死んだ町に居座る適合者
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定夢小説の主人公は、その話に応じて容姿や性格などを設定しています。
全ての小説で、夢用のお名前を使用する場合は、こちらを使用してください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おっひさー!虎助~!俺はラビ!これからよろしくさぁ!」
「…それ、呼び名か?ガキ」
「うっわ、2回目ましてで、ガキ呼ばわりって酷くね?」
「落ち着け!未熟者!」
ブックマンの飛び蹴りで、吹っ飛ぶラビ。
「瑠璃、大丈夫であるか?温泉は苦手か?毛が逆立っている」
「ウザいガキが嫌いなだけだ。クロウリー、悪いが手伝ってくれ。俺の手は頭を洗うのに適していない」
「うむ、背中も流すである」
「ちょ、俺を置いて話進めないでくれない?てか、虎助デカ!虎のままでもデカイのに獣人型になったらクロちゃんよりでかいじゃん!」
喚くラビを無視して腰掛け体を洗う瑠璃と、当たり前のようにシャンプーで頭を洗うクロウリー。
「短い期間で、随分仲良くなったようじゃのクロウリー」
「皆がいてくれたからである」
「そうか、たまにはワシがお主の背を流そう」
「わ、私は大丈夫である!」
「そう言わずに甘えとけってクロちゃん。なぁ、虎助の耳ってどうなってんの? 触っていい?」
「「その呼び方はやめろ(てほしいである)」」
近づくラビを尻尾ではたいて遠ざけて語尾をクロウリーとハモった。
「あーらら、嫌われちゃった?」
「獣にも選ぶ権利はあるだろう」
「全くである」
「絡むな馬鹿ラビ」
「みんなつめてーさぁ」
「流すぞ、クロウリー。爪が当たる。離れろ」
にくきゅうで器用に、シャワーや桶を使って体を流す瑠璃にブックマンが声をかけた。
「器用じゃな」
「長く人と暮らしてきたから慣れだ。代われ、クロウリー、背中を流そう」
「頼むである」
「ホント、二人は仲がいいさぁ」
「ガキとは違うからな」
「てか、虎助って人間にすると歳いくつ?」
「…………」
沈黙する3人。
「虎は、ネコ科じゃの」
「えーと、猫は1年でおおよそ成人と同じくらいの年齢であるから」
「歳など考えても意味がない。椿の誕生日は10回ほど数えたがな」
「え、そんなに長く一緒に生きてんなら、マジで幾つなの?もしかしてクロちゃんよりずっと上?」
「何!目上に私は敬語を使っていなかったのか!瑠璃、えーと、瑠璃殿?す、すまないであるっ」
「今まで通りでいい」
慌てるクロウリー達を余所に、虎姿に戻って前足でぱしゃぱしゃと湯船の温度を確認する。
「うむ、悪くない」
そのままお座りして湯に浸かり、何してるんだ?と振り返る瑠璃が愛らしい。
「ヤバイ。俺、ヤローに可愛いとか思ったことないのに、破壊力ヤバくね?」
「ブックマン後継者が語彙力を失ってどうする馬鹿者」
罵りつつもブックマンとクロウリーが、瑠璃の左右を固めた。
「あ、ずりー二人とも!俺の入る隙間ないじゃん」
「前あいてるぞ」
「うわー、殺気満々で言うなよー。虎に殴られるってか薙ぎ払われる?って普通に怖いさ」
「婦長の方が怖いがな」
「同意である」
「相違ないな」
「それには、俺も同意だけどさ。あー、もう!混ぜろって!」
走ってくるラビを鋭い尻尾の一撃が薙ぎ払った。
「いってて。今日回数多くないか?」
「未熟者」
「学習するである」
「少し歩いてくるぞ」
ラビを無視して大人組はまったりと温泉を楽しむ。
「こうしてみてると、虎助デカくて柄も綺麗でかっこいいよなぁ?アムールトラかな?それともアモイトラ?」
温泉の中を悠々と歩く瑠璃を見ながらブックマンの隣で腰を下ろしたラビが呟く。
「アモイトラは絶滅したと言われているが、もしそうだとしたら貴重な存在だの」
「私はもう上がるである。のぼせる」
「クロちゃんは、案外温泉苦手だよな?」
「苦手ではないである。血の巡りが良くなってボーとするのである」
「それを、のぼせるって言うんさ、うおわ!」
ばちゃんと派手な水しぶきがラビにかかる。
ブックマンはさりげなく避けていた。
「こんの、やったなぁ!虎す、け?」
「なんだ、ガキ」
「え、何これ…造形美?カッコ良すぎるだろ、お前ら!」
細身だが鍛えてあるクロウリーと、彼に並んで長身かつ筋肉質な獣人型瑠璃は、揃って並ぶだけで、言葉の如く水も滴るイイ男。
フリフリと揺れる尻尾に魅了されたラビが叫ぶ。
「なぁなぁなぁ!その尻尾触らして!!」
「否だ」
「ヘブンズコンパス」
「ギャー!おい、クソパンダじじぃ!イノセンス使うとか無しだろ!おい!」
「ガキはうるさい」
「本当である」
ブックマンとラビの戯れを放置して、脱衣所に移動し体を拭く二人。
「椿も細いが、クロウリーも細いな」
「そうであるか?」
「うむ、噛みごたえが無さそうだ。良くそんな体で戦っていられる」
「食う目的であったか…鍛えてはいるのであるが」
「ココの食事で、そんなに細いのなら、日頃から動きすぎだ。休むのも仕事だぞ」
「うむ、そうであるな…手伝うである」
「あぁ。この手は人の生活をするには少し不便でな」
虎型に戻り、仰向けになった瑠璃をワシワシとバスタオルでクロウリーが拭いていく。
「あー、そこだそこ。もう少し上」
「ここであるか?」
「うむ、もう少し強く」
「わかったである」
「…ワシも頼もうかの?」
「クロちゃん、いつからマッサージ師始めたんさ?虎助とろけてんじゃん?」
「む、うまいであるか?」
ゴロゴロと喉を鳴らし、尻尾で答える瑠璃を見て、やっぱ猫だと思うラビ。
「おーい、瑠璃ー、大丈夫?」
「椿!」
「あ、待って!俺も行くさ!相方の女の子見たい!」
椿の声に走り出した瑠璃を追いかけ、廊下に出たラビの目に、湯上りの女性陣二人 が目に入る。
「乾かしてもらったのか?瑠璃、いつもより毛並みがいいな」
「…ストラーイク❣️めっちゃ、タイプさ❣ 」
「あ?誰よ、アンタ」
まだ濡れてる前髪をかき上げて、ラビを見る椿。
「大人の雰囲気さぁ❣️ ねぇねぇ、名前教えて!キレーなお姉さん❣️」
「はぁ?うっざ。ミランダ、行こう」
急接近してラビに、対して背を向け歩き出す椿。
「ツンツンしてる所も可愛いさぁ❣️ なぁなぁ、瑠璃、この子が椿さん?」
「寄るな、ガキ!」
瑠璃の前足で薙ぎ払われそうになってラビが飛び退く。
「へへーん、いい加減学習したもんねぇ」
「後ろがガラ空きだ、馬鹿者」
「だ!後ろから頭に乗るなよ!クソジジィ!」
「はぁ、ラビも変わらぬである」
「ふふ。楽しそうでいいじゃない?」
「ミランダ、クロウリー。どこに行けばいい?コムイがなんか計測するとか言って たぞ」
椿と瑠璃が先を歩いていた。
「あ、待って!そこの角は曲がっちゃダメ!」
ミランダの制止の声が間に合わず、角から伸びた腕に瑠璃が拐われた。
「っ!椿!椿!助けてくれ!椿ぃ!」
ぎゅららららら!がりがりがり!
瑠璃の必死の叫びと不穏な機械音。
「捕まっちゃったわね」
「あぁ、嫌な思い出である」
「何なんだあの部屋、助けたいのに体が拒絶する」
「教団にきた新人エクソシストが必ず通る道さ」
「お主のイノセンスは先程結晶化したばかりじゃから、免れたな。哀れ、瑠璃殿」
「アンタ、どこから見てたよ?」
廊下の影から、瑠璃の吸い込まれた部屋を窺う一同の背後に迫る手。
「見つけたわよぉ〜」
「ひっ!」
「きゃっ!」
女性陣の首根っこを掴んでいるのは、婦長とジェリーだ。
「貴女も計測するのよ?」
「な、何で私まで?!離してください!ジェリーさん!」
「女性の手が足りないっていうから、手伝いに来たのん。ミランダも手伝い要員よん」
「私も化学班から正確な計測を頼まれました。仕事柄数字には煩くてよ」
「…瑠璃の分まで骨は拾ってくれ」
「椿ちゃん、縁起でもないこと言わないで!」
悲壮感漂わせ、引きずられていく女性陣を残された者達は追えなかった。
「達者でな」
「ホームは怖いところである」
「あれ、クロちゃん。顔色悪いさぁ。初めて来た時みたいに真っ青、だ!」
ケラケラ笑うラビに、部屋から投げつけられた瑠璃がぶつかる。
「ちょ。コムイ!投げることないさ!」
「あー。ごめーん、包帯解けなくってぇ、目測誤っちゃった?」
「瑠璃、余程怖かったようだな。せっかく温泉で綺麗にした毛並みがボロボロである」
「みんなでもっかい洗うしかないさ?」
「その方が良かろう。コムイ、タンカを貸せ」
部屋からまだ包帯をだらしなく引きずりながら、タンカを脇に挟んだコムイが顔を出す。
頭にはまだヘルメットをつけたままだ。
「あはは。ごめんねぇ、二人とも同じくらいに終わると思うから、クロウリー、ラビ。誘導よろしくね?ブックマンもお時間合えばお越し下さい」
「新しい戦力追加の席だ、顔を出そう」
「ありがとうございます。では、また後で」
クロウリーとラビに風呂場に運ばれる瑠璃とは別に、年長者組は和やかな会話を続けていた。