恋人はランプの魔人
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定夢小説の主人公は、その話に応じて容姿や性格などを設定しています。
全ての小説で、夢用のお名前を使用する場合は、こちらを使用してください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《ランプに閉じ込められた精霊を解き放った者は、魔人に3つの願いを叶えてもらえる》
子供の頃、誰もが御伽噺として聞かされたことのある魔法のランプ。
その実物らしきものが目の前にある。
何世代か数えるのももはや忘れてしまったが、俺の家は骨董屋を営んでいる。
南西部へ旅行に行った先祖の遺品だと、嗄れた爺が古びた布に包んで持ってきた。
手で触れれば崩れてしまいそうな布をピンセットを使って丁寧に剥がしていく。
「曾祖父さんの遺品でね、私以外は興味も示さんかったし、子供の頃に見せてもらったんだけんども、なんも起こらんかったじ。ワシも歳だし骨董屋さんで納めてもらえたら、必要としてる人の手に渡るかも知れんと思っての?少しでも値がつけば良いんじゃが。しがない年金暮らしの生活の足しにでもなればのぉ」
俺が梱包を解く間、依頼主の爺は飄々と語る。
こういう胡散臭い手合いは、それらしい鑑定をして適当な安値で買い取って済ませてしまえれば楽なのだが、この爺は難癖つけてくるから一応ちゃんとした鑑定をしないと納得してくれない。
布を取り払われたランプは、錆びた銅褐色で塗装が所々剥がれ落ちてガラクタ同然に素人目には見える。
「あぁ、こんなにもボロくなっていては、買い値すらつかぬかね?端金にも化けてくれれば余生を過ごしやすいんだがねぇ」
爺が落胆の声を上げるが、その言葉なぞ聞いていない。
ボロい梱包を外せば、銅褐色に錆びついた蓋の縁と蓋受けの隣接部に、文字とも模様とも取れる紋様があった。
小さい物だった為、鑑定用のモノクルをかけて観察する。
微かに光を弾く緑黒紋様だけ、経年劣化を免れてるかのように見えた。
(封じの印か?御伽噺の現物に巡り合うとはなぁ)
「おや、それを使うとは?少しは値が付きそうかね?」
爺が金の匂いを嗅ぎつけて卑しい声音に変わる。
「…いくらほしい」
「ほぉ、あんたさんが明言しないとは、珍しいのぉ。本物と見て良いのかね?」
「手放す気がないなら、持ってくるな。値が付かないと言えばイチャモンつけて何時間と居座るくせに」
「そんな事忘れたわな。値が付くならちゃんと言ってもらわんと最近耳がちぃと遠くてなぁ」
卑しい爺め。
俺は引き出しから小切手を出してそこに金額とサインを入れて、爺に渡してやる。
受け取った爺は、ヒッと小さく息を呑んだ。
「こ、こんな額、本当に払えるんかぇ?何代も前からある骨董屋とはいえこんな小さな店如きが払える額面では」
「小さな店で悪かったな。異論があるなら、その小切手、煙草の火で燃やしてやってもいいが?」
わざとらしく愛用している煙管を逆さにして、灰皿へ灰を捨てやり、新たに火をつけようとする。
「た、確かに受け取ったからの!この金でワシの生活は安泰じゃ!」
捨て台詞と共にそそくさと爺が店を出て行った。
「今日はもう閉めるかな」
煙管を燻らせながら、暖簾を外しに店前まで歩いていく。
暖簾を店内に入れシャッターを下ろす。
ガラガラという騒音の残響が終われば、店内に静寂が訪れる。