【第21章〜逃げない決意〜】
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全員が部屋を出て、瑠璃が器用に尻尾で扉を閉めれば、そこにはなぜか包帯でぐるぐる巻きのコムイに、唖然として立っている椿の姿があった。何だこの絵面は。
「あっ、瑠璃!コレ咥えといてくれ!」
「!?」
突如廊下の角から顔を覗かせた人陰が何かを投げて、瑠璃は反射的にソレをキャッチする。得体の知れない人間から投げられた物を口にしてしまった事に一瞬身体を固めたが、遠くに見える人影が増えたことへの驚きで、そんな思いはすっ飛んでしまった。
「「絶対離すなよー!」」
廊下の角からワラワラと顔を出してくる白い服を着こんだ人間達。殺意ある目が、恐ろしい。
離すべきかどうか、迷っていれば、不意に咥えている物が柔らかい布である事に気がついた。布......というより、綿......レース?ガーゼだろうか?
よくよく見れば、その布は地面へと垂れており、辿っていけば目の前の包帯男に辿り着いた。
......どうやら、反射的に受け取ったのはコムイに繋がってる包帯だったらしい。
(......コイツ、何者なんだ......?)
ミランダやクロウリーには尊敬されているような態度を感じたのに、その他の人間からの扱いが、ヤバい。殺意を向けられるなんて相当だな、と呆れた視線を投げれば、涼しげに笑うミイラ男。
......食えない奴だな、こいつ。いっその事、物理で食ってしまおうか。
いや、不味そうだからやめておこう。
「あはは〜、捕まっちゃったねぇ〜。ねぇ、瑠璃くん。その包帯、1回僕に渡してくれない?」
「「逃がすなよ、瑠璃!!」」
だ、そうだ、と視線を向ければ、「だよねぇ〜」と軽い調子で笑う男。
「ヘブくんの所に行くのさぁー、僕いないとダメなんだよねぇ。だから 別に逃げる訳じゃないんだけど......あ、ミランダ。食器片付けたら、2人のお風呂の準備しておいてあげてよ。入ってないでしょ?」
「はい。それじゃあ、椿ちゃん、瑠璃さん。また後でね」
「また後でな」
こく、と頷く椿と瑠璃に、ミランダは背を向けていく。
その先で恨みを持った亡者のように、ギラついた殺意を向けてくる人間達が去っていくのを見送り、さあ行こうと足を進めた。
怪我をしてるわけでもないのに、大袈裟に松葉杖を付いて歩くコムイに、2人は顔を見合せた。よっぽどの変人だな、こいつ。
「なぁ。お前、一応責任者なんだよな?」
「これでも一応、中間管理職なんだけどねぇ。あと、僕、コムイ。コムイ室長って呼んでくれたまえ」
何故か偉そうな口調で名乗り、胸を張るミイラ男――コムイに、2人は自分達の感じたことが間違いでなかったことを確信した。
そんな新人達のズレた確信に、コムイは気づかないまま、軽快に言葉を続ける。
「ところで椿ちゃん。ミランダとの話は聞かせてもらったよ。決意は揺らいでないかい?イノセンスともう一度同調したら、君はエクソシストと してこれから生きていくことになる。 逆に言えば、エクソシストとしてしか生きる事も死ぬ事も出来ない。それでもいいかい?」
――軽快に。天気の話をするかのように。
決意を問うコムイの声に、椿はこれが最終忠告であることを悟る。しかし、何度忠告されても、思いが変わることは無い。――つまり、決意は “決意”として、椿の心に芯を灯す。
「何度言われても、同じ事だよ。......俺を弔ってくれる家族など、もう居ない。それに、俺が逃げれば、瑠璃は1人になるんだろ? 瑠璃を1人にはしたくないしな」
「友情だねぇ〜」
「ずっと、近くで支えてくれたからな。俺も、瑠璃の力になりたいし、 ――それに、あの町でクロウリーとミランダには大分助けられたんだ。 借りた恩を仇で返すほど、捻くれちゃいないさ。今逃げたらそれこそ、2人にも失礼だろ?」
椿の揺るぎない決意に、コムイは笑う。それでこそ、――エクソシストだと。
「決意は固いようだね。良かった良かった。――君の決意に、神の加護があらんことを」
「なにそれ?本心で言ってんの?人殺しに神が微笑むかよ」
「君の決意に敬意を評したつもりだよ。まあ、サポートしかできない僕らの精一杯だけどね」
「...やっぱ、あんたら性格悪ぃな」
不愉快に思い切り顔を歪めた椿に、コムイはから笑いをする。まるで嘲笑しているようにも、誤魔化しているようにも聞こえる。......やはりいけ好かない。