【第9章〜夢の間に〜】
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(あぁ、どうしよう。椿ちゃんに全然追いつけないわ......。どこに行ったのかしら......?)
──時間は遡り、クロウリーと瑠璃の思いを受けて外へと飛び出したミランダは、盛大に道に迷っていた。彼女は忘れていたのだ。......自分が極度の方向音痴であることを。
町の中を器用にぐるりと一周した彼女は、最初向かった方向とは真逆に位置する森の中へと足を踏み入れていた。ちなみに、初期位置からは徒歩三分ほどの距離を30分以上かけているが、本人は遠くへと来ているつもりだ。
しかし、そんなことにも気が付いていないミランダは、全く見えない背中に、走っていた足を緩めてしまう。どこに行ってしまったのかと首を傾げながら、彼女は森を彷徨っていた。......同じところをグルグルと回っているとは、気づかずに。
(さっき無線ゴーレムは使えたから、万が一の時はクロウリーさんに連絡して迎えにきて貰えばいいんだけど......それじゃぁ意味ないのよね......。なんとしても椿ちゃんを見つけ出さないと......っ!)
心の中で、改めて決意を固めるミランダは、夜の森の中を見渡して、少しでも手がかりがないか探すことにした。とはいえ、そう簡単に見つかるわけは無いのだが、ミランダは諦めることなく視線を巡らせていく。
そんな時、ぱきりと足元で音が響いた。足をどかせば、どうやら小枝を踏んでしまったらしい。
まあ、森の中ではよくあるだろうと顔をあげれば、突然怒号が飛んできた。
「誰だ!」
「っ、椿ちゃん!?」
鋭い声が聞き覚えのあるものだと気づき、ミランダが走り出す。......こういう時の彼女は、真っ直ぐ向かうことが出来るのだから、本当に不思議でしかない。
ガサガサと背の低い雑草を踏みしめながら進んでいけば、僅かに川の音が聞こえてきた。並ぶ木を避けて更に奥を覗き込めば、川沿いで椿がしゃがみこんでいた。
「なんだミランダか。なんで追ってきた?」
首を傾げる椿に、ミランダは同じように隣にしゃがみ込むと、ぎこちなく笑みをこぼした。
「あの、何か力になりたくて...それ、何の木の実かしら?」
「これか?キイチゴだ。野生のな」
椿が手の中に持っている、小さな木の実をミランダに見せるように手を広げた。ころりとした小さな赤い実は、瑞々しくて可愛らしい。
「小さい頃に森を探検してた時、味変えだって言って、瑠璃が肉と一緒に食べてた事があったんだ。今は少なくなってきていたんだが......見つけられてよかった」
「可愛らしいわね」
「少し食べてみるか?人も食べれるんだ」
ほら、と椿に差し出され、ミランダが少し遠慮がちに指先で小さな実をつまんだ。ぱくりと口の中へと放れば、甘酸っぱい味が舌を刺激する。
プチプチとした食感が、なんだか新鮮だ。
「ん、美味しいわ!」
「それは良かった。......うん、毒もなさそうだな」
「ふぇっ、!?ど、毒味だったの、コレ!?」
「冗談だよ。行こう。どうせ瑠璃に何か言われて来たんだろう?」
ははっ、と笑みを浮かべて歩き出してしまう椿に、ミランダが慌てて追いかける。静かに流れる川に沿って歩いていけば、案外早く町が見えてきた。
(......結構近かったのね)
すごく歩いた気がしていたけれど、と苦笑いを零すミランダは、この時やっと自分がかなりの時間彷徨っていた事に気がついた。それと同時に、同じ分の時間探さないと見つけられない木の実を、1人で探しに来ていた彼女の思いが伝わってくるような気がした。