背中には、未だに止まないハートが飛び続けていた。
「ツンツンしてる所も可愛いさぁ♡なぁなぁ、虎助、この子が椿ちゃん?」
「寄るな、ガキ!」
グワッと威嚇するように牙を剝きだす瑠璃に、おっと、とラビが飛び退く。ガシャン、と牙が下ろされ、空気が噛み千切られる。
その勢いに、先程までの鈍さを引っ込めたラビが、にしし、と笑みを浮かべた。
「へへーん、いい加減学習したもんねぇ〜」
「後ろがガラ空きだ、馬鹿者!」
「だァアアッ!?」
バシィッ、と音を立てて、狂気に変わったタオルが、ラビの頭を直撃する。
濡れたタオルは時に凶器になるという事は、大抵の人間が知っている事だ。もちろん、叩かれた本人も身をもって知っている。
「後ろからの奇襲は卑怯さー!クソジジィ!」
「はぁ、ラビも変わらぬであるな」
「ふふ。楽しそうでいいじゃない」
クロウリーの呆れた声に、ミランダが優しく微笑む。
賑やかなのは嫌いじゃない。
「ミランダ、クロウリー。どこに行けばいい?」
「コムイがなんか計測するとか言っていたぞ」
そんなやり取りをそっちのけで、歩みをどんどん進ませていた椿と瑠璃が、廊下を歩いていく。確かこっちが......と曲がり――ミランダが声を上げる。
「あ、待って!そこの角は曲がっちゃ......っ!」
ミランダの制止の声も間に合わず、角から伸びた腕に瑠璃が一瞬にして拐われた。
ぎょっとする椿と、刹那の出来事に驚いた瑠璃が、ハッとした時には、もう扉は閉まりかけていた。
「っ! 椿!椿!助けてくれ! 椿!!」
伸ばした前足も虚しく、ぱたんと締まる扉。
椿が慌てて駆け寄ろうとした瞬間、響いた轟音が頭を劈いた。
ぎゅららららら!がりがりがり!
足が止まる。瑠璃の必死の叫びと不穏な機械音が、混ざり合って聞こえてくる。
パニックになった椿が慌てて振り返れば、ミランダとクロウリーが「あーあ」と言わんばかりに肩を落としていた。
「捕まっちゃったわね......」
「あぁ......、嫌な思い出である......」
「な、何なんだあの部屋!?早く瑠璃をっ......!でも、助けたいのに体が拒絶する......っ!」
「教団にきた新人エクソシストが必ず通る道さー」
「お主のイノセンスは先程結晶化したばかりじゃから、免れたな。哀れ、瑠璃殿」
「どういうことだ!?」
パニックになるのに、全く改善点を見出せないまま、椿はその場であたふたとする。そんな彼女は、目の前で起きる現象に、ピタリと体が止まる。廊下の影から、瑠璃の吸い込まれた部屋を窺う一同の背後に迫る――手。
もういっその事、ホラーだ。
「見つけたわよぉ〜」
「ひっ!」
「きゃっ!」
ガシリとミランダの首根っこを掴み、椿を目で捉える。にっこりと笑った笑みを浮かべる、婦長とジェリーに、椿は堪らず悲鳴を上げた。
恐ろしい事この上ない。これならまだ、アクマが急に出現してきていた時の方がマシだった。
「貴女も計測するのよ?」
「な、何で私まで!?離してください!ジェリーさん!」
「女性の手が足りないっていうから、手伝いに来たのん。ミランダも手伝い要員よ〜ん」
「私も化学班から正確な計測を頼まれました。仕事柄、数字には煩くてよ」
慌てるミランダに、ふふ、と笑うお二方。
その笑みに、もうどう足掻いても逃げられない事を、2人は悟った。ジェリーにガシリと肩を掴まれ、椿が絶望の顔に染まる。......なんか、怖い。得体のしれない怖さが、込み上げてくる。
「......瑠璃の分まで、骨は拾ってくれ」
「椿ちゃん、縁起でもないこと言わないで!?」
悲壮感を漂わせ、引きずられていく椿とミランダ。その目は諦めと恐怖に塗りつぶされていた。ミランダなんて涙を浮かべている。
その様子を見送った男達は、心の中で合掌をする。追う?そんな自殺行為、出来るわけがないだろう。