【第2章〜廃墟にて〜】
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定夢小説の主人公は、その話に応じて容姿や性格などを設定しています。
全ての小説で、夢用のお名前を使用する場合は、こちらを使用してください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いつまでお喋りしてんだよォ!もう怒った!みんなまとめて溶けちゃえ! “ボイドブレス”!!」
「行け!黒いの!」
「黒いのではない!我はアレイスター・クロウリー三世だッ!」
反論しながらも、クロウリーは放たれた金色の巨大な矢に飛び乗った。
急かされる答えに、考える事を放棄したクロウリーは、自分の直感を信じることにしたのだ。
――適合者達は、少なくとも一度も嘘はついていない。
それは、此処に来てからずっと感じていたことだった。向けられた敵意も、構うなと叫んだ言葉も、何一つ嘘偽りは感じられなかった。
――彼にはそれだけで十分だった。
飛び乗った金色の矢は、アクマの攻撃の隙間を縫うように走り、距離を取ろうとするアクマを追尾する。地面を抉り、空を切る。最初は余裕綽々だったアクマの顔も、巨大な矢がどこまでも付いて来ているのが、異常に感じたのだろう。
驚きと恐怖に表情を変えて、アクマは逃げることに専念し始めた。
――しかし、速さは放たれた矢の方が上だったようだ。
こちらを見ながら逃げるアクマの腹に、問答無用で突き刺さった。ドスン、と身体を横断する激しい衝撃に、アクマの体が大きく折れた。
クロウリーは悪魔の首元を鷲掴むと、その皮膚に牙を立てた。甘い香りと、芳醇な血が舌の上を転がっていき、それと反比例してアクマの体は干からびていく。
血が一滴たりとも残っていないアクマの体を投げ捨て、クロウリーは薄く消えていく矢から飛び降りた。ト、と足が地面に着地したところで、後ろから虎に乗って追いかけて来たであろう椿が、彼に声をかけた。
「ひと段落か。手伝わせて悪かったな。アレ、ク......なんとやら三世」
「アレイスター・クロウリー三世だ。呼びにくければ、クロウリーでいい」
「そ。まあなんでもいい。...あんたのおかげで楽ができた」
「アクマを壊すのは我らの仕事だから、構わん」
トン、と虎の背から飛び降りた椿は、虎の背を撫でながらクロウリーと対峙すると、視線を後ろへと向けた。
その方向には、ミランダとファインダーが隠れた廃墟があったはず。
「もう1人の黒服の女は戦えないのか?」
「ミランダは凄い能力なのである!」
――“戦えない”。
その言葉に、いち早く反応したクロウリーは、吊り上げていた目を少し緩めて首をブンブンと振りだした。先ほどまでとは違う、漆黒の瞳から普通の人間のものへと戻り、逆立っていた髪がゆったりと顔の前に流れている。しかも、言葉まで先程とは違い、柔らかくなっていた。
そんな様で、まるで庇うかのように声を上げる彼に、椿は驚く。
「......なんか、お前、キャラ違くない?見た目も変わってるし」
「そうであるか? 歯が疼かなければ、いつもこうであるぞ」
「へぇ。訳ワカンねぇやつ」
クロウリーに驚きつつも、あっさりと話を終わらせた椿は、彼からサッと視線を外すと、大虎に声をかけた。
「瑠璃もう1人の黒服女連れてきて。まともな部屋で話そう。外に出てるとアクマ共がひっきりなしにきやがるからな」
椿の言葉に、わかった、というように頷く大虎―― 瑠璃は、尻尾を振って再び闇夜に飛びあがった。ミランダの元へ向かったのだろう。
その背中を見送っていれば、クロウリーがおずおずと尋ねた。
「あの虎は、寄生型であるか?」
「貴様らの種類分けでは、そうらしいな」
「我らの......というと、他にも呼び方が?」
クロウリーの問いかけに、椿は「そういえば、お前らは知らないのか」と口を零して、自分の手を見つめた。先ほどまで手元にあった弓は、今は握られていない。
完全に戦闘態勢を解いているのが、彼女の答えなのだと、クロウリーは理解する。そして、この話が彼女達の心の重荷になっている話なのだと、気を引き締めた。
「......あの子はこの村の守り神だったんだ。もう、守る町も無くなってしまったがな」
『――元々、西の守神:白虎の住う町として、ある程度名のある町でしたが......』
(ファインダーの言っていた守り神が、あの大虎なのであるか......)
ファインダーの情報通りの出来事に、クロウリーはさほど驚きはなかった。しかし、彼女の話を聞く以上、守るべき町がこの町なら、廃墟となっているこの状況は......一体どういうことなのだろう。
アクマ達の仕業か、はたまた資源不足による、住人の移転か。理由は星の数ありそうだが、現時点ではクロウリーには何もわからなかった。