死んだ町に居座る適合者【改訂版】
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瓦礫の町を一人と幻影の白虎が歩く。
人も居ない。
建物も全て壊れている。
アクマの残骸も散らばり、生き物の気配は彼ら以外、存在しなかった。
「......もっと早くこうするべきだった。瑠璃に甘えすぎたな」
ぽつりと呟いた人影は、空を見上げると、浅くため息を吐いた。色もなく空気に溶けていく自身の息に、どこか虚しい気持ちが込み上げるが、彼女にとってはそれもどうでもいい事だった。
町の外周から中央までぐるっと歩いてきた彼女は、沈みかける月を見上げ、足を止める。白い虎が『待っていた』と言わんばかりに揺れ動いた。
椿はゆっくりと瞳を閉じると、今度は深く深呼吸をする。
心音は――――嫌なくらい、静かだった。
「――長き歳月この地を見守りし、白虎よ。約定は果たされた。天へと帰れ。――天翔・解約天儀」
静かに紡ぎ出された言葉に反応して、再び地面が光る。かと思えば、白虎が歩いた道を駆け戻るように光が走り、町が昼の如く明るく照らされる。
――刹那、白虎が飛び上がり、空へと駆け出した。
向かう先は、先程の森の、そのまた奥。
「あそこか。自分から居場所知らせるなんてバカな奴」
椿の嘲笑に、白虎は宙を一回転すると、そのままより先を目指して走り出した。居場所がバレたレベル3の吠えるような声に、レベル1のアクマの群れが一気に突撃していく。白虎の姿はもうなく、町の光はもうなりを潜めていた。その代わりとばかりに夜空がざわついて、球体状のアクマの群れが見えてくる。
椿はイノセンスを発動させると、空へと標準を合わせた。彼女の口角は、綺麗につり上がっていた。
「――来いよ、アクマども。もう遊びは終わらせようぜ」
椿の宣戦布告に、アクマ達が共鳴するように身体を震わせた。
(――......元気でな、瑠璃)
――さあ、楽しい愉しい祭りの、始まりだ。