村娘の囁かなる恋心
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その日の夜、啾は悟空の大食漢の胃を満たすために、献身的に一階から二階を往復して料理を運んだ。
持ってきては片づけ、次の品をまとめて持ってきては片づけて、まとめて作りまた持っていくの繰り返しだった。
(もう、なんなの、あの小さい子はっ。あの小さな体にどんだけ入るのよ!)
心の中で愚痴を吐きながらも、接客業のため一生懸命に仕事をこなす。
そうして嵐のような食事の時間が終われば、厨房で大量の洗い物が待っている。
宿に置いてある食器を全部使い切った気がする。
本当は洗い物など早く終わらせて、弱っていた白いドラゴンの様子でも聞きに行きたいのだが、仕事が優先だ。
心を決めて啾は、大量の洗い物の片づけに着手した。
一方、食事を終えた一行の間には、和やかな雰囲気が流れていた。
「あー、食ったぁ。啾の料理、うまかったなぁ」
「悟空の大食漢ぶりに、少し翻弄させてしまいましたね。僕も手伝うべきでした」
「けどよ、悟空の対応を一人でこなしちゃうなんて、啾ちゃんやるじゃん」
「・・・ジープの様子はどうだ」
三人がそれぞれ、啾の働きを褒める中、三蔵は煙草を蒸かしながら、ジープの様子を尋ねる。
啾が気を遣って、ジープでも食べれるように、注射器に入れられるようなスープを作ってくれたので、ジープの食事は八戒が注射器を使って、少しずつスープを飲ませていた。
「きゅ」
三蔵の問いに少し元気が出たのか、短い声でジープが返事をする。
「少し元気になったみたいですね。夜は冷えすぎないように、毛布かけますね。ジープ寒くないですか?」
「きゅ、きゅいー」
軽く頭を上げて、八戒を見つめるジープの眼にはぐったりしてた頃よりも多少力強さが見るが、まだ本調子ではないらしい。
返事をした後毛布に顔まで埋めて丸くなる。
「なんだ、今度は少し寒いのか?クーラー消すぞ」
悟浄が気を利かせて、クーラーを切る。
無風になった部屋の中に、三蔵の煙草の紫煙だけが立ち上る。
悟浄もつられて煙草を吸い始め、暫し静かな時間が過ぎる。
だがその静寂も長続きせず、食器の割れる派手な音が一階から聞こえた。
続いて響く啾の叫び声。
「きゃぁああああ!」
「啾さん!」
「八戒、急ごう!たぶん、妖怪だ!」
「数は、少ないみたいだけどな!啾ちゃんが人質に取られてたら、大変だ!」
「チッ、どこに行っても妖怪が居やがる」
四人がそれぞれ話しながらも、一階に駆け降りる。
カウンターを通り越し、奥の部屋へと続く扉を開ける。
一番奥の厨房のドアが開いている。
隙間から、割れた皿の破片が見えている。
「啾さん!大丈夫ですか!」
「八戒、さん、来ちゃ、ダメです」
「おい、女!気安く喋ってんじゃねーよ。自分の状況理解してんのか?」
下衆な妖怪の声が響く。
厨房では大量の食器が崩れ、窓から侵入したと思われる妖怪が数人立って、その内の一人が啾を人質に取り首元に刃物を突き付けていた。
「あーぁ、こんなに食器割っちゃって。この修繕費どうすんのよ?」
「三蔵のカードがあれば、どうにかなるでしょう」
「てかさ、美味しい料理作ってくれる奴を人質に取るなんて、お前ら最低だぞ!」
「啾さん、合図したら、全力でこちらに走って来てください」
「でもっ」
「大丈夫ですよ。僕ら、こういう状況に慣れてますから。ね、三蔵?」
「うるせぇよ。俺は今、煙草の時間を邪魔されて機嫌が悪いんだ」
ガウン!ガウン!ガウン!
三蔵の言葉が終わるか否かギリギリのタイミングで、彼が懐から出した拳銃が火を吹く。
銃弾は、啾を拘束していた妖怪と、その付近にいた二人の妖怪の脳天を貫いていた。
拘束が緩んだすきに、啾は前をろくに確認せずに走り出す。
ただただ、怖くてこの場から逃げ出したかった。
そんな彼女を受け止めてくれたのは、八戒だった。
「大丈夫でしたか?怖かったでしょう?足元、食器の破片が多いですから僕の後ろに居てくださいね?」
そう言いながら、八戒は残りの妖怪達に特大の気功を放ち一掃する。
「ちぇ、俺らの出番なしかよ」
「バカ猿。こんな狭い場所で、俺らが暴れたら、食器とか更に割っちゃうでしょ?バカなお猿さんは、皿の片づけ手伝え。ほれこれ、箒と塵取りな」