死んだ町に居座る適合者
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「長い話になったな…この町に留まってるのは償いなんだ。この身が朽ちるまで。 壊してしまったこの町へ。俺はがイノセンスで父さんを殺した時からの罪。アクマの材料になる人間を殺し尽くした罪。それらを償い続けなきゃない。瑠璃だけなら、外に行くべきなのかもしれないが」
「椿1人で抱え込む必要はない。椿が望む場に我はついていく」
外の見回りを終えて戻ってきた瑠璃。
獣人型で戻ってきた彼の背には仕留めてきたらしい猪。
驚くエクソシスト2名に「今夜の夕飯」と短く答えて、瑠璃は奥にある別の部屋に入っていく。
「今日は客がいるからな。大きいのを仕留めてきてくれたらしい。夕飯作ってくるから少し待ってろ。火を通した方が食いやすいだろう?」
「あ、ありがとうなのである」
クロウリーの返答を聞いて立ち上がった椿は、瑠璃の向かった部屋へと姿を消した。
「…椿は、とても辛い思いをしてきたのである」
「アクマを作らせないために、人間を殺してきたなんて、まだ若い子なのに…」
「「私達に何ができるのかしら(であるか)」」
言葉が被さり2人は互いを見つめて苦笑した。
「私達、もっとしっかりしなくちゃね」
「椿は、装備型である。アレンのようにアクマが見えるわけでも、私のように歯が 疼くわけでもないである」
「えぇ。アクマは人間の中に紛れてるのよね。椿ちゃんが歪んでるんじゃなくて。人間を疑い続けて、次のアクマを作らないように頑張りすぎちゃっただけよね」
「あぁ、もう1人で抱え込まなくていいと伝えるである!」
「できたぞ。瑠璃も一緒に食べるか?」
「怖がらせるから外に行く」
2人が互いを鼓舞してる合間に夕食ができたらしい。
焼けた肉の乗った皿を持ってきた椿の後ろから、虎の姿で生肉を咥えた瑠璃が顔を出し、そのまま階段を上がっていった。
「あの、気を遣わせちゃってごめんなさいね?」
「構わない。外の人間が虎を恐れるのは今に始まったことじゃない」
慌てるミランダ達の前にドンと皿を置いて、椿も食事を始めた。
「いただくである!」
「いただきます」
食欲優先のクロウリーを見て、ミランダも食事を始める。
「…美味そうに食うな、クロウリー」
「うむ、とても美味しいのである!」
「瑠璃もよく食べるが、寄生型というのはみな大食いだな。足りなければ干し肉もあるが食べるか?」
「いいのであるか!欲しいである!」
「純粋だな」
クロウリーの食べっぷりに少し笑いながら、椿は立ち上がり奥の部屋から包みを投げてきた。
意外と大きい包みを両腕で受け取ったクロウリーが開けてみると、中にたくさんの干し肉が詰まっていた。
「それ全部食っていいよ。美味そうに食うアンタを見てたら、少しは気が紛れた」
「ありがとうなのである!」
「クロウリーさん、本当美味しそうに食べるもんね」
「人の顔見て、食事するのも久しぶりだな」
天井を見上げながらどこか遠い目をする椿。
床に置いたランプの明かりが彼女を照らす。
「あの、椿ちゃんは…後悔してる?アクマと、アクマになるかもしれない人間を殺 してきたことを」
悲しげな椿にミランダが声をかけた。
「今は戦争中なのだろう。千年伯爵との。こちらから戦力をあちらに渡してやる意味がない。俺が父さんと町の人間に下した判断は、人の倫理としてズレてるというか…崩壊、している。人間を守るべき対象に見れないんだ」
「…アクマを増やさないこともエクソシストの仕事の一つである。椿はエクソシストになる資格は十分にあると思うである!」
食事を終えたクロウリーも会話に加わる。
「…こんなのと虎を、仲間として受け入れるの余裕が、教団にあるのなら考えなくもないがな」
自嘲的な笑みの椿にクロウリーが声を荒げる。
「椿は、こんなのではないである!レベル2にも冷静に対処していたではないか!」
「毎日のようにくるからな、回数慣れしただけだ。ここでいくらアクマを破壊したところで、千年伯爵は世界で悲劇を生み続けてるんだろうよ。奴の関心を俺一つに集中させていられれば良いのだがな」
「椿、一人で抱え込む必要はないのである。私達がこれからは一緒に!」
「お前らは!…人殺しの覚悟があるのか?イノセンスはアクマを壊すために存在する…アクマになる前に、魂を呼び戻す人間ごと消すことに抵抗がない連中が集まってるのが黒の教団だというなら、喜んでついていくがな」
クロウリーの言葉を遮って、まるで自身に言い聞かせるように言葉を吐き出した椿。
「…教団は、優しいところよ。戦えない私にもできることを教えてくれたわ」
ミランダの唇から、ポツリと言葉が溢れていた。
「椿ちゃんは、1人で抱え込みすぎなのよ。私達にも手伝わせて?」
「…能力を見せない奴の言葉など信頼できるかよ」 「あ、私のイノセンスはねっ」
ミランダの言葉を遮ってドンと部屋が揺れた。
「アクマか!」
「わ、私も行くわ!」
椿が真っ先に外に出る。
続いてエスソシスト2名も外に出た。
昼よりも多いアクマ達が空を埋め尽くし、外にいた瑠璃がアクマの弾丸を避けながら戦っていた。
即座に弓を引く椿と戦闘モードに入るクロウリー。
「レリーフアロー!」
「数が多いのは好都合だ!その血を全て啜ってやる!」
(ミランダ、逃げちゃダメよ。役に立つんだから!)
「女、逃げろ」
獣人型になっていた瑠璃がミランダを押し除けた。
代わりにアクマの弾丸が彼を射抜く。
「瑠璃さん!」
「…問題ない」
瑠璃の体にアクマの毒のペンタクルが浮かぶが、寄生型の瑠璃のイノセンスが毒を浄化する。
椿は瑠璃の側に駆け寄った。
「瑠璃、下がれ。俺が一掃する。イノセンス第二開放、断罪の矢!」
一際大きな矢の筋が、いくつもアクマの群れに流れ込む。
爆風に煽られたクロウリーが悪態をつく。
「こちらの動きを邪魔するな!」
「ちまちまと一体ずつ片付けてたなら体力持たないだろうが!」
返答しつつも弓矢を放つ手は止めない椿。
「瑠璃、行けるか」
「問題ない」
「クロウリー、乗れ!」
「全く人使いが荒いガキだ!」
特大の2条の矢が宙を裂く。
それぞれに瑠璃とクロウリーが乗り、威力を加速させアクマを倒していく。
空の群れを片付け、肩で息をする3人にミランダが声をかける。
「みんな。大丈夫?」
「…問題、ないである」
「…しつけーんだよ、クソアクマどもが」
「っ」
「瑠璃!」
ドサリと言う音と共に瑠璃が倒れた。
アクマの弾丸を受けすぎていたのか息が荒い。
荒い息と共に、黒い星が浮かび上がっては消えかけは浮かぶのを繰り返す。
「私に任せるである」
瑠璃に駆け寄ったクロウリーが、その牙を首元に突き立てる。
「何をする!」
「大丈夫よ、椿ちゃん。クロウリーは、アクマの毒を吸い出してるだけ」
動揺しクロウリーに掴みかかろうとした椿をミランダが抑えた。
瑠璃の体に浮かんでいた黒い星が引いて、息も穏やかになる。
「これで大丈夫な筈だ。アクマの毒は全て吸い出した。虎の皮は歯が入りにくかったがな」
「お前、アクマの血を吸うと本当キャラ変わるのな。瑠璃、起きれるか?」
椿の問いかけに、瑠璃はゆっくり瞬きして、荒い呼吸を繰り返す。
「私が運ぼう」
アクマの血で強化状態にあるクロウリーが、瑠璃を軽々と肩に担ぐ。
「悪いな、助かる。階段、気をつけてくれ。さっきの揺れで弱くなってるかもしれない。ミランダもありがとうな」
「い、いえ。私まだ何もできてないし。さ、先に戻っていて?私、少し残るわ。ここなら無線ゴーレムも使えると思うの」
「ごーれむ?」
「椿、瑠璃の息が荒い。早く休ませたほうがいい」
怪訝そうに顔をしかめる椿をクロウリーが急かした。
ミランダを置いていくことが気にかかる椿だが、瑠璃を優先し地下へと降りる。
(ありがとう、クロウリー。本当身勝手かもしれないけど、瑠璃さんの治療の為に教団の人達に迎えにきてもらった方がいいわ)
ミランダは無線ゴーレムをコートの中から出して、通信が繋がるのを待つ。
アクマの残骸と破壊された瓦礫の山を静かな月だけが照らしていた。