死んだ町に居座る適合者
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香りがする。
甘い花の香り。
『いつまで寝てんよの。アレイスター』
…エリアーデ?
『全くいつまで経っても中途半端な男ね。決めたんじゃないの?』
…あぁ、ノアと戦った時に決めたんだ
『もう一人じゃないんだから。シャキッとしなさいよ』
…仲間が、待ってる
『いきなさいよ、私は...』
待ってくれ、エリアーデ!
『女々しい男はフられちゃうわよ?』
「エリアーデ!」
「クロウリー?」
「!ココは?」
「教団の医務室よ。一週間も寝てたんだから」
「ミランダ?花を飾ってくれてたであるか?」
「え、えぇ。クロウリーはお城に住んでたって聞いたから、勝手なイメージで薔薇を飾ってみたのだけど」
「薔薇か、好きな花である」
花瓶から一輪とって、香りを楽しむ。
エリアーデ。
またお前に助けられたである。
「…椿は!瑠璃は!大丈夫であるか?」
「瑠璃さんは、さっき起きたんだけど…椿ちゃんから離れなくて。向かいのベッドにいるわ」
強い空腹を感じたがそれどころではない。
二人は無事なのか!
飛び起きてカーテンを開ける。
眠り続ける椿とベッドに虎のまま頭を乗せて、不安そうにしている瑠璃。
視線だけクロウリーに向けたあと、何も喋らず耳をパタつかせる。
「ずっと目を覚まさないの、椿ちゃん。体に異常はないんですって」
ミランダも椿のベット脇に腰掛ける。
「椿、椿!目を覚ますである!仲間であろう!起きてくれ!」
精一杯、彼女の左手を握る。
死人のように冷たい手を少しでも温めたくて両手で覆う。
「起きて、椿ちゃん。一人で抱え込まないで」
ミランダも反対の手を握り祈るように目を瞑る。
「人はそうするのか?」
瑠璃は人型になり、椿の上に跨って両手のにくきゅうで彼女の顔を包む。
「起きろ、椿。笑顔を見せてくれ!」
闇の中で
温もりを感じた
少し前から何かが、側にいる気がしていたがよくわからない
馴染んだ温もりだと思う
ぼやけた感覚の中で
視界が揺らめく
黒と黄色と蒼
…る、り?
『...!...!目を覚ますである!仲間であろう!起きてくれ!』
この声はクロウリー?
『起きて、...ちゃん。一人で抱え込まないで』
ミラ、ンダ?
『起きろ、椿。笑顔を見せてくれ』
つばき…
あぁ名前
自分の名前
この温もりは、あの蒼の
笑えるかな?
なんだか、あったかい
体にまとわりついた沢山の手が離れていく
重さが消える
トクントクンと脈を感じる
両手と顔?
頬の筋肉を動かしてみる
「笑ってくれ!椿!」
「…フ」
「椿ちゃん!」
「椿!」
「笑った…?」
「笑えって言ったろ?瑠璃。ただいま」
「椿、可愛い!」
ガバッと相方を抱きしめる瑠璃。
「…くるし、よ」
「良かったである、椿、本当に良かったである!」
「クロウリー。手痛いよ」
「お帰りなさい、椿ちゃん」
「ミランダも、痛いって。お前ら離せよ」
「ハイハイ、全員離れなさい!せっかく起きたのに窒息死させる気?」
「「「!!!」」」
婦長の鬼迫に瑠璃も含めて、3人ともベットから離れた。
テキパキと看護師達に指示を出し、3人を睨む婦長。
「アンタ達」
「な、なんであるかっ」
固まってる3人を代表してクロウリーが勇気を出して口を開いた。
「着替えするから、メンズは奥に行きなさい!ミランダはコムイ室長とブックマンを連れて来て!診察が終わったら全員食堂に集合よ!寄生型二人は自分の胃の管理もできないのかしら?わかったらとっとと行動する!!」
「ひっ、行ってきます!」
ミランダばパタパタと出て行く。
「この人間、怖い」
「彼女の仕事であるからな。鬼に逆らわない方がいいである」
「誰が、鬼ですってぇ?」
「瑠璃、行くである!」
「ああ」
婦長の後ろに鬼が見えて、そそくさと男性陣はカーテンの奥に消えた。
「さて、貴女は大人しいようね?」
「………凄いな、アンタ。瑠璃が尻尾丸めてるのなんて初めて見た」
「あの子の服、まだできてないのよねぇ。化学班は何やってるのかしらねぇ。貴女の服ボロボロだったから、コレ着なさい」
「黒いワイシャツと…このスカート?短くね?」
あてがわれた服を確認しつつ、ミニスカートを物珍しげにひらつかせる。
「綺麗な脚は見せつけた方が得するわよ?女の子なんだからね?」
顔に似合わずウィンクする婦長に対して、椿は笑った。
「そんなの初めて言われた」
「その笑顔は、あの虎の子に見せてあげなさい。とても綺麗だから」
「それも初めて言われたな」
答えながら服を着ようと頑張ってみるが、左手の感覚はなく、右の指先も震えるから婦長が着替えを手伝ってくれる。
「やっぱり綺麗な肌してるわね。貴女幾つなの?」
「さぁ、いくつだったかな?乙女に年齢聞いちゃダメっしょ?素敵なおねぇさん?」
「あら、褒め上手ね。クロウリー、着替え終わったわね!」
「ひっ、終わってるである!」
「虎の子もいらっしゃい。立てる?椿?」
「たぶん?」
体の感覚が少し遠い。
靴を履いて足に力を入れようとして、体制を崩した。
「危ない!」
「ありがとう、クロウリー」
右手をクロウリーが掴んでくれた。
そのまま支えてもらうが、軸がぶれて高身長の彼の胸に顔を埋めてしまった。
「ごめんっ」
「そのまま支えてなさい。クロウリー。瑠璃、乗せられる?」
婦長の指示で虎姿の瑠璃の背に跨る。
クロウリーから離れようとして、瑠璃の背についた左手に力を入れようとして滑った。
「!私に捕まってた方がいいである」
「すまない」
「このくらいどうってことないである」
バタンと大きな音を立てて扉が開く。
「コムイ室長、医務室では静かに!」
「ごめんごめん、起きたってミランダに教えてもらえたからついね」
コムイの後ろにミランダが申し訳なさそうに佇む。
「…なんで、ドリルとヘルメット被ってんだよ?」
「ひっ!」
過去の嫌な記憶から反射的に椿を抱きしめるクロウリー。
「くろ、りー、息苦し」
「離してやれ、クロウリー。目覚めたようじゃな。お二方。コムイ、治療よりもヘブラスカの所に行った方が良さそうじゃぞ。今下手に治療したら娘の体が持たんじゃろう」
ブックマンが割って入り、場の緊張をほぐした。
クロウリーから解放されて息をつく椿と、怖がって耳を伏せてる瑠璃。
「あぁ、ごめんねぇ。つい職業病で。クロウリー、体調はどう?」
「ドリルを光らせながら聞かないで欲しいである…特に変わったことはないと思うのである」
ぐぎゅるるる〜
二つの重なる空腹音。
「あ、あの、コレはっ」
「…肉」
「はは、寄生型には、点滴の栄養摂取じゃ足りなかったみたいだね!二人には悪いけど、少しだけヘブラスカの所に付き合ってくれないかな?椿さんと瑠璃くんのイノセンスを調べてもらってから、ご飯にしよう?」
「ヘブラスカ?」
「気をつけるである。椿、瑠璃。ヘブラスカは怖いである」
「なぁ、瑠璃?ここってさ、エクソシストが怯える怖い奴ら多くね?」
「何か、間違った気がする…」
「ほら、みんなグズグズせずに進みなさい!」
婦長の鬼迫に脅され、一同は医務室を後にした。