【第21章〜逃げない決意〜】
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「瑠璃さんは......寝てるのね。よかった......体の調子はどう?」
ミランダは、静かに部屋に入ってくると、瑠璃の邪魔にならない場所に椅子を持って来て、腰を下ろした。
カチ、とミランダがベッド際のランプをつけた所で、椿はやっと時間が夜であることに気がついた。
「お粥持ってきたの。食べれるかしら?」
「ありがとう。貰うよ」
ほんのりと漂ってくる、温かくて、甘い香り。入ってきたミランダの手には、小さな器があり、いつの間に、と椿は驚いた。そして2度もノックをした理由に検討がつく。......恐らく、折角のお粥を冷やさないようにと思っていたのだろう。どこまでお人好しなのか。
「それじゃあ、はい。あーん」
「えっ」
――ミランダが、あまりにも自然にするから。
思わず出てしまった本音に、お互いが瞬きを繰り返す。
かぁっ、と赤くなったのは、ミランダの方だった。
「ご、ごめんなさいっ! た、食べられないかと思って......」
「...自分で食べれる」
「で、でも、まだ左手、本調子じゃないでしょう......?ね?お姉さんに手伝わせて?」
「お姉さんって......、ミランダっていくつ?」
「言ったら食べてくれるのかしら?」
「......意外と強情だよな、ミランダも。ああもう、食えばいいんだろう、食えば」
そして繰り広げられた、他愛もない押し問答に折れたのは―― 椿だった。
椿は半ばヤケになりながら、はぐっと差し出された匙を咥える。
そのまま白い歯で強く噛んで顔を引けば、ミランダの手から匙が離れた。
「あっ!」
「詰めが甘いな」
フフン、とドヤ顔を向けた椿に、ミランダはむぅ、と口元を膨らませた。匙の攻防は、椿に軍配が上がったようだ。
今はもう動く右手で、ミランダが持つ鍋からお粥を掬う。誰かが見たら、『行儀が悪い』なんて言いそうだが、片腕が使えないのだから仕方がないだろう。
「右手は動くから、食器持っててよ」
ね?と首を傾げる椿に、ミランダはもうお手上げするしか無かった。そんな彼女を他所に、咀嚼しながら次の匙を口元に運ぶ椿に、ミランダは笑う。そして、――少し悲しそうに、目を伏せた。