【第7章〜瑠璃の想い〜瑠璃語りシーン】
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泣きながら「ごめんね」と謝る子供に、体の至る所を撫でられる。傷が見える度、ボロボロと泣き出す子供は、酷く、......脆い。涙を拭うように舌を這わせれば、不器用な笑みを浮かべ、鼻を啜る。
(......やはり、我の見立てに間違いはなかった)
この子供は──守らなければいけない存在だ。
だから。
「くるな、人間共」
──武器を持って歩み寄ってくる人間共に、腹の底から吠えたのは当然だろう。
人間共が足を止め、身を固める。驚いたように子供が目を見開くのを、正面から見つめ返せば、子供はこくりと頷くとゆっくりと立ち上がった。
人間共を睨みつけ、自身の左手首を握り締める。きら、と光るのは──月のような色をした輪っかだった。
「勝手なことをして......許さない!」
子供の左手首が光り、形を生していく。縦に伸びるそれは、子供と出会う前に見た、人間達の武器だった。
弓を叩いた手から光が現れる。
子供の肩を貫いた木の棒と同じ形をしたそれは、唖然とする人間共に向けられる。空気が一気に張り詰めた。
「申し訳ありません、~様!」
「しかし、先代が亡くなられたばかりのところに、新しき資格を持つ虎が現れたのです!」
「これは白虎様の思し召しに違いありません!」
「現に加護の移し替えが完了しました!これでこの町は、」
「うるさい!あんた達の勝手な行動で、この子を傷つけないでッ!!」
バシュッと空を切る光の筋が、人間共の足元に突き刺さった。
子供の放った攻撃とは思えない威力で、地面が抉れる。驚いた人間達が口を閉じた。
再び弓を引こうとした子供がはぁ、はぁ、と息を上げ、苦しそうに顔を強ばらせる。......何やら息が荒い。そんなに体力を使う攻撃なのだろうか?それとも、この子供の体力が少ないのか。
(──違うな)
光る弓が、この子供から力を奪い取っているのだ。
このままでは、子供が倒れてしまうだろう。守るべき存在に、そんなことをさせる理由はない。
「子よ。われは、だいじょうぶだ。だから、やすめ」
ガウガウと喉を鳴らす。
我の声に振り向く子供。やはり驚いた顔をする子供を優しく下がらせるように押し退け、我は前へと出た。
体はいつの間にか自由に動けるようになっていた。
人間共を威嚇するように、姿勢を低くする。──その瞬間、前足に違和感を覚えた。
それは徐々に全身に行き渡り、違和感はどんどん大きくなっていく。
身体が安定しない。
爪が、牙が、思ったように出し入れすることが出来ない。
体の違和感に視線を下ろせば、──見たことの無い、奇妙な腕が自身の腕の代わりに、地面を踏み締めていた。
(な、なんだこれは......っ!?)
「おぉ、白虎様の力が宿ってるぞ!」
「さすがは~様が庇っただけのことはある!」
「これでこの町も安泰だ!」
「瑠璃様、今姿鏡をご用意します!」
バタバタと忙しくなる人間共に、我は混乱する。
どう考えてもおかしい状況に、なぜ目の前の人間達は恐れ戦かないのか。我には、到底理解ができなかった。
混乱に混乱が重なっていく中、不意に背中に何かが寄りかかってくる。
視線を向ければ、そこには荒い息をした子供がぐったりとしていた。
「おい」
「はぁ、はぁ......っ」
(......まずいな)
肩の傷のせいで熱が出ているのだろう。早く休ませなくては、死んでしまう。
身をかがめ、子供を我の身に寄りかからせる。くったりとした身体は、初めて触れた時よりも熱く、ずっしりと重みを持っていた。
我の体の異変も気になるが、それよりも子供の安全の方が先だ。
歓喜に叫んでいる人間を1匹、手近に捕らえた。驚く人間に、子供へと視線を向ける。
「子のへや、どこだ」
「~様......!すごい熱......大変だわっ!こちらへ!」
我の問い掛けで、やっと子供が熱を出していることに気がついたらしい人間が慌てて案内し出す。人間に子供を渡す事はせず、こっちだと案内されるまま、我は子供を運んでいく。
慣れない腕に悪戦苦闘したが、何とか倒れずに済んだ。