死んだ町に居座る適合者
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定夢小説の主人公は、その話に応じて容姿や性格などを設定しています。
全ての小説で、夢用のお名前を使用する場合は、こちらを使用してください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『よく来たな、選ばれし者よ』
「やぁ、ヘブラスカ、今日も頼むよ」
『あぁ』
白く透けているいく筋もの手が、瑠璃の上でクロウリーにエスコートされてきた椿を持ち上げる。
「ひ、なんだ!コレ!」
「椿!がっう」
椿を取られると思って、ヘブラスカに飛びかかろうとした瑠璃を大きな機械の腕が押さえつけた。
「コムイ、それはもしかして?」
「うん、コムリンアームタイプ♪いやー、絶対ヘブくんに驚いて暴れるだろうなぁと思って、こうやって背負えるタイプのコムリンを作っちゃったんだ!かっこいいでしょ」
ウィンクするコムイに対して、呆れる寄生型2名。
「クロウリー、こいつら味方だよな?」
「うむ、間違いである」
『落ち着いて、害は加えない。私はお前のイノセンスが知りたいだけ』
3人を他所に、ヘブラスカが椿のイノセンスを調べる。
『シンクロ率が低い。1桁だ。一度、イノセンスをキューブに戻すぞ、コムイ』
「また、装備できるようになりそうかな?ヘブラスカ」
『私は無理強いはしない。決めるのは椿自身だ。クロウリー、支えてやれ』
ヘブラスカが壊れかけていたリングをキューブに戻し、その体の中に収容してからそっと椿をクロウリーに預けた。
クロウリーの腕の中で深く息を吐き出した椿。
「大丈夫であるか、椿」
「ちょっと怖かった。瑠璃、尻尾すごい膨らんでるぞ」
「じゃ、瑠璃くんいってらっしゃーい」
『雑に扱うなコムイ』
椿に続いて瑠璃がヘブラスカの手に囚われる。
恐怖からジタバタ暴れる虎の瑠璃に、ヘブラスカも翻弄されてる。
「悪いな、クロウリー。けど、あったかいな」
イノセンスが離れたことで足の感覚は戻ってきたが、椿は体を預けたままにしてた。
人の温もりってこんなに心に沁みるんだと初めて知った気がする。
なんだかとても眠い。
『シンクロ率、87.3%この子はまだ伸び代がある。捕食者たる本能を忘れていないが、人よりもずっと優しい子だ。大切にしろよコムイ』
「椿、椿!」
恐怖から解放され、椿に頭を押しつけて落ち着こうとする瑠璃。
撫でようとして、手がパタリと落ちた。
「ごめん、瑠璃。すごく眠いんだ。あったかくてさ。食事の間だけ寝かせ、て」
クロウリーの腕の中で寝てしまった椿に対して瑠璃が身を低くした。
「乗れ、クロウリー。椿を支えておけ。その服で倒れられたら困る」
「大丈夫であるか?」
「お前、細いから問題ない。早く肉が食いたい」
瑠璃の背に椿を乗せて後ろから支えるクロウリー達を余所に、ヘブラスカを見上げるコムイ。
「ヘブくんありがとうね」
『機械いじりも大概にしておけコムイ。それと』
「みぃ〜つぅ〜けぇ〜たぁ〜!!室長!!」
「あ、見つかっちゃった!逃げなきゃ。クロウリー、食事終わったら、二人を部屋に送ってあげてね?情報はゴーレムに送っておいたからぁ」
そそくさと逃げるコムイの後を、化学班メンバーが亡者の如く追い、残された2人はため息をついて、クロウリーの案内で食堂へと向かった。
「待ってたわよ~ん、クロウリーと新人ちゃん達!あら、一人寝てるのね?可愛い寝顔❣」
「椿に触るな、肉を寄越せ」
「あらん、素敵な低音ボイス❣ あなたイケメンになれるんでしょ?見せて頂戴よ?」
「獣人型は飯がくいにくいからヤダ」
「じゃ、まずは食事ねん?ミランダから頼まれてイケメンくんに特別メニューを準備してるのよ!クロウリーもたくさん食べなさいよ」
ドンと大量の食べ物をカウンターにおくジェリー。
「瑠璃、すまないが椿を支えていてもらえるか?」
「あぁ」
ジェリーの料理を受け取るため、椿を支えたまま立ち上がるクロウリー。
熟睡している椿を獣人型の瑠璃が引き継いで抱きとめる。
「あんら、すっごいイケメンじゃなぁい❣ スペシャル料理、席まで持っててあげるから行きなさいな♪」
「こいつも、怖い」
ジェリーの熱い視線に身震いする瑠璃にクロウリーは笑いかける。
「ホームは心の温かい人が多いである。さぁ、席に行こう」
大量の食べ物を両腕に抱えたクロウリーの後ろを、椿をお姫様抱っこで運ぶ瑠璃の姿は目立った。
「おい、あれが新しいエクソシストか」
「虎?だよな。あの体型に合うコートは…」
「なぁなぁ、あの寝てる女の子可愛くね?」
「ミランダ。ココにいたであるか」
「先にご飯取らせてもらってたわ。ジェリーさんがね、規則正しい食生活も女子力アップの秘訣なんですって」
「ミランダは今も綺麗であるよ」
「まぁ、クロウリーったら。椿ちゃん寝てるのね?私の隣空いてるから寝かせてあげて?」
コクリと頷いて、瑠璃が長椅子に優しく椿を寝かせて、ミランダがコートを布団代わりに被せる。
クロウリーも料理をテーブルに置いて席につく。
「お待たせん♪イケメンくん❣」
ジェリーの登場に驚いて虎に戻り威嚇する瑠璃。
「そんなに警戒しないでよん?はい、これ、ミランダのキイチゴ、傷んでたから新鮮なのを注文してお肉に合わせてみたの」
威嚇する瑠璃から少し離れた所に、ジェリーが皿を置く。
生肉の上に滴る赤いシロップ。
警戒心よりも食欲が勝り、恐る恐る匂いを嗅いで勢いよく食べ始める瑠璃。
「これ、うまい!」
「みんなで食べる食事は美味しいである!」
「そうね、椿ちゃんも起きてくれたらいいのに」
ばしん!
「あ、私のチキンフライが!」
テーブルの下から伸びた腕が、クロウリーの食事を拐った。
カランと骨が落ちる音がした後、寝息が聞こえた。
「…椿ちゃん、寝ながら食べたわ。お腹空いてたのね」
「私のチキンフライ…」
「おかわりくれ!」
泣きながらも食事の手を止めないクロウリーと尻尾を振ってジェリーに次を迫る瑠璃に、ミランダが笑った。