【第3章〜町が死んだ理由〜椿語りシーン】
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定夢小説の主人公は、その話に応じて容姿や性格などを設定しています。
全ての小説で、夢用のお名前を使用する場合は、こちらを使用してください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「......人間の母さんは死んじゃったから、その機械を愛するの? そんな黒くて気味の悪い機械が、母さんの代わり?」
「椿。椿、父さんは母さんに、生き返ってほしくてだな」
「そんなの嘘!人間は一度死んでしまったら終わりなんだって、母さんは言ってたよ。それとも、父さんは母さんを、冷たい機械に縛りつけるつもりなの?」
「神は、母さんを見放した。母さんは間違っていたんだ!なら、信じるべきはアクマの方だろう!?」
振り払うように立ち上がった父さんは、不気味な機械の前に立ちはだかり、見たことない形相で俺に弁論してきた。
「神は裏切った。」「神は神でも、死神だったんだ。」
......そう口にする父さんに、俺は自分自身の何かが冷めていくように感じた。
脳裏を過るのは、心の病む前の母さんの温かい笑顔。そして――“生き物の運命”を教えてくれた、母さんの言葉だった。
「......母さんを苦しめる父さんなんて、大嫌い」
俺は家宝のアームリングに意識を集中させ、弓へと変化させた。
輝く金色の光に、『正解だ』と誰かが呟いた気がした。
「ほぉ。これは、イノセンスですか。面白いですねぇ。――さて、お嬢さん。まさか生きてる父親もろとも、吾輩の愛おしいアクマのボディを壊すつもりですか?」
愉快そうに笑う声が聞こえる。
俺は弓柄に手を伸ばした。
「...今まで的を打つことしか役に立たなかった、この弓の存在理由が、今わかった」
「椿、俺を殺そうというのか? 父親である、俺を。人間を。死神からもらった、その力で!」
「......死んだ人間は蘇らない。そんな不気味な機械に母さんを呼び戻せたとしても、生前と同じになるはずがない」
「何を馬鹿な事を、」
(馬鹿なのは、父さんの方だよ...)
何で、わからない。
何で、受け入れようとしない。
母さんは、もういない。いないんだ。
父さんが望むのなら、怖いけれど......俺はどんな事をされても、受け入れようと思っていたのに。
こんなの、――誰も望んでなんかない!
「父さんが守りたいならソレを守ればいい。俺は、打つよ。避けないなら、父さんも一緒に――貫くだけ」
「全く。この子、どういう育て方したらこんな歪んだ性格になるんですかねぇ〜?」
張り詰めた空気の中で、つまらなそうに千年伯爵がカボチャのついたピンク傘を振り回した。
遊んでいるのがわかる。
愉しんでいるのがわかる。
(こんな......こんな奴に父さんは......っ!)
「まぁ、どっちでもいいんですけどねぇ。早くあの世から魂を呼び戻し てもらえますぅ?」
ほらほら、というようにかぼちゃ部分を父さんの背中に押し当てる男に、俺は静かに弓柄を二度、叩いた。
トン、トン。
静かな指先に力が溜まるのが、わかる。強くて、迷いのない力だ。
それは自分の心の迷いも払拭してくれるようで、――俺は、力の限り弓を引いた。
「俺は......母さんの眠りを、邪魔したくない。辛い最後だったからこそ、安らかに眠ってて欲しい。......父さんどいて。その機械ごと、そこのデブも追い払えば、少しは正気に戻るでしょう?」
「失礼な子供ですね。私は千年伯爵。悲しい別れをした者達の所へ赴き、死者と生者を引き合わせてあげるお手伝いしているのです!!」
両手を広げ、高らかに声を上げる男――千年伯爵。
彼のもっともらしい言葉は、耳障りがよく――ひどく吐き気がした。