【第2章〜廃墟にて〜】
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その合間にも、適合者の2名はレベル1のアクマの掃討を続けていた。 なぎ倒すように次々と撃退していく2人は、見事なコンビネーションで圧倒している。
群れの半分を殲滅し終わった彼等は、暫くしてより邪悪な空気を持っているアクマと相対する。5メートルはあろうかという巨体に、筋骨隆々の上半身を支えるありえないほど細い下半身に、背中の毛が逆立つ。
そのアクマは、先程よりも危険とされる──レベル2に値するものだった。
耳の位置まで裂けている口角をにんまりと上げ、アクマは「ヒヒッ」と笑みを浮かべると、ギョロギョロとした目で周囲を見渡した。
「やっぱレベル1じゃ、エクソシストに歯が立たないかァ〜」
仲間がやられているという悲惨な状態にも関わらず、愉快だと言わんばかりに手を広げる。
ヒヒッ、と気色悪い声が響き、長すぎる舌がベロリと口の周りを舐め上げた。
「そんじゃァまァ、――俺様の能力で壊れちまいな! ”ボイドプレス”!」
高らかに叫んだ声と共に、大きな口をガッパリと開けたアクマの口から、ゴポゴポと大きな液体が膨らみながら出てくる。
肥大化していくソレに、ケタケタと高笑いするアクマに対して、適合者2名は冷静だ。まるで目の前の光景に慣れているとでも言わんばかり。
ゴパァッ、と音を立てて放たれた無数の球体に、適合者達は何の合図もなく、互いに反対方向へと飛び退いた。躱した球体が瓦礫にかかり、緑色の粘液が嫌な音を立てて石を溶かしていく。
その様子を見て、適合者達はすぐに顔を合わせて頷き合った。
「瑠璃、あの戦える黒服連れてこい。アクマは俺が押さえておく」
「おう。椿、気を付けろよ」
「わかっている」
一瞬の間もなく頷いた瑠璃は、獣人型から虎へと姿を変えると、クロウリーの方へ大きく跳躍した。しなやかな身体が闇夜に暗くなった空気に消えていくのを視線の端で見送り、椿と呼ばれた女は未だ高笑いしているアクマと対峙した。
椿は左手に装備している弓を、レベル2のアクマへと向ける。アームリングを弓柄に一度強く打ち付けると、グッと弓を引いた。その跡を辿るように光る矢が出現し、彼女が手を離した瞬間、アクマへと強く放たれた。
空を切る矢。
しかし、アクマはそれを素早く躱すとケタケタと笑い始めた。
「そんな弓なんかで俺は倒せないよぉ〜だ!」
「だろうな」
アクマの挑発に冷静に言葉を返す椿。
彼女はトン、トン、と指先で弓柄を一定のリズムで叩いた。一見、何の意味もなさそうな行為だが、徐々にその音は大きくなっていき、通常では聞こえない位置まで響いていく。
そこへクロウリーを咥えてきた瑠璃が戻ってきた。マントの首元を口に咥えられ、成す術もなく連れてこられたクロウリーは、散々抵抗した後だったのか、恨めし気に2人を睨み上げた。
それに気づいた瑠璃が、彼を地面に雑に投げ捨てる。「ウッ......」と小さな唸り声が聞こえた気がしたが、そんなもの、虎には関係なかった。
「――イノセンス、第二開放。“断罪の矢”」
痛みに耐えながら起き上がるクロウリーの耳に、椿の声が響く。次いで、カァン、とまるで金属でも打ち付けているのではないかと思う程、 高らかに響く音。彼女の“イノセンス”という単語に、クロウリーはガバリと顔を上げた。
クロウリーの視界に映った、巨大な弓矢。
金色に光り輝くそれは、完全に扱う側の彼女の体長を越えていた。それを見たクロウリーの脳内に過るのは、同じホームに住む、ラビのイノセンスだった。
(弓矢が巨大化するのか......!)
迫力のある光景に、クロウリーは椿を見る。
その鋭い紺色の瞳と、目が合った。瞳の奥には、有無を言わさない空気が漂っており、また『早く立て』と責め立てられているようにすら感じる。
「黒いの、いきなりだが合わせろ」
「何を、」
「いいから乗れ。空中戦でも、アクマに当たるまでコイツは追い続ける。トドメは任せた」
淡々と作戦を口にする椿に、クロウリーは二、三度瞬きを繰り返すと、ため息を吐いた。
「......貴様ら、初対面の相手に対して扱いが雑ではないか?」
「使えるものは使う。それだけだ。お前、アクマの血が吸えるのだろう?いい栄養補給になるじゃないか」
「そういう話ではない」
椿の雑な扱いに、クロウリーは肩を落とす。
この短時間で、彼女達がまともにこちらの話を聞くような人間達ではないことは、何となく察している。
――信じるべきか、否か。
クロウリーに託されているのは、その二つの選択肢だけだった。