【第15章〜届け物〜ミランダ視点】
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そして、コムイ室長の自室へと辿り着いた私達に降り掛かった試練は―――思った以上に手強かった。
ガッチリと閉められた扉を、ダンダンダンとリーバー班長が全力で叩く。
......最早殴っていると言っても過言ではないその行為に、私は引き攣る頬を止めることはできなかった。
「室長ー!コムイ室長ー!生きてますーー!?」
「あ、あのー......お届け物が、」
ガガガガガ!ピーギギギギギィキーン!
「あー、くそッ!!聞こえちゃいねぇッ!コムイ室長!室長!!」
必死に声を張り上げるリーバー班長。しかし、中から聞こえるけたたましい機械音に、彼の声は無情にも掻き消されてしまう。
これでは声が届くまで、どれだけ時間がかかるのか......。そもそも届くことはあるのか。そう考えると、書類を渡すだけの任務がこの先進まない事に、ゾッとしてしまう。
「ちっ、これだから鍵は開けといてくれって......あーもう、仕方ねぇなぁ」
「何か、策があるんですか?」
「いいか、よく覚えとけ。室長にはこれが一番効くんだよ」
しー、と口元に指先を当てて、そう口にしたリーバー班長に、私は首を傾げつつも頷く。
よし、と満足げに頷いた彼は、すぅ、と大きく息を吸うと、――――大袈裟に頭を抱えだした。
「えっ、リナリーちゃんが結婚」
「リナリー!結婚なんかお兄ちゃんが許さないからなァアアアアア!!!!!」
バァン、と響く、扉が開く音。変な音と共に扉が吹っ飛んだが、気にしている余裕はない。
声量は今までで一番小さかったのにも関わらず、呆気なく飛び出してきた室長の姿に、私は唖然とする。
(......嘘でしょう)
リナリーちゃんの事で騒いでた姿は、今までにも目にしてきた事はあったけれど、まさかここまでとは。
あんまりの事に動けずに居れば、ふとコムイ室長と目が合う。その瞬間――関わってはいけない、と本能が警鐘を鳴らしたのは、仕方がないだろう。
「ミランダ!」
「は、はいっ、!?」
「リナリーは!?リナリーはどこ?!結婚なんて許さないっていつも言ってるのにっ!!」
キィーー!!っと奇声を上げそうな彼に、私は思わずたじろいでしまう。
ガシッと肩を掴まれた瞬間、私はその必死さに恐怖を覚え、室長の顔に目掛けて書類を押し付けてしまった。
「ぶべっ、!」
「ご、ごごごめんなさいっ!リナリーちゃんの事は嘘でっ、あ、あのっ、コレを婦長から預かってきたんですっ!!」
「へ?婦長から?」
ガサリ、と書類を受け取ったコムイ室長に、恐怖に駆られていた私はキョトンとしてしまう。
(あ、あれっ。思ったより復活が早い......?)
嘘をついた事や、書類を押しつけた事を怒られるかと思ったが......どうやらそれは無さそうだ。
ふむふむ、と声に出しながら、書面から何かを読み取ったらしいコムイ室長は、「あ」と言って顔を上げた。
「あー、コレね。ありがとう、ミランダ。助かるよ」
「い、いえ......リーバー班長に御協力頂きまして......」
「リーバー班長?」
キョトンとした室長に、空気が一瞬止まる。
え、と横を見れば、そこには何故かリーバー班長の姿はなく、そのずっと先の壁に、壊れた扉と壁から必死に抜け出そうとしているリーバー班長を見つけた。
「......えっ」
「〜〜ッ、!しつ、ちょうぉ〜〜ッ!」
「あ、リーバー班長。君、いたんだ?」
「いたんだ?じゃないですよ!人の事、扉に挟みやがってッ!!つーか!決済待ちの書類溜まってるんてるですから、早く仕事に戻ってくださいよッ!」
――さっきまでの余裕どこへやら。
顔面を打ったのか、鼻を真っ赤にしながら叫ぶリーバー班長に、コムイ室長は「アハハハ〜〜」と軽い笑みを浮かべる。
ビキッとリーバー班長のこめかみに青筋が浮かんだのは、気の所為ではないだろう。
(な、なんか、凄いことになっちゃったかも......)
私、この2人の言い合いを止める勇気はないのだけれど......大丈夫かしら......?
「ごめんごめーん。でも、今も大事な仕事してるから、もう少し誤魔化しといて。んじゃねぇ〜〜!」
バタン。
「あっ!ちょ、室長!」
ガンガンガンガン、ズギャラギャラ!!!!
よいしょ、と壊れた扉をそのまま嵌め込んだコムイ室長は、リーバー班長を無視して、そのまま再び自室へと篭ってしまった。
間髪入れずに響いた轟音に、私とリーバー班長は思わず耳を塞いだ。
扉が歪んで隙間が出来てしまっているからか、音が先程よりも大きく聞こえてくる。
「ああクソっ!」
これ以上は呼んでも無理だと悟ったらしいリーバー班長は、大きな舌打ちを零すと、元来た道を戻り始めた。
その背中を見て、私も騒音を奏でる部屋に背を向け、踵を返す。
......とりあえずこれで、任務は完了だ。