【第15章〜届け物〜ミランダ視点】
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涙を拭って、病室を後にする。
袋に入ったキイチゴが、中で悲しそうにコロコロと転がっていた。
(キイチゴ......。瑠璃さんにちゃんと食べさせてあげたかったな......。ジェリーさんに頼めば、うまく調理してくれるかしら......)
書類を片手に、キイチゴを握りしめ、食堂へと足を向けた。これ以上痛ませて、完全にダメにしてしまうよりは、早い方がいいだろう。
(2人が起きた時には、美味しいもの食べてもらたいわ......。もちろんクロウリーさんにも)
瑠璃さんとクロウリーさんは沢山食べるから、ジェリーさんには腕を奮ってもらわないと。
椿ちゃんはなにが好きかしら。好きな物をいっぱい食べて、ちゃんと体を休めて欲しいわ。
色んな物を食べて貰って、色んな“好き”を見つけて欲しい。
そう考えながら、食堂を縦断していれば不意に、私は自分がコムイ室長 の“自室”というものを知らない事に気がついた。
(大変。これじゃあ届けられないわ。誰か知ってる人は居ないかしら......)
知ってそうな人は......と探しながら、厨房の方へと足を進めていく。
「前、危ないわよ」
「わわっ、!?」
思考とコムイ室長の部屋の事に気を取られていれば、誰かの制止の声に気づくよりも先に、身体がガンッと勢いよく何かにぶつかってしまった。
ガクン、と折れる身体。
カウンターの壁に額を打付ける寸前、ギリギリで身体は止まってくれた。
「大丈夫?」
「あ、あははは......ありがとうございます......」
心配する声に振り返れば、ジェリーさんと目が合う。恥ずかしいところを見られてしまった、と顔を覆えば、クスクスと笑顔を向けられた。
かぁっ、と染まる頬に、背中がむず痒くなる。考え事のし過ぎでカウンターにぶつかってしまうなんて。
(穴があったら入りたいわ......)
「ふふっ。ミランダ、お帰りなさい」
「た、ただいま、ジェリーさん」
「ぶつかるまで気づかないなんて。すごい深い考え事でもしてたのかしら?」
それとも、お腹減って気づかなかった?と続けるジェリーさんに、私はハッとする。
恥ずかしがっている場合じゃない。
「あ、あの、すぐではないんだけど、コレを使ったメニューって何か作れないですか?」
「貸してごらんなさい。んー......?......キイチゴよね、これ。結構傷んじゃってるけど」
「あ、新しい仲間が、お肉が好きで、味変えに食べてるって聞いたの」
「あー、昨日女の子を背負ってたあのワイルドな彼ね?噂になってるわよぉ〜?いかにも肉食系って感じよねぇ、彼。可愛いお耳に逞しい体躯、あんな素敵な男性に抱かれたいわぁ〜〜っ!」
うふふふ、と自身の体を抱きしめ、身体をくねらせるジェリーさんに、私はどんどん気圧されていってしまう。
(スイッチが入ると凄いのは知っているけれど......)
突然恋バナに走るのは、何度経験してもびっくりしてしまう。
しかも、瑠璃さんの性格を知っていれば、尚のこと。......恐らく驚いた後、全力で逃げ出してしまいそうだ。
「あ、あの、ジェリーさん......?」
「わかってるわよ。コレ、貰うわね。歓迎会までに、ぴったりのメニュー考えといてあげるわ!」
「!、ありがとうございます......!楽しみにしてますね」
「もちろんよ!飛びっきりのを作って、彼に振り向いてもらうのよ〜〜!」
再び上機嫌に身体をくねらせながら、キイチゴの袋にちゅ、とキスを落とすと、ジェリーさんは1度奥へと引っ込んで、直ぐに戻ってきた。
「それで?ミランダは何食べたい?何でも作ってあげるわよぉ〜」
うふふ、と楽しそうに笑みを浮かべる彼に、私は少しばかり申し訳なく感じる。
お腹は空いているけれど、コムイ室長への届け物を、これ以上後回しにしてしまうのは気が引ける。
(ジェリーさんには申し訳ないけど......)
「すみません。食べたいのは山々なんですが、私、コムイ室長に届け物があって......終わったら、また来ますね」
「あら、そうなの?残念」
「ごめんなさい。あと、その......因みに室長のお部屋がどこにあるか、 ご存知ですか?」
「コムイの部屋なら、アタシより化学班に聞けばいいじゃない。ほら、ちょうどそこのテーブルにリーバー班長がいるし」
ジェリーさんの指差す方へと視線を向ければ、朝からもりもりと食事を摂っているリーバー班長がいた。
薄らと隈が出来ているような気がするが、......気の所為だろうか。
とりあえず、コムイ室長に1番近い人間が見つかって良かった。
「ありがとうございます!行ってきます!」
「はぁい、気をつけてねーん」
綺麗な笑みを浮かべながら、手を振るジェリーさんに、手を振り返して、私はリーバー班長の元へと歩く。
食事中に話し掛けるのは大変申し訳ないが、まあ、仕事なので許して欲しい。