【第14章〜檻の中にて〜】
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「......椿」
瑠璃自身のお腹を枕にして横たわる椿に、心配そうに瑠璃が呼びかける。意識のない彼女は、今にも息を引き取ってしまいそうなほど儚く、ひび割れたガラス細工のように椿が砕けて無くならないか心配でならない。
体が冷えないようにとクロウリーのマントを被せ、隙間風が無いようにと瑠璃が彼女の体の周辺を固める。
「瑠璃、心配ないである。教団にはイノセンス修復のスペシャリストがいる」
クロウリーの言葉に、瑠璃は不安げにしながらもしっかりと頷く。寄生型のイノセンスを持つ者同士だからだろうか。何となく、彼が嘘をついていないと瑠璃は判断した。
馬車に揺られる事、数十分。
身体を休める為、目を閉じていた瑠璃が目を開けた。と、同時に開く、椿の瞳。
「............瑠璃」
「椿っ」
「目が覚めたであるか......!」
「...ココは?」
体を動かさず、視線だけで問う椿に、2人が安堵する。
椿が目を覚ました事が嬉しくて、顔を舐めれば、椿はぼんやりとした目で瑠璃を捉えた。
「......なんだ。まだ、いたのか。......自由だと、言ったのに」
「お前の笑顔のない道など、興味はない。......生きろ、椿」
「......へんなやつ」
は、と小さく笑みを浮かべる椿の顔は、どこか困ったような、それでいて照れているようにも見えた。
そんな2人を見て、クロウリーはゆっくりと口を開いた。――繊細な2人へ向ける言葉を、選び間違えないように。
「...椿、聞いても良いであるか?」
「な、んだ」
「私は......愛するものを破壊して、エクソシストになった」
クロウリーの言葉に、椿と瑠璃はまっすぐ彼を見据える。その視線に押されるように、クロウリーは気持ちの内を話し出した。
「私は、それを許される行為だとは思っていないである。未だに、自分の事が恐ろしくなることだってあるくらいだ。......エクソシストの仕事は、人から感謝される事の少ない仕事である。アクマと戦う私達はバケモノ呼ばわりされ、淘汰される。......でも、信じて命をかけてくれる仲間もサポーターもいるである。椿がエクソシストになってくれたら、すごく心強いと、先の戦いで私は確信した」
(――伝わる、だろうか)
己の過去を折り混ぜながら話すクロウリーは、震える手を握り締めた。
心身を痛めた人間へかける言葉は、綱渡りだと思っている。......言葉ひとつで崩壊する、危ない橋。
しかし、口にした言葉に、嘘はなかった。
エクソシストの仕事は誇りに思っているし、仲間を信じているのも勿論の事。......淘汰される事への悲しさも、椿への想いも。全てが彼の本心であった。
「椿。そして瑠璃。一緒に戦う、仲間になって欲しいである」
「......俺は、なれるだろうか。お前たちの、なか、まに」
「もう、仲間である!」
「そう、か......ミ、ランダにも、あやまらないとな......」
はは、と笑みを浮かべる椿に、瑠璃が緩やかな気持ちで2人を見つめた。『参った』とでも言いたげな頑固娘は、やっと彼等の存在を認めたのだ。
――“殺人鬼”と“エクソシスト”という、真逆の位置に居たはずの、人間達を。
「もうすぐゲートに着くである。気をしっかり持つである」
「ああ......瑠璃。きみは、どうする......?」
「椿の側にいる事が、我の全てだ。ただ......そうだな。いつでもいい。――笑ってくれ、椿。もう、作り笑いを見るのは、ごめんだ」
「......ははっ。ばれ、てたか」
瑠璃の単刀直入の言葉に、椿は今度こそ観念したように呟いた。......この時が、初めて瑠璃の想いが届いた瞬間だった。