【第21章〜逃げない決意〜】
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.........コンコン。
どれくらい眠っていたのだろうか。控えめに叩かれたドアのノック音で、目が覚めた。
「......だれだ......?......ここは、」
ぼんやりとする視界で、ゆっくりと辺りを見回す。椿は、自分の記憶を手繰り寄せた。
(......確か、白く透き通った、人と蛇の間のような生物――ああ、そうだ。ヘブラスカとか言ったな。そこでイノセンスを......そうだ、その後クロウリーに預けられて、暖かくて......寝てしまったのか)
ふと、瑠璃が頭を擦りつけてくる記憶が頭を過ぎる。彼の頭におざなりに置いてしまった手は、ちゃんと撫でることが出来ただろうか。
(あいつは撫でられるのが好きだからな......)
嗚呼、でも。
「......あったかかった、な」
舌っ足らずに落ちた声は、部屋へと透けて溶けていく。......まるで、懐かしいような、それでいて新鮮だった温もり。それに安堵してしまうのは......きっと仲間という存在が出来たからだろうか。
――それにしても。
頬が熱い。温もりを思い出してから、何だか体温が上がってきている気がする。なんだろう。まだ体調がおかしいのだろうか。それとも、熱を出してしまっているのだろうか。
どちらかは分からないが、とりあえず体調が不全であるなら、寝て直すに限る。
そう結論づけると、椿は布団を引き上げた。何かノック音のようなものを聞いた気がするが、どうせ寝てしまうなら返事をしなくても問題はないだろう。
...コンコン。
そう思った矢先。もう一度音がして、沈みかけた意識がゆっくりと戻ってくる。
(............これは、寝れそうにないな)
はぁ、とため息をついて、ゆっくりと時間をかけて起き上がる。身体がミシミシと軋むが、ずっと部屋の前で立っている来客が可哀想だ。
「あー、えっと、鍵かかってないと思うから開けていいよ」
体制を整えると、少し声を張り上げ、扉の外へと問いかける。暫くの間を置いた後、戸惑いがちに扉が開いた。
ひょっこりと顔を出したのは――少し申し訳なさそうな顔をした、ミランダだった。
「あの............起こしちゃいましたか......?」
「いいや、大丈夫。何の用だ?」
「えーと、ジェリーさんにね。軽く食べれる物を作ってもらったの。椿ちゃん寝ながらクロウリーのチキンフライ食べてたから......、その、お腹空いてると思って......」
目を伏せながらそう告げるミランダに、椿は首を傾げる。そんな記憶は、どこにも無い。
「は?俺が?寝ながら食ったの?」
「覚えてないの?」
「んー......ヘブラスカの後から、ほとんど記憶がないんだ」
少し照れたように笑う椿に、ミランダは「気持ちよさそうだったものね」と微笑んだ。
「......あたたかったからな」
クロウリーが、とは言わなかった。言えなかった。なんとなく気恥ずかしかったからだ。
バツが悪そうに視線を背ける椿に、ミランダが首を傾げる。ただでさえ無表情気味な椿だ。心境など、ミランダには伝わらなくて当然だろう。