死んだ町に居座る適合者
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「椿」
瑠璃自身のお腹を枕にして横たわる椿。
ひび割れたガラス細工のように椿が砕けて無くならないか心配でならない。
「瑠璃、心配ないである。教団にはイノセンス修復のスペシャリストがいる」
「…………る、り」
「椿!」
「目が覚めたであるか!」
「…ココは?」
体を動かさず、視線だけで問う椿の顔を瑠璃が舐める。
「なんだ。まだ、いたのか。自由だと、言ったのに」
「お前の笑顔のない自由など要らない、生きろ椿」 「…椿、聞いても良いであるか?」
クロウリーの問いにゆっくり瞬きして続きを促す椿。
「椿は、後悔しているであるか?」
「…どう、だろな。なにを悔みたかったのか。今はよくわからない」
椿の瞳から光が消えかかり、気を紛らわそうとクロウリーは口を開いた。
「私は!…愛するものを壊して、エクソシストになったのだ。エクソシストの仕事は、人から感謝される事の少ない仕事である。アクマと戦う私達はバケモノ呼ばわりされあである。でも信じて命をかけてくれる仲間もサポーターもいるである。椿がエクソシストになってくれたら、すごく心強いである!」
己の過去を折り混ぜながら話し、エクソシストの仕事に誇りがあると語るクロウリーを眩しげに、椿は見つめる。
「俺は、なれるだろうか。なか、まに」
「もう、仲間である!もうすぐゲートに着くである!気をしっかり持つである!」
「…る、りを、まきこみ、たくない」
「巻き込むのではない、椿の側にいる事が我の幸せ。笑ってくれ、椿。もう、作り笑いはしなくていい」
「ばれ、てたか」
瞳を閉じて、口元だけで微笑む椿。
諦めとも開き直りとも取れる曖昧な表情に、胸が痛む。
(椿は無理をしすぎなのである)
クロウリーが彼女のひび割れかけてる手を優しく握った直後、馬車の進行が止まる。
「皆さん、着きましたよ。クロウリー殿、冷たい場所ですみません。ゲートがある建物まで檻は入れません。もうすぐ日が昇ります。町の人が起きてくる前にゲートを通りましょう」
「クロウリー、手伝ってくれ、椿が壊れないように背負いたい」
「と、虎が!人型に?」
驚くファインダーを余所に、瑠璃は獣人型になり、クロウリーに手伝ってもらって椿を背負った。
「問題ない。仲間であるから」
とクロウリーも気を配る。
ミランダがゲートを通る手続きをして本部へ戻れば、すぐにコムイと医療班の婦長が出迎えた。
「お帰り。クロウリー、ミランダ。まずは全員医務室に行こう。ミランダも疲れてるだろう」
「私は大丈夫だけど、椿ちゃんの時間が吸えなくて」
「コレは…装備型イノセンスを無理矢理解放したのか?まずは全員傷を癒すべきだ。婦長」
「部屋の用意はできていますよ。本来男女別が良いのですが、仕切りを用意してます。治療が落ち着いたら着替えもあるので部屋を分けさせてもらいます」
「どこにいけばいい」
「ついてきてください」
瑠璃の姿に怯えもせず、婦長の案内で病室に移動する。
全員がベットに横になった時点で、ミランダが泣きながら発動を解いた。
吸われていた時間が戻る。
獣人型から虎に戻った瑠璃とクロウリーの体に、ペンタクルが浮かびかけては消え、椿も息が荒くなる。
医療班がパタパタと治療を始める中、ミランダが泣き崩れた。
「みんな、ごめんなさいっごめんなさいっ!」
「ミランダ、大丈夫だよ。みんな生きてる。適合者を連れて来てくれてありがと う。ココには医療に精通したアジア支部出身者も多い。彼らに治療を任せて、君も休んだほうがいい」
コムイがミランダの背をさすって落ち着かせベッドに寝かせる。
「婦長、後は頼みましたよ」
「健康体は早く仕事に戻ってください。私達の仕事の邪魔です」
「ハイハーイ、お邪魔しましたぁ」
おちゃらけて部屋を出たコムイの表情は、部屋を出た途端変わる。
「室長、クロウリー達の容態は?」
「リーバー班長。僕は少し部屋に篭るから、後の仕事は頼んだよ!」
「は?ちょ、仕事押し付ける気っすか!」
「僕はやらなきゃいけないことがあるからねー!頼んだよー!あ、虎用のコート作るのに、現地の人間の意見もあった方がいいと思うんだよねぇバクちゃんとウォンに意見聞いてもらえる?」
「ちょ。室長、逃げ足早っ…あー、どうしよっかなぁ。決裁権ある室長の仕事なん て、俺がやれるわけないのに。全くなに考えてるんだあの人は」
頭をかきながらリーバー班長は、いつもつけてるヘッドホンをいじって通信班に業務連絡をしながら病室前を後にする。