【第14章〜檻の中にて〜】
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「......ぜんしょ、するよ」
そう小さく呟いて、再び気を失う椿に、瑠璃が彼女の心音を確かめる。
トクン、トクン、と響く小さな心音に、瑠璃はクロウリーを見るとコクリと頷いた。クロウリーが安堵に息を吐く。
そうして再び静寂が訪れた時。
馬車は動きを止めた。目の前にあるのは、ゲートがある建造物だった。
「皆さん、着きましたよ。クロウリー殿、冷たい場所に座らせてしまって、申し訳ございません」
「私が勝手にした事である。気にしないでくれ」
「......馬車はゲートがある建物まで檻は入れません。もうすぐ日が昇ります。町の人が起きてくる前にゲートを通りましょう」
頭を垂れるファインダーの言葉に、クロウリー達が頷く。
キィ、と開いた馬車から、ミランダが降りて来た。
「クロウリー、手伝ってくれ。椿が壊れないように背負いたい」
「ひぃいいっ?!と、虎がっ、!」
「騒ぎ立てるでない。......申し訳ない、瑠璃。手伝おう」
「......ああ。頼む」
椿を運ぶため、獣人型に変化した瑠璃に、驚くファインダーを叱咤したクロウリーは、瑠璃が椿を背負うのを手伝う。
優しく背負った瑠璃は、ゆっくりと歩き出すと、檻を抜け、ミランダとクロウリーと共に建物内へと入った。
内部では阿鼻叫喚。
分かってはいたものの、人間型の虎なんてものが入れば、驚きに慄くのは当然だろう。
しかし、それでも瑠璃は椿を下ろすようなことはしなかった。クロウリー達も、自分達が背負うから、と名乗り出る事はせず、悲鳴を上げた者達を無言で視界にとらえるだけに収めた。
「問題ない。私達の仲間である」
ミランダがゲートを通る手続きをしている最中、恐る恐る聞いてきた受付に、クロウリーが誤魔化すことなく突きつける。どよりと揺れる周囲を放置し、4人は正面からゲートを通った。
本部へと降り立てば、すぐにコムイと医療班の婦長が出迎えてくれる。
「お帰りー。クロウリー、ミランダ。まずは全員医務室に行こう」
「私は大丈夫だけれど、椿ちゃんの......この子の時間が吸えないのっ」
「コレは......装備型イノセンスを、無理矢理解放したのかな?とりあえず、まずは全員傷を癒すべきだ。婦長」
「部屋の用意はできていますよ。本来は個室を用意したいのですが、部屋数が足らなく、仕切りを設置しています。治療が落ち着いたら着替えもあるので、部屋を分けさせてもらいますよ」
「どこにいけばいい」
「ついてきてください」
淡々と進む話を可笑しいと思った人間は、此処にはいなかった。同時に、瑠璃の姿に怯え慄く者も、此処にはいない。......というか、そんな事で驚くほど、可愛い常識は持ち合わせていないのだ。