死んだ町に居座る適合者
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眠っている椿をベッドに横たえ、酔い覚ましの為に水差しとコップを用意して、立ち去ろうとしたら扉が勢いよく開かれた。
顔に当たるスレスレで躱して下がれば、吐息の荒い瑠璃だ。
「つ、ばき、大丈夫か!」
「瑠璃。椿は寝ているである。静かにした方が、っ酒臭っ!」
瑠璃の吐息の強いアルコールの匂いに、コートで思わず顔を覆ってしまった。
「フーッ、わかってる。酒が抜けるまで廊下にいる。今の我の吐息では椿の体に悪い。アイツら次飲ませたらたタダではおかんぞ」
酒量の割には、しっかりした足取りで身を翻す瑠璃に続いて部屋を出ようとする。
「で。では、私も戻るである」
「我の代わりに側に居てやってくれ。今戻れば、アヤツらのカモになるぞ」
「そ。そうかもしれないが、主役がいないのではっ」
「…保護者、公認だ。好きにしろ。椿の選んだ道は否定しない。椿は側に温もりがないと熟睡しないんだ」
さほど強くない力で部屋に押し戻されて扉を閉められてしまった。
内開きの扉だが、開けようとノブを掴むと扉が軋む音 。
瑠璃が寄りかかっているのだろう。
下手に開けたら下敷きにされかねない。
「…公認って、なんなのであるか?」
混乱を落ち着かせようとため息をついて、ベットの近くに椅子を持ってきて座る。
「椿が、仲間になってくれて嬉しいである」
「ぅん」
温もりを探しているのか、小さく唸りながら寝返りを打った椿の手がベットから落ちた。
布団へ戻そうと手を掴めば、思い切り引っ張られ椿に覆いかぶさる形になる。
「つつっ、椿!押し潰してしまうである!離してっのあ!」
「んー」
離すどころか更に引っ張られ壁際に押し込まれ、椿が腕の中に顔を埋めてくる。
何故か足も固められていて、下手に振り解けない。
「つ、椿!離してほしいである!」
「あったかい…少しだけ、少しだけこのままで」
「…はぁ、少しだけであるぞ」
抱き枕にされて居るから、左手だけでそっと布団をかけなおして、行き場のない手をしばし彷徨わせる。
自分を抱きしめてる冷たかった椿の腕が、少しずつ暖かくなるのを感じて、彼女に触れないように、少し離して布団の上に手を置いた。
「…ココは安心していいのである」
「………酔っ払いの戯言だから、聞き流せ」
「な!なんであるか?」
眠った筈の椿のはっきりした言葉に真剣さを感じて、なるべく勤めて冷静に返事をしようとしたが声が上ずった。
「…さっきの、嘘じゃないから。愛する者が許してくれてからでいいから、いつか、アレイスターと呼ばせてくれ」
「…………」
答えが出ない。
愛する者を壊したと話はしたが、異性として意識されてるとは思わなかった。
答えを探して返事ができないでいたら、規則正しい寝息が聞こえた。
気づかぬうちに止めていた息を吐き出して、力を抜いた。
(なぜ?どうして、こうなっているのである?…だ、ダメである!心臓の音が落ちつかないである)
椿から視線を外して、窓越しに部屋をうっすら照らす月を眺めた。
「……アレン…私は、進めているであるか?」
ふいに別任務で教団にいないメンツの顔が浮かぶ。
独り言は受け取る者もなく闇夜に溶けていく。
(少しだけ寝るである。こ、コレは、つ椿が、ぬ、温もりがないと眠れないから見守ってるだけである。私は…エリアーデを忘れないである)
目を瞑り呼吸を繰り返すうちに、愛する者を壊した吸血鬼も眠りに落ちた。
翌日、酔いの冷めた椿とクロウリーは夕刻過ぎまで部屋を出られなかった。
瑠璃が獣人型のまま酒抜けるまで扉に寄りかかっていたからなのだが、クロウリーが部屋に戻ってないことを知った団員達が[保護者公認カップル]として暫く教団 の中で噂をしていた。
噂を否定するクロウリーと面白がる椿。
ラビと喧嘩する瑠璃。
それを宥めるミランダとブックマン。
そんな光景が教団に馴染んでいった。
【死んだ町に居座る適合者、完】