【第19章〜ヘブラスカの間にて〜】
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大量の食べ物を両腕に抱えたクロウリー。その後ろを、椿をお姫様抱っこで抱えて運ぶ瑠璃の姿は、数々の事件で減ってしまったただでさえ少ない団員達の視線を集めていた。
「......おい、あれが新しいエクソシストか」
「虎?だよな。あの体型に合うコートはあるのか......?」
「なぁなぁ、あの寝てる女の子可愛くね?」
「うお、マジだ!」
こそこそと聞こえる声は、残念ながら瑠璃には丸聞こえである。しかし、そんな囁き声に反応するほど、瑠璃は他人に対して興味を持ってはいなかった。
クロウリーの背に続いて歩いて行けば、ふと目の前に見覚えのある背中が見える。
「ミランダ。ココにいたであるか」
「クロウリー。ええ、先にご飯取らせてもらってたわ。ジェリーさんがね、規則正しい食生活も女子力アップの秘訣なんですって」
「ミランダは今も綺麗であるよ」
「まぁ、クロウリーさんったら」
でも嬉しいわ、と口にして笑うミランダは、瑠璃とその腕に支えられている椿の姿に目を見開いた。けれどすぐにふわりと目を細め、ふふ、と笑みを零した。
「椿ちゃんは寝てるのね。私の隣空いてるから、寝かせてあげて?」
よいしょ、と長椅子の端に寄ったミランダ。
瑠璃はコクリと頷くと、有難くその隣に優しく椿を寝かせて、ミランダがコートをその身体に被せた。クロウリーも、料理をテーブルに置くと、瑠璃が座れるようにと席を退けた。
早々に獣型に戻った瑠璃は、その空いた場所に座ると、タイミングよくジェリーがお皿を持ってきた。
「お待たせん♪イケメンくんっ!」
うふふ、といつもより上機嫌に笑うジェリーに、急に威嚇し出す瑠璃。
その威嚇にすら嬉しそうにするのだから、瑠璃はどうしようもない。
「そんなに警戒しないでよ〜ん。はい、これ。ミランダからのキイチゴを使ったお料理よ」
ゴトン、と大きな音を立てて置かれた、大きな肉。かなりブルーレア気味に焼かれているのは、瑠璃への気遣いだろうか。そして三段に積まれた肉の中心から流れる、赤いシロップ。その香りに、思わずジュルリと瑠璃の口の中に唾液が溢れていく。
「流石に傷んでたのは使えなかったから、新鮮なのを取り寄せて、お肉に合わせてみたの。勝手なことしてごめんなさいね、ミランダ」
「いいえ、ありがとうございます」
ジェリーの言葉に、首を振るミランダ。寧ろ取り寄せてまで作ってくれたジェリーに、ミランダは感謝しかなかった。
目の前に置かれた肉に、もう腹ペコだった寄生型2名は勢いよくかぶりついた。警戒心よりも食欲が勝ったらしい。元々、匂いで毒が入っていない事は確認している。ジューシーな肉汁が、彼等の腹を更に刺激し、 食欲を掻き立てる。
「これ、うまい!」
「みんなで食べる食事は美味しいである!」
「そうね」
ガツガツと肉を頬張る2人に、ミランダがくすくすと笑みを零す。ふと 隣に視線を向ければ、くぅくぅと寝息を立てる椿がいて。
(椿ちゃんも一緒に食べられたらいいのに......)
ばしん!
「ッ!!?」
乾いた音が響き、クロウリーの息を飲む声が聞こえる。テーブルの下から伸びた腕が、クロウリーの食事を拐ったのだ。一瞬何が起きたのかと目を瞠っていれば、カランと骨が落ちる音がした。
その音を追いかければ、もぐもぐと咀嚼しながら目を閉じている椿がおり。
「...... 椿ちゃん、寝ながら食べたわ。とてもお腹空いてたのね......」
「私のチキンフライ......」
「おかわりくれ!」
思いも寄らない出来事に、驚く面々。
咀嚼が終わり、再び眠り出した椿に、泣きながらも食事の手を止めないクロウリーと尻尾を振ってジェリーに次を迫る瑠璃。
そんな何でもない風景に、ミランダは心から笑みを浮かべた。やはりみんなで食べた方が、食事は美味しい。