【第6章〜別行動〜】
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「今お前が好きなものを獲ってくるからな。少しだけ待っていてくれ」
優しく瑠璃の頭を撫でる椿に、応える者はいない。けれど、徐々に戻っていく呼吸に、彼女は満足気だった。
立ち上がった彼女が奥の部屋へと戻ろうとするのを見て、ミランダは慌てて声をかけた。
「あ、あのね、椿ちゃん。勝手な事かもしれないけど、瑠璃さんのためにも、1度ちゃんとお医者様に診てもらった方がいいと思って......。 瑠璃さんは寄生型のイノセンスだから、教団で診てもらった方がいいと思うの。移動用の馬車を用意してもらえるよう、頼んだわ。予定通り来れば、明日の朝には到着するみたい」
ミランダの言葉に椿の足が止まる。
ゆっくりと振り返った彼女の目は、疑いに溢れていたが、ミランダがここで引く訳にはいかなかった。
「......それは、教団に瑠璃を受け入れる余力があると判断して、いいんだな?」
「え、ええ」
鋭い声色に、ミランダはしっかりと頷く。
「でも......できたら椿ちゃんも一緒の方が、瑠璃さんも安心するかなと思うのだけれど......」
「俺は行かない」
「そ、そう言うと思って!私っ......余計なお節介かもしれないけど......考えたの」
バッサリと切り落とされた言葉を、必死にミランダが繋いでいく。
一緒に聞いているクロウリーも、残念ながら彼女の意図は未だにわからず、助け舟すら出せる状況ではない。その様子にミランダは決意を固め、口を開いた。
「──私のイノセンスは、時間操作なの。その場限りの物だから治療にはならないけれど、私のタイムレコードは、受けた傷の時間を吸い取るリバースと、最善の状態を保つリカバリーがあるの」
「時間操作の...イノセンス......」
「ええ。私が発動を止めない限り、吸い取った時間は持ち主に帰らないから、私から離れないように戦って貰えば、大きな怪我をしてもみんな命を繋ぐことができるの。......イノセンスを解いてしまったら、その分の傷は一気に戻ってしまうから、もちろん致命傷は避けて欲しいのだけれど......」
戸惑い気味に自身の力を語る彼女の言葉を、椿は静かに聞いていた。
(なるほど。だから戦えないのにも関わらず、戦線に出ているのか)
確かにそんな能力があれば、戦いの最中は攻撃に集中することが出来る。医療体制が整った後、イノセンス発動を解いて直ぐに処置を施せば、命が繋がる可能性も高くなるし、使い方によっては何よりも強い力かもしれない。
「言葉だけでは実感湧かないが、凄い能力なんだな。......今の瑠璃の時間を止めても、イノセンスの発動を解けば戻るんだろう?ここではまともに瑠璃の治療ができないのも事実。......教団の迎えが来るのは、明日の朝か」
「ええ。だから、瑠璃さんの時間を教団に着くまで私が吸い取って、治療まで安定するようにしようと思うの。......でも、解除後は一気に時間が戻ってしまうわ。その分苦しい思いをさせてしまうと思うから、一応やる前に話しておきたかったの」
「そうか」
ミランダの言葉に、椿が頷く。
やはり、強い力には強い反動が付き物らしい。とはいえ、治療を受ける前に命尽きては意味が無い。
(......瑠璃が、少しでも長く生きられるのなら)
迷うことは、何一つないだろう。
「......クロウリー、ミランダ、少しの間瑠璃のことを見ててくれないか?少しでも回復につながるよう、瑠璃の好物を取ってくる」
「頼むよ」と声をかけて、椿は外へと出て行った。その背中を見送った2人は、託された瑠璃へと視線を向ける。
瑠璃の頭をそっと膝から下ろし、ミランダは意識を集中させた。