【第7章〜瑠璃の想い〜瑠璃語りシーン】
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それから少しして子供が眠りにつくと、人間達はまた地面に頭を擦り付けた。意味のわからない行動に興味すら擽られず、じっと見つめていれば、何やらついてこいと訴えかけてきた。
本来なら従う理由はないが、相手はこの子供の知り合いのようだ。 更に言えば、寝ている子供を起こすのは気分が乗らない。
(......仕方ない。少しくらいなら付いて行ってやろう)
のそり、のそりと彼らの背を追って進んでいけば、床に変な模様がある巣穴に来た。
どこか他の場所とは雰囲気が違う。
(......ここは、どこだ?)
周囲を注意深く観察していれば、ふと、巣穴の模様の中央に、――見たことの無い、他の虎がぐったりと倒れていた。
......生きてる気配は、既にしていない。
だが、気になってしまい、恐る恐る近づけば、床の模様の中へと足を踏み入れてしまった。
――瞬間、周囲が光に包まれる。
「~~~、~~~」
少し遠くから聞こえる人間達の声に、ゾワリと毛が逆立つ。立ったまま、前足を合わせている彼らが、何をしているのかわからない。
わからない、が、──何故かひどく、恐ろしい。
本能がガンガンと音を立てると共に、背後で動き出す気配に、我は振り返った。有り得てはいけない目の前の現象に、目を見開く。
(な、なんだと......!?)
先程、死んでいると確認したはずの同志が、ゆらりと立ち上がっているのだ。──否。彼に取り付いた“何か”が、彼の姿を象ってこの世に降りて来ているのだ。
こちらを見据える“それ”に、我は逃げることを決意する。
力を込めた足で地面を蹴り上げれば、身体は宙を舞う────はずだった。
「ギャウッ、!」
“それ”から伸びる霧が、後ろ足を捕らえる。噛み千切ろうとするが間に合わず、体や前足にまで絡み付いてくる。
逃げようとしても、もう逃げられない。
必死に引っ掻いても、噛みついても、気味の悪い“それ”に弾かれて、まともに攻撃も効かない。
それどころか、霧が俺の中に入って来ようとしているではないか!
(来るなッッ!!)
縦横無尽に貪ろうとする透明なモノが、酷く恐ろしい。攻撃だって通じない上、人間共は見て見ぬふりばかり。
頭が、身体が、痛い。自分の爪が、自分の毛皮を引っ掻き、鮮血が地面に散らばっていく。
(嗚呼、恐ろしい)
恐ろしい、恐ろしい。心底、恐ろしい。──憎い。
憎い、憎い、恐ろしい、憎い。
(こんな事をする人間が、憎い!)
殺してやる。殺してやる......ッ!!
「殺してやるッ!貴様ら全員、残らず噛み殺してやるッッ!!」
出せッ! 早くここから出せ、人間共ッ!!
「何をしてるの!」
「!!」
バァン、と何かが破裂したような音と共に、甲高い子供の声が響き渡る。突然の襲撃に、人間共の声が止まった。
“それ”の攻撃が止み、我は振り払うように全身を強く振るった。人間共への威嚇に、喉を低く奮わせる。
(子供の知り合いだろうが、家族だろうが関係ない)
殺してやる。殺してやる。そして血肉と化した人間を、食ろうてやるのだ!
血走る目に、力が入る。剥き出しにした牙が疼くのを感じていれば、ふと円の中に子供が足を踏み入れてきた。
周りの人間共が何かを喚き立てるが、子供は聞く耳を持たずに駆け寄ってくる。
「ごめんね、こわい目に合わせて......」
「近寄るなッ!」
「痛かったよね。苦しかったよね。ごめんね......」
「近寄るなと言っているだろうッ!」
ガウッ、と牙を剥き出しにして、子供を威嚇する。けれども、子供は止まらない。
それどころか、大粒の涙を流しながら、こちらに手を伸ばして、抱き着いてくる始末。殺気だって消していないし、剥き出した牙をこのまま下ろせば、子供の身体なんて一瞬で崩れ落ちるだろう。
それなのに。
(......この子供は、やはり他の人間共とは違うというのか)
我を苦しめようとした、そこの愚像共とは。
徐々に鎮火していく怒りの炎。
子供の体温が心地いいと感じた時には、牙は小さく収まり、爪も肉球の間へと戻っていた。