死んだ町に居座る適合者【改訂版】
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それから数時間後。
クロウリーとミランダはゲートを通り、現地ファインダーと合流して目的地に向かって歩いていた。
「“死んだ町”、ですか?」
ミランダがファインダーから伝えられた任務の詳細に、声をあげる。
物騒な異名のついた町の名に、ファインダーはこくりと頷く。
「えぇ。今から行く町は、アクマの攻撃で廃墟と化しています。けれど、今もアクマの襲撃が止んでいないのです」
「目的は、イノセンスの破壊であるか?」
「おそらく。元々、西の守神:白虎の住う町としてある程度名のある町で したが......」
「西の、しゅしん、?」
淡々と情報を伝えるファインダーの聞きなれない言葉に、ミランダが首を傾げる。
世界各地を回っているエクソシストという職業だからか、そういった噂話や逸話などはかなり耳にしていた2人だったが、残念ながらここの逸話は初めて聞く類のものらしい。
西の、というのだから、東や北、南なんかもあるのだろうか。そんな思考が2人の間をゆっくりと過ぎ去っていく。
ファインダーは周囲を見ながらも、手のひらを出し、その上に十時線を描いた。
「中国神話の中で、方位を守る神の名前だそうです。ここの地域には、東、西、南、北の4つの神がいて、西は白い虎の神が守護してると伝えられてます。神ですから現実にはいないとされており、その代わりに、町では当主の家で代々虎を飼って、大切に崇めていたそうです」
ファインダーの言葉に2人は「なるほど」と小さく呟く。
......いつも思うが、ファインダーの情報収集力には舌を巻く。有難い限りだと感謝をしながら、クロウリーは彼に問いかけた。
「その虎が、イノセンスと関係しているのであるか?」
「可能性はあります。アクマが町を襲撃した際に、虎を見たと報告があり、クラウド元帥の寄生型イノセンス獣に近いのかもしれないというのが、教団の考えです」
「寄生型、イノセンス......」
エクソシストとの高い融合率を持つ、イノセンス。
けれど、その分リスクも多く、また、装備型エクソシストよりも、イノセンスとの高い融合率を持つ寄生型は、人と違う事で迫害の対象になりやすいのだ。
そう考えるだけで、クロウリーの背中には冷や汗が流れ落ちていく。
――自身が受けた苦しみを、今も尚、誰かが受けているのかもしれない。
それがどれだけ辛く、苦しいことか。
「それと、もうひとつ。虎の他に、町の方角から光る弓矢を見たとの情報も入ってきています」
「弓矢......? イノセンスが2つある、ってことかしら......?」
「さあ......。それは分かり兼ねますが、可能性は十二分にあると思います」
ファインダーの言葉に、ミランダとクロウリーの顔が強ばる。
......イノセンスが、2つ。
それが何を意味するのか。もう何年も活動を続けている2人には、簡単に察しがつくことだった。
「戦わずして説得できれば良いのであるが......」
クロウリーの言葉に、ミランダが頷く。
「......私、どうしてこの町を離れたくないのか、知りたいわ。私のイノセンスで、何か役に立てればいいのだけど......」
「そうであるな」
暗い顔をするミランダに、クロウリーが同意を示す。どうやら2人とも、思うところは同じであるらしい。
クロウリーはぎゅっと拳を握り締めると、自身の胸に拳を当てた。
「これは良い機会だと、私は思うである。アレンやラビ、リナリーが私を教団で受け入れてくれたように、きっとこれから会う適合者も、ホームにいるような家族が必要である!」
「......そうね。私もみんなに支えられてここにいられるもの。頑張りましょう!クロウリーさん!」
2人の決意が、ひとつになる。
顔を見合わせ、気合いを込めた2人。そんな彼等を見ていたファインダーは、口篭るようにしてから、おずおずと言葉を掛けた。
「あの、頑張るのはいいんですけど、道こっちなので......。......迷わないでくださいね?」
ファインダーの指摘に、別の道を行きかけていた迷子常習犯2名は、ピタリと立ち止まるとぎこちない動きで振り返った。
時を止めたかのように微動だにしない2人の顔が、徐々に赤く染っていく。
一頻り羞恥に騒いだ2人は、大人しくファインダーについていく事で、目的地へと無事足を踏み入れたのだった。