【第19章〜ヘブラスカの間にて〜】
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『落ち着いて。害は加えない。私はお前のイノセンスが知りたいだけ』
「俺の、イノセンス......?」
『そうだ』
ヘブラスカの言葉に、椿はもがいていた身体からゆっくりと力を抜いた。取り落とされたりしないだろうか、と訝しみながらも、彼女へと身体を預ける。
へブラスがの手が動き、椿のイノセンスを調べる。その瞬間、まるで不快な物でも触ったかのような雰囲気を漂わせた。
『......シンクロ率が低い。1桁だ。一度、イノセンスをキューブに戻す ぞ、コムイ』
「また装備できるようになりそうかな?ヘブラスカ」
『私は無理強いはしない。決めるのは椿自身だ。――クロウリー、支えてやれ』
ヘブラスカの言葉に、コムイは少し考えるように顎へと手を当てると、問いかけた。しかし、彼女はしっかりとした返事を返すことは無く、持ち主である椿に全てを託すようにとした。
彼女の呼びかけに、クロウリーが頷く。へブラスカは壊れかけていたリングをキューブに戻し、その体の中に収容してからそっと椿をクロウリーに預けた。
クロウリーの腕の中で深く息を吐き出した椿。――少し体が軽くなったように感じるのは、イノセンスが無くなったからか。それとも、リングに縛り付けられた、彼女の“想い”が一度切り離されたからか。
どちらであるかは、椿自身もわからない事だった。
そんな彼女を見て、クロウリーは息を飲む。
......イノセンスが取り除かれたことで、彼女の体を蝕んでいた六角形のヒビが消えた。それは心から嬉しい事なのに、目立つ外傷の無くなった彼女が、エリアーデと重なって見えてしまったのだ。見紛うほど、似ている椿。
クロウリーは、ふるりと頭を振って思考を飛ばすと、平静を装って椿へと話しかけた。
「だ、大丈夫であるか、椿」
「ちょっと怖かったな。...... 瑠璃、尻尾すごい膨らんでるぞ」
「じゃ、瑠璃くんいってらっしゃーい」
『雑に扱うなコムイ』
一旦解放された椿が、ホッと息をつくのと共に、今度は瑠璃へと手が伸ばされる。野生の感覚がある分、椿よりも得体のしれない者への恐怖は強いのだろう。――しかも、相手は蛇だ。肉食獣の敵の一種でもあるのが、更に恐怖を掻き立てるのだろう。――だが、それは逆も然りだった。
ジタバタと虎の姿で暴れる瑠璃に、ヘブラスカが慌て出す。
「ヴぅう ゙う ゙ッ〜〜――!」
『おち、落ち着いて、落ち着いてくれっ』
「瑠璃、大丈夫だから」
威嚇し、唸る瑠璃に、ヘブラスカが戸惑う。彼女の戸惑う姿なんて、そうそう見られるものではないだろう。
しかし、このままでは事が進まない上、更に雁字搦めにされてしまうだろう。そうなってしまえば、更なる恐怖を感じてしまうと思った椿は、瑠璃へと声をかけた。
椿の声に、瑠璃は徐々に大人しくなっていく。唸る声は止まらないが、暴れる事は無くなった。
「悪いな、クロウリー。けどお前......あったかいな」
ヘブラスカがホッとした様子でイノセンスを調べるのを見ながら、椿はクロウリーを振り返る。イノセンスが離れたことで足の感覚は戻ってきたが、椿は体を預けたままにしていた。自分で立ち上がってもいいのだが、少しだけ......この温もりを手離してしまうのが、惜しかったのだ。
背中から感じる温もりに、どんどんと自分の体温が同化していく。椿はなんだかとても、眠たかった。