【第16章〜観測者〜】
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――清々しい青空が広がる中。
教団の医務室には、寄生型2名から、地鳴りのような音が鳴り響いていた。常駐していた婦長が一瞬、地震かと勘違いしたのは、言うまでもない。
「......ホント。寄生型の人が増えると、音もすごいわね。震度5は硬いよ。......まあ、その中でも目覚めないこの子もこの子だけど」
未だ目覚めてもいないのにも関わらず、地鳴りを響かせる寄生型2人と、その傍ですやすやと寝ている少女の姿に、婦長は心の底からため息をついた。
――こんな音を聞き続けて、もう4時間。
栄養剤を投与し続けているものの、全く効果がない現状に、そろそろ何か手を打たないと、と考えていた、矢先だった。
コンコン、と扉がノックされ、扉越しに声が掛けられた。
「失礼するよ、婦長。少しいいかな?」
「コムイ室長?ええ、少しお待ちくださいな」
予想外の来客に、婦長は椿のベッドのカーテンを閉めると、扉を開けてコムイを迎える。
その隣にいた初老の姿に、目を見開いた。
「あら、ブックマンもいたのですか?いくら室長とはいえ、レディのいる部屋ですよ」
「邪魔しておる」
「ごめんごめん。それより、はいコレ。昨日ブックマンが帰ってきてね。協力してもらって、今し方やっと完成したんだ。こっちがクロウリーで、こっちが瑠璃くん。2人に注射してあげて」
「わかりました」
「失敬。私はそこの娘を診させてもらうぞ。......気配だけだが、生きておるのが不思議なくらい弱っておるようじゃな」
「流石ブックマンですね。えぇ、私達ではもう......お願いします」
婦長がコムイから2本の名前が書かれた注射を受けとり、ブックマンが椿のベッドのカーテンを開く。
そこには、ここに運び込まれてからそう変わらない容態で横たわる、椿の姿があった。
イノセンスの侵食が酷い両腕は包帯で覆われ、起きても体が崩れないように固定していた。体力の回復と共に顔まであったヒビは少し引いてるがまだまだ痛々しい姿をしている。
コムイはその容態を一瞥すると、ブックマンに任せ、クロウリーと瑠璃の方へと足を進めた。テキパキと投与の準備をする婦長に、コムイは問いかける。
「婦長、二人の容態は?」
「安定しています。ただ、やはり寄生型は食事摂取できないと回復が遅いですね。元々、アクマの毒は浄化が不安定です。しかも、瑠璃さんは食事の栄養バランスが人と違うせいか、点滴の種類も多くて......」
婦長の言葉に、ふむ、とコムイは顎に手を当てる。やはり人間とは違う、というのが、回復の妨げになっているらしい。
(とはいえ、虎の生態にあった点滴がある訳では無いし、それを作るにしても、どうしても時間がかかる......)
出来れば口からの栄養補充が1番なのだが、本人が目覚めていなければ意味が無い。
「うーん。動物も適合者になるのは、クラウド元帥のラウ・シーミン以来だからねぇ。1回お願いするか......。椿ちゃんも、ある程度回復したら、ヘブラスカに診てもらうべきだね」
「えぇ、でも気がかりなのはクロウリーです」
「クロウリー?彼がどうかしたのかい?」
首を傾げるコムイに、婦長は神妙な顔つきで頷く。その顔は、医療従事者としては、あまり見せたくないものであろう。――不安が過ぎる。
「ええ。実は、以前よりも回復が遅いのです。ノアとの戦闘ほど深い傷を負っていないはずですが、まるで同等......もしくはそれ以上の何かを受けたとしか......」
「......なるほどね」
婦長の言葉に、コムイは真剣な顔で婦長を見つめると、「多分だけど」と話し出した。
「彼は......コムビタンDの影響が残ってたと思う。それの作用が働いていたんじゃないかなぁ」
「......コムイ室長?」
「だ、大丈夫大丈夫!さっきの注射に改良した解毒剤も入ってるから、打てば治るはず!」
「もう......」
あははは、とカラ笑いをする室長に、婦長は頭を抱えるしか無かった。
......室長ともあろう人が、味方を窮地に貶めてどうするのか。しかも原因がわかっているならいるで、先に言って欲しかった。頭を悩ませ、奔走した時間を返して欲しい。