死んだ町に居座る適合者【改訂版】
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定夢小説の主人公は、その話に応じて容姿や性格などを設定しています。
全ての小説で、夢用のお名前を使用する場合は、こちらを使用してください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(行ったか...)
ミランダの背中が小さくなったのを見送って、椿は後ろの木へと背を預けた。この森に来たのは、キイチゴ以外にも他の目的があってのことだった。
目を閉じれば蘇る、友人の姿──。
(......瑠璃にこれ以上、無理をさせられない。なら、やることは一つだ)
椿は意を決すると、森の中へと、歩みを進めて行った。夜の森は暗く何が出るか分からないが、もう何年も歩き、慣れた森の中だ。探し物はさほど苦労せず見つける事ができる。
整備された道から逸れて獣道を進み、草むらを掻き分けて、すぐの──切り立った崖。その先端にあるのは、虎の模様を模した白い岩が、凛として聳え立っていた。
その上に乗った小さな石を手に取り、椿は手で軽く土や埃を払う。岩から欠けたのだろうか。この石の出処は知らないが、手に収まるそれが目の前の岩と同じ力を持っている事は知っていた。
(コレをしたら瑠璃怒るかなぁ......でも、長く付き合わせてしまった。......もう、守られてばかりじゃダメなんだ)
硬く石を握りしめて、ゆっくりと深呼吸をする。澱んでいた気持ちが、少し落ち着いたような気がした。
(俺はもう、弱くない。──やれる。瑠璃を、解放するんだ)
幼き日に、寂しさから縋った蒼き瞳を持つ虎。
彼に縋る事でしか、生きてこられなかった自分自身と訣別すべく、空を見上げて深く息を吐きだした。
椿は決意を胸に、石をポケットに突っ込むと適当な薬草を摘んで、何事も無かったかのようにみんなの元へと戻った。