村娘の囁かなる恋心
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「悟空、まず床に散らばった包装紙を一つずつ出来る限り小さく丸めてください。悟浄は買い物袋を広げて、悟空が丸めた紙をそれに入れてください。食器の方は僕がどうにかします。啾さん指示をもらえますか?」
「あ、はい。えっとまず、平たい皿と小さめの器はすぐに使うので、私に下さい。軽く洗ってしまいます。あとは、大きさ毎にお皿の種類をまとめて、大きいものほど奥の方にしまってもらえると助かります」
啾も八戒の的確な指示に、我を取り戻したようで、互いに細かな指示や受け答えをしながら、作業を進めていく。
「悟空、悟浄。床の上が片付いたら、もう包装紙はありませんね?上で、三蔵が荷物の整理をしてるはずなので、そちらを手伝いに行ってください。明日には出発できそうなので、しっかりと荷造りをお願いしますね」
「へーい」
「あんま、役立てなくてごめんな啾」
「いえいえ、包装紙から出してもらえただけでも十分助かりましたから大丈夫ですよ」
ニッコリ笑う啾の笑顔の裏には、その後全く使えなかったけどねっと言う静かな怒りが見える。
((やっぱ、この子、八戒に似てて、怖ぇ))
二人はほぼ同時に同じことを思いそそくさとその場を後にするのであった。
「さて、邪魔者も居なくなりましたし、二人で昼食の買い出しにでも行きますか?」
「え?八戒さん、今さっき買い物から帰ってきたばかりじゃないですか!食料の調達くらい私一人で大丈夫ですよ!」
「いえいえ、悟空の食欲はお昼が一番旺盛なので、昨夜の比ではありませんからね。たった今もご迷惑おかけしたばかりなので、これくらいお礼させてください」
「そんなお客様に、そんなことさせられません」
「気にしないでください。僕が好きで申し出てるんですから。それとも昨日の話を聞いて、僕の事嫌いになりましたか?」
「そんな、滅相もないです。八戒さんの話はとても興味深くて聞いてて楽しかったです。できればその・・・もう少しお話したいかな、なんて」
下を向いて恥ずかしそうに答える啾が、やはり花喃と被って愛おしく思ってしまう。
けれど、花喃はもういないのだ。
彼女に代わる人もまた現れることはないと心の内に固く誓って、八戒は自身の心の内にある暖かな感情に蓋をする。
八戒の心の内など知らない啾は、密やかに八戒に恋心を抱いていた。
先程、明日には発ってしまうのだと聞いて、少しだけ自身の胸の内が痛んだ。
旅人であるこの人達は、一ヶ所に留まる事を良しとしないだろう。
ましてや、単なる村娘である自分一人の我儘で、彼がこの村に留まってくれるとは到底思えなかった。
だからせめて、数少ない会話の機会だけでも逃したくなかった。
「あの、それなら夕飯の分まで買い出しに行きませんか?私一人だったらお昼分だけで手いっぱいかもしれませんけど、八戒さんと一緒ならちょっと荷物が増えても大丈夫だと思うんです」
「あぁ、それは名案ですね。僕達の買い物は済ませてありますし、今日は僕も調理を手伝わせてください」
「えっ、そっそこまでは、させられませんよ!」
戸惑う啾だが、自分の隣で調理する八戒の姿を思い浮かべてちょっとだけ頬が熱を持ったように感じた。
「あ、ご迷惑でしたか?顔、赤いですよ?大丈夫ですか?もしかして、昨日から働きづめで疲れでも出ちゃいましたか?」
「い、いえ!大丈夫です。買い物、行きましょう!」
火照った顔を見られまいとそそくさと買い物の準備をする啾に続いて、八戒も苦笑しながら厨房を後にする。
その後、二人で昼食と夕食分まで買い物をしたら、随分な荷物になってしまった。
その重い荷物の大半は八戒が持ってくれているが、それなりに啾も荷物を抱えている。
更に、話しながらの買い物だったため、少々時間がかかってしまった。
二人はやや速足で宿に戻ると、特に互いに何かを相談し合ったわけではないが、二人で厨房に立って料理を始める。
宿屋に着けば、悟空が空腹に耐えかねたのか二階から顔を出してきたので、二人で作るので待ってるようにと八戒に咎められて二階に戻って行った。
料理が出来れば、自然と二人で運んでいた。
第一弾がテーブルに並べられれば、後は自分の仕事だからと啾は一人厨房に戻る。
短い間であったが、八戒と共に厨房に立ち料理が出来たことは、啾にとって特別な時間となった。