【第21章〜逃げない決意〜】
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椿の笑顔に、瑠璃の心の底が疼く。
「......椿、大好きだ」
「あぁ、俺も大好きだよ瑠璃」
返される、同じ“好き”の言葉。
その中の意味が、自分とは少々異なっている事くらい、瑠璃は理解していた。そして......きっとその意味が、同じものになる事はない、という事も――。
「さ、そろそろ行こう。ミランダが待ってる。瑠璃、ソレ貸して?」
椿の声に、瑠璃は咥えていた包帯を差し出された手に渡す。椿はにこやかな顔で包帯を受け取ると、イノセンスを発動させて、包帯を弓に装着した。――まるで、先程爪弾いた、矢のように。
「行ってらっしゃい、コムイサン」
「へっ?って、う、うわああああああーーーー!!」
ピンッと引かれた弓が、弦を弾いたと共に、コムイが光の矢に引っ張られて、遠くへとすっ飛ばされていく。
絶叫にも似た声を聞きながら、椿は額に手を当てて見送ると、ハッと小さく笑みを発した。その顔が若干愉しんでいるのを見て、瑠璃は口元を引き攣らせた。
「椿。お前、感化されただろ、ココの奴らに」
「だって、俺らだけ弄られてんのムカつくじゃん?」
「それには同意だが。......ヘブラスカ、我も強くなれるのか?」
ニヤリ、と笑みを浮かべる椿に、瑠璃は頷くと、隣で一部始終を見ていたヘブラスカに視線を向けた。
もう彼女が恐ろしく思う事は無い。......本能的なものは置いておいて。
瑠璃の問いかけに、ヘブラスカは真っ直ぐ彼を見つめる。
『寄生型は、想い次第だ。私は知っている。臨界点を超えた寄生型を』
「では、励もう。椿に置いて行かれないように」
『瑠璃、お前が限界を超える時、守神白虎の名を継いでもおかしくないが、......イノセンスは諸刃の剣だ。無茶はするな』
「忠告は受け取るが、保証は出来ない。あの子の笑顔を守れるのなら、我はこの命......」
『......そうか』
「瑠璃、行くよ」
椿の呼びかけに、瑠璃はヘブラスカに背を向ける。
その堂々とした背中に、ヘブラスカは思いを馳せるように目を閉じ、静かに消えて行った。......彼女が飲み込んだ言葉は、彼女以外、知る事は無かった。
「瑠璃、もう足は引っ張らないからな」
「元々、引っ張られてなぞいない」
互いに肩を寄せ合い、クスクスと小さく笑って、一人と一匹は慣れない道を歩き出す。
――新しい、見た事のない未来に向かって。