村娘の囁かなる恋心
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今回は、活躍の出番なしだった悟浄はどこからか掃除道具を見つけてきて、同じく暴れられなかった悟空に手渡して荒れてしまった厨房の掃除を始める。
「あ、お客様に片づけさせるなんてっ」
「いいのいいの。啾ちゃんは怖い思いしたんだからさ。先に二階に行って俺らの部屋で休んでなよ。三蔵様は、食器洗いよろしくな」
「チッ、めんどくせぇ」
口ではそう言いながらも、法衣の袖をめくり、片づけを手伝い始める三蔵である。
「じゃぁ、珍しく働き者の皆さんに、この場は任せて、僕らは二階でちょっと落ち着きましょう」
「えっえっ?いいんですか?」.
戸惑う啾の手を八戒が優しく握ってエスコートする。
「いいんですよ。怖い思いした後に、あの場を片づけて、余計な怪我でもされた方が迷惑ですから」
「そう、ですか。あの、お聞きしたいんですけど、さっきの気功術・・・人間じゃ出来ないですよね?もしかして八戒さん」
二階に行きながら啾は恐る恐る尋ねる。
「あー、バレちゃいました?僕、妖怪なんですよ。さっきあなたを襲った奴らと一緒です。怖いですか?」
「いえ、そんな!八戒さんは怖くないです!その・・・言いにくいんですけど、この村は妖怪が元々住んでなくて、最近襲撃に会うようになったんですけど、個人的には、共存できたらいいのになって思ってて。良かったら八戒さんとさっきの人達の違いを教えてもらえませんか?」
「珍しい意見をお持ちですね。では、ゆっくり座って話しましょうか」
八戒達があてがわれた部屋に辿り着き、テーブルの上で寝ているジープを挟んでそれぞれ席に着く二人。
「そうですねぇ、まず、何から話しましょうか。啾さんは、妖力制御装置についてご存知ですか?」
「いいえ知らないです。どんなものですか?」
「実物はこれです。今僕が、左耳につけてるこのイヤーカフが妖怪の妖力を押さえて、今桃源郷に起こっている異変から僕自身を守ってくれています」
「桃源郷の異変、ですか?確かに妖怪が暴れ始めましたけど、それと何か関係があるんですか?」
「ええ、話すと長くなるんですが、長い話は嫌いじゃないですか?」
「いいえ全然そんなことないです。むしろこんな機会滅多にないので、色々聞きたいです!」
前のめりになって話に興味を示す彼女を見て、どこかで八戒は、昔亡くした双子の姉を思い出す。
花喃も好奇心旺盛で、教師をしていた頃の自分の講義の内容や子供達との触れ合いの話を熱心に聞いていた。
今も真剣に八戒の話に頷いたり質問を入れたりする啾の姿は、よく花喃に似ていた。
一方、啾も八戒の話に聞き入って会話を楽しんでいた。
先程まで妖怪に襲われて恐怖心を感じていたというのに、同じ妖怪であるはずの八戒と話してても先程までの恐怖心はわいてこなかった。
分かりやすい説明に、最近の妖怪の襲撃の原因を知って驚き、またその原因を聞いて、自分にできる事はないか考えてみたりもする。
なんだか、この八戒という青年の話はとても分かりやすく、話し方も好感が持てる。
こんな時間が少しでも長く続けばいい。
そう思い始めた瞬間、扉が開く。
「おい、洗い物。終わったぞ」
「こっちも割れちまった皿の片づけ、終わったぁ」
「かなりの枚数割れちまったからなぁ。明日は俺ら外に食いに行かないとな。帰りに割れちまった皿の補充もしてきてやるよ」
「そんなっ。助けてもらった上にお客様にそこまでしてもらうわけにはっ」
戻ってきた悟浄の言葉に慌てて立ち上がり抗議する啾。
「いいのいいの。俺らの好意だから。怖い思いは、消えた?可愛い女の子には、笑顔が一番よ?見たところ、啾ちゃん、独り暮らしだろ?」
「えぇ、数年前に家族は流行病で亡くなってしまって。今は一人で家族が残してくれたこの宿を経営しています」
「だったら、尚更、女の子に大量の皿を買い付けさせて持ってこさせるのは悪いって。元々、うちの大食いバカ猿が宿屋の皿全部使わせたようなもんだしな。遠慮せずにこの位弁償させろって。なっ、三蔵。いいよな?」
「・・・勝手にしろ。おい、啾。俺らが朝食、食べに行ってる間に、ジープの様子を見ててほしい。簡単なスープ系なら注射器で食べれてたからな。そいつが回復しないと旅の続きが出来ない。頼めるか?」
「私がドラゴンさんの面倒を見てもいいんですか?」
椅子に座り既に煙草をくゆらせ始めた三蔵に、驚きの表情で尋ねる啾。
「啾さんになら安心して任せられますよ。啾さんの作ったスープでジープも少し元気になりましたし。よろしくお願いしますね」
「八戒さんが言うなら、私頑張ります!」
「そんなに力まなくていいですよ。そうだ、今夜は一階で寝るのは危ないでしょうから。二階の空き部屋で寝たらどうですか?」
「あぁ、そうですね。ちょっと、まだ一人で一階に行くのは怖いです。また襲撃されたら怖いですし」
「じゃ、隣の部屋で寝てれば、俺ら気付くからすぐに駆けつけるよ」
「ありがとうございます。悟空くん。じゃぁ、私はこれで失礼しますね」
ぺこりと頭を下げて、啾は部屋を後にする。
そして、すぐ隣の部屋の扉が開閉される音を聞き届けて、一行も寝ることにしたのだった。