死んだ町に居座る適合者【改訂版】
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食事を終え、クロウリーに部屋まで送ってもらう事になった、椿と瑠璃。
「たらふくだから乗せたくない」
そう瑠璃が言うので、クロウリーが椿を運ぶ事になった。建物内を横断し、部屋に向かう三人。
割り当てられた部屋にあるベッドに椿を下ろせば、括っていない紺色が花のように広がっていく。紺色の髪が、白いベッドによく映える。
そんな彼女の首元を見て、クロウリーは思わず顔を顰めた。
(初めて会った時から小さくて細いと思っていたが、首もかなり細いのだな......しかし見れば見る程、エリアーデに......――。)
「クロウリー。沢山助けてくれて、ありがとう」
「仲間だから、当然である」
ゴロンと床に寝そべり、礼を述べる瑠璃に、クロウリーは満足げにほほ笑んだ。その笑みに彼も満足したのか、毛繕いをし始める瑠璃。
「......それで?お前、今何考えてた?」
「えっ、?」
「今の顔、作り物だろ」
瑠璃の鋭い言葉に、クロウリーが息を飲む。......まさか、そんな事がバレていたとは。
「な、なんでもないである!」
「......本当か?」
「あ、ああ!」
コクコクと頷くクロウリーに、瑠璃がじっとりとした目を向ける。その視線に居心地が悪くなったのか、クロウリーはバッと立ち上がると、逃げるように出口へと向かった。
「後で化学班から呼ばれると思うから、今は休むであるっ!」
「ずっと寝ていたがな。クロウリー、椿はこれからどうなる?」
口早に発した言葉に、瑠璃が呆れたように返す。
守るようにベッドの横に移動した瑠璃は、椿の左腕を見つめると、再びクロウリーへと視線を戻す。彼の“この先”がイノセンスに関わる事だと気づいたクローリーは、僅かに顔を顰めた。
「......装備型のイノセンスは、武器を作り直すか、結晶型に進化するである」
「進化?結晶型? 椿の体には影響はないのか?」
「......詳しいことは後にして、今は休むである」
クロウリーの言葉に、瑠璃はこれ以上は聞けそうにない事を悟った。――聞けないのなら、これ以上引き留める理由はない。瑠璃は首元を足で掻くと、身体を伏せた。
「ありがとな、クロウリー。ミランダにも伝えておいてくれ」
「わかったである。ちゃんと伝えるである」
うつらうつらとし始めた瑠璃に、同じように眠気に襲われていくクロウリーは、部屋を出るとゆっくりと扉を閉めて行った。
その背中を見送った瑠璃は獣人型になると、ベットに腰掛け、肉球でポフポフと椿の頭を撫でる。
ゆるりと笑う椿の口元に、瑠璃は何だか嬉しくなってしまう。
「......笑って眠る椿は、久しぶりだな」
――子供の時以来だろうか。
ふと過ぎる記憶に、瑠璃の口元が緩んでしまう。しかし、そんな独り言に返事をする者はいない。
さらさらと紺色の髪を梳き、懐かしむように目を閉じる。瑠璃の心には、凪ような風が吹き抜けていく。
「本当に......大きくなったな......。もう22になるか......。ココにいれば、椿の笑顔は守れるのか?」
小さな声は、ゆっくりと部屋の中へと浸透していく。
優しい声は、まるで子を見守るように穏やかで、とてつもなく愛情に満ちていた。そんな愛情がくすぐったいとばかりに子は身を捩り、その手に寄り添う。
「瑠璃」
寝言で呼ばれる自身の名前。あまりにも穏やかに紡がれたそれに、瑠璃はフッと息を吐く。――嗚呼、なんと平和な。
「......安心して眠れ。側にいるから」
ぺろり、顔を舐めてやってから、瑠璃は身体を横たえる。その空気は――驚くほど、平和で温かなものだった。
二人の寝息だけが部屋に響く。