死んだ町に居座る適合者
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一番早く目覚めたのは、ミランダだった。
白い天井を見て医務室にいることを思い出し、身を起こした。
「あら。おはよう。気分はどう?」
「婦長さん。ありがとうございます。私どれくらい寝てました?」
「丸一日ってとこかしら?動けるならコレをコムイ室長に渡してもらえる?」
「コレは?」
婦長から渡された書類に首を傾げるミランダ。
「渡せばわかるわよ、着替えはココに置いておくから。それと、コートの中から傷んだ果実が出てきたんだけど、おやつかしら?」
「あ、それは、瑠璃さんのキイチゴ」
着替えの側に婦長がキイチゴを置いた。
日が経ってしまったせいか、少し痛み黒く見える。
「るり?あー、もしかして虎の子の名前かしら?女の子がずっとうわ言で言ってたから。キイチゴは傷んでるから食べるのはよした方がいいと思うわ」
「椿さんは!椿さんの容態は!」
「隣のベッドにいるわ。まだ起きないけどね。脈も弱いまま。点滴を打ってるけど、装備型のイノセンスに体が」
そこまで聞いて、ミランダは隣のベッドと隔ててあったカーテンを開けた。
左手首のリングから体を侵食してるイノセンス。
顔まで六角形にヒビがはいり、浅い呼吸を繰り返している椿。
小さく唇が動いている。
「る、り…じ、ゆに、いき、ろ…る、り」
「ずっとこの調子なのよ。大切なのね、相方が。神様は残酷ね、こんな可愛い子も戦わせるなんて」
「…瑠璃さんとクロウリーは?」
「芳しくないわ。あの二人は寄生型よ。点滴の栄養摂取だけじゃ足りなくてアクマの毒が抜けないのよ」
「私、また守れなかった」
「…全て一人で抱え込まなくていいのよ。みんなで支え合って生きてるの。みんな息があるわ。今は信じて待ちましょう。私達も最善を尽くすから。さぁ、着替えて行きなさい。あの書類をコムイに届けて。自室にいるはずよ」
「…はい、ありがとうございます婦長」
涙を拭ってコートに袖を通す。
(キイチゴ…瑠璃さんに食べさせたかったな…ジェリーさんに頼めばうまく調理してくれるかしら?)
書類を片手にキイチゴを手に取る。
潰さないように注意しながら、食堂へ向かう。
(瑠璃さんが起きた時に、美味しいもの食べてもらたいわ。もちろんクロウリーにも…そういえば、コムイ室長のお部屋がどこにあるか、私知らないわ。誰かに聞かないと)
「あ、ジェリーさん」
考え事をしているうちに食堂のカウンターに辿り着いていた。
「あら、ミランダお帰りなさい。なに食べるぅ?」
「ただいま。あの、すぐではないんだけど、コレを使ったメニューって何か作れないですか?」
「んー、傷んだキイチゴよね?それ?料理のアクセントに使えばいいのかしらン?」
「あ、あの!新しい仲間が、お肉が好きみたいで、味変えに食べるって言ってて!」
「あー、昨日女の子を背負ってたあのワイルドな彼ね?噂になってるわよぉ?いかにも肉食系って感じよねぇ、彼。可愛いお耳に逞しい体躯、あんな素敵な男性に抱かれたいわぁ❣」
「あ、あの、ジェリーさん?」
「わかってるわよ。ソレちょうだい!彼の歓迎会までに、ぴったりのメニュー考えといてあげるわ。さてミランダは何食べる?」
どこか怪しげに体をくねらせながら、ミランダの手からキイチゴを受け取り、注文をあおぐジェリー。
「えっと、コムイ室長に届け物があるのでそれが終わったらまた来ますね?因みに室長のお部屋がどこにあるかご存知ですか?」
「あら残念。コムイの部屋なら化学班に聞けばいいじゃない?ほら、そこのテーブルにリーバー班長がいるし」
「ありがとうございます!」
「気をつけてねーん❣」
ジェリーに手を振ってリーバー班長の元へと歩く。
「リーバー班長、お疲れ様です!」
「お、ミランダ起きたのか!体は大丈夫か?」
「えぇ。皆さんがいつも守ってくださるから私は大丈夫です。あの、コムイ室長のお部屋に行きたいのだけど、どこか知りませんか?」
「げっ!!マジで言ってんの?」
「えーと、私何かしました?」
「いや、ミランダは何にもしてないよ。あの人の部屋は教団の誰も近づこうとしないっていうか、近づきたくないっていうか…なんかあったの?」
「この書類をコムイ室長にって、婦長さんから預かったのですが」
「ちょい貸して?…コレ、血液データじゃん。クロウリーと、こっちはあの虎の子かな?」
「瑠璃さんです!」
「あー、俺ら新しいエクソシストの名前確認もできてないんだわ。悪りぃけど教え てくれる?」
「瑠璃さんは、椿さんの大切な仲間です!」
「お、おぅ。装備型のイノセンスの子が椿でいいのかな?」
「えぇ、クロウリーもあの子達も助かりますよね?」
「その為に俺らが居るんだろ?室長の部屋いこーぜ。あの人昨日から部屋に篭りっきりだから応答するかわかんねぇーけど」
「ありがとうございます!」
パタパタと足早にコムイの自室へと向かう二人。
「室長ー!コムイ室長ー!生きてます?」
「あの。お届け物がありまして!」
ガガガガガ!ピーギギギギギィキーン!
「あー、くそ聞こえちゃいねぇ!コムイ室長!聞いてます?」
ドンドンと扉を叩いても音は止まない。
「ちっ、仕方ねぇなぁ…すぅ…リナリーが結婚」
「リナリー!結婚なんかしちゃヤダーー!!」
結婚すると言い終える前に内側から扉が勢いよく開き、リーバー班長が壁と扉に挟まれた。
「リーバー班長!?」
「ねぇ、ミランダ!リナリーは?リナリーはどこ?!」
「えーと、コレ、婦長から預かってきました!」
「へ?婦長から?あー、コレねありがとう。助かるよ。ありがとう、ミランダ」
「〜!しつ、ちょうぉ?俺の扱い、雑じゃないっすか!!」
「あ、リーバー班長、いたんだ?」
「いたんだ?じゃないですよ!決済待ちの書類溜まってるんてるですから、早く仕事に戻ってください!」
「ごめん、今も大事な仕事してるから、もう少し誤魔化しといて〜!ンじゃねぇ」
リーバー班長の抗議を無視して、バタンという音共に部屋に消えるコムイ。
「ちょ、室長!」
ガンガンガンガン、ズギャラギャラ!!?
「あの、リーバー班長ありがとうございました、私も部屋に戻りますね?」
「あぁ、お疲れ様。迷うなよー」
「はい、この新しい本部にも慣れたので大丈夫です」
「あんま、抱え込むなよ」
「えぇ。ありがとうございます」
リーバーと離れ、一人思案する。
(私にできることはやったわ。あとは皆を信じて待つだけ。クロウリー、瑠璃さん、椿ちゃん、お願い目覚めて!)