【第21章〜逃げない決意〜】
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定夢小説の主人公は、その話に応じて容姿や性格などを設定しています。
全ての小説で、夢用のお名前を使用する場合は、こちらを使用してください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『...わかった。イノセンスを出そう』
ヘブラスカの体内から一筋の光が流れ出る。眩しい光に目を細めれば、キューブ型の物が浮かび上がって来た。それがイノセンスである事を、椿は直感で悟った。
キューブ状のイノセンスが、椿の手の内に降りてくる。神々しい光を纏うそれに、椿は小さく深呼吸をした。
「また一緒に戦ってくれ。仲間を守る力をくれ、イノセンス」
ギュッと強く、手を握る。
祈るように。――心に決めた決意が、逃げないように。
そうして数秒。ゆっくりと開いた手のひらには液状化したイノセンスが、ゆらりと水面を揺らしながら、鎮座していた。
「これは、まさか――――結晶型......っ!」
コムイの驚きを他所に、椿はソレをグッと飲み干した。まるで手で掬った水を、飲むかのように。
ゴク、と喉を鳴らして全てを飲み切った椿は、喉を通る熱さに堪らず大きく咽た。
「っ!ぁ、つぃ......っ、!」
「椿!」
喉が焼けるようだ。身体に入っていくイノセンスが、内臓を刺激する。はっ、と吐いた息が、ひどく熱っぽかった。そんな椿を心配して、瑠璃が駆け寄る。寄り添うように身を寄せ、心配そうに椿を見上げる。
汗をかきながら、胸元を強く握り締める椿は、落ち着くように細く息を吐くと、言葉を紡ぐ。
「こたえて、くれっ、!イ、ノセンス......っ!」
その問いかけに、応じるように椿の腕から血が溢れる。真っ赤な心血は、ゆっくりと彼女の腕を伝うと、地に落ちることなく、まるで生き物のように宙で形を作り始めた。初めて見る光景に、2人は目を見開いた。
ドクン、と椿の中の血が、沸き立つ。
宙を舞う心血は、ゆっくりとその形を変え、赤い翼の形に変化していく。完成した“ソレ”は、頭のない十字架をつけた天使のように見えた。
「椿」
「......大丈夫、ちゃんと帰ってきた。......お帰り。イノセンス、発動!」
高らかに椿が声を上げる。赤い天使が溶け、再び形を変えていく。――以前より鋭く、堂々とした白銀の弓が、椿の手の中に収まった。
白く、高貴な雰囲気を持って光る――弓。その柄の部分には、椿の花が刻まれていた。椿はそれを見ると、天に向かい、弓の弦を爪弾いた。ピンッと軽い衝撃だったのにも関わらず、目で追えないほど速く、鋭い矢が天井を貫いた。
ドゴッと音を立てて、破壊される天井。
降り注ぐ瓦礫を軽く弓で弾けば、ぱんと音を立てて塵になった。攻撃力・防御力共に、飛躍的にアップしている。
「あー、いいなこれ。接近戦でも使える」
椿が発動を解けば、左手首に2本、右手首に1本の赤いアームリングが出現した。
少しゆとりがあるそのリングは、肌にフィットしていた以前と違って、縛り付けるような事は無かった。
「なるほどねぇ。弓は両手で使うから、左右でリングの本数が違うのか ......って、勝手に天井壊さないでくれる?!」
「別にいいだろ。試し打ちだし。使い物にならなかったら意味ないんだからさ」
「直すの誰だと思ってるのさ!?」
『科学班だな、コムイ』
「もう、ヘブくんも乗らないでよ!」
松葉杖を振り回し、怒りを表すコムイを見て、椿が笑う。その笑顔を見た瑠璃は、愛おしいと思った。