村娘の囁かなる恋心
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晴天の空の元、西へと向かうジープの軌跡が荒野に土煙を残して駆けていく。
「あっちー。なぁ、八戒。もっとスピードでねぇの?日差しが痛いし、せめて気持ちいい風くらい感じたいんだけど?」
孫悟空が、座席中央の空間から前の席に身を乗り出して尋ねる。
「それが、ジープの調子が良くないんですよ。連日、炎天下の中を飛ばして来てますからねぇ。無理をさせてしまってるのは分かってるんですが、次の町までまだ距離がありますし」
「そんなに悪いのかよ。って、40キロしか出てねぇじゃん。ジープ大丈夫かよ?」
沙悟浄も心配になったのか、猪八戒の外側から身を乗り出して速度計を確認して驚く。
「ここは交通規制のかかった公道かよ。ジープがこの調子なら今夜も野宿になんぞ」
「えー、俺、もう野宿嫌だよ~。前の町出てからずっと野宿じゃん!いい加減、布団で寝たい~」
「おい、八戒、ハンドルを右に切れ。直線コースからはズレるが、ジープの調子が悪いなら休ませる必要がある。ここから少し北に進路を変えた場所に小さな村がある。そこでジープの回復を待って再出発だ」
いつの間にやら地図を広げて、進路の指示を出したのは、いつもなら後部座席の二人にぶち切れてる玄奘三蔵だ。
「三蔵、今日は意外と冷静ですね」
彼の意外な行動に驚きの声を発しながらも、八戒は言われた通りにハンドルを切っていた。
「フン、くだらぬ戯言に付き合うよりも、最善策を取ったまでだ」
地図をしまって煙草を吸い始める三蔵に、後部座席の二人が驚いている。
「なぁ、悟浄。三蔵、おかしくなったのかな?」
「いや、暑さできっとどっかイカれてんだ。じゃなけりゃ、ハリセンも銃声もない三蔵なんか、三蔵じゃねーよ」
「おい、貴様ら、俺をなんだと思ってやがる」
「あーぁ、二人とも?せっかく、三蔵が穏便に事を済ませようとしてるのに、事を荒立てないで下さいよ。ただでさえ、ジープの調子が悪くて炎天下の日差しを浴び続けてるんですからね。それを運転してる僕の身にもなってください。今、ジープの上で暴れられて、ジープがダウンしたら、この場所で、数日足止めですよ?」
「うっ、それは勘弁」
「左に同じ」
低い三蔵の切れかけた口調に、八戒がすかさず現状報告をいれて、前のめりになっていた後部座席の二人は上体を後ろへと戻した。
そうこうしている内に、前方に村らしい建物が見えてくる。
「三蔵、村ってアレでいいですか?」
「あぁ、方角的にもそうだろう」
三蔵が地図と方位磁石を手に、地図と目の前の光景を確認する。
「じゃ、しばらくはベットの上で眠れそうね」
「宿屋があればの話だがな」
「えー、その位あるだろ?なかったらどうすんだよ?」
「村の外で、野宿は嫌ですねぇ」
そんな不毛な会話をしている内に村に辿り着き、ジープは変身を解けば、八戒の腕の中にぐったりと丸くなった。
かろうじて首を上げて、きゅうと一声だけ鳴いて、力なく頭を下げる。
「ありゃりゃ、こりゃ、ジープ重症だな。早めに宿屋確保しようぜ」
悟浄の言葉にそれぞれが、荷物を持って、村の中に入っていく。
「あの、すみません。旅の者なんですが、この村に宿屋はありませんか?」
営業用スマイルで道行く人に、八戒が宿屋の場所を尋ねる。
「あぁ、宿屋かい。それなら、1軒だけ。ここから、3つ先の建物がそうだよ。一人娘が経営する宿屋があったはずだな」
「ご丁寧にありがとうございます」
教えてくれた村人にお礼を言って、一行は教えてもらった宿屋の門を開く。
「あら?旅のお方ですか?お客さんなんて、久しぶりです。みなさん、一緒の大部屋がいいですよね?なんだか、ドラゴンさんもとても具合悪そうだし、今その子が使えるようなクッションも準備しますね」
身長は低めだが、クリーム色の瞳と眼を持つ女性が、一行の様子を見てテキパキと動き出し、受付の奥へと姿を消す。
ジープの姿を見ても驚かない様子をみると、動物や小さな生き物が好きなのかもしれない。
宿屋に着いたら絶対、別の部屋にしてもらうと決意していた悟浄と悟空であったが、女性の営業スマイルが誰かに似ている気がして、言いそびれてしまった。
あまり時を待たず女性が再び姿を現す。
その手には大き目のふっかふっかとしたイメージを与えるクッションと、ジープにかけてあげられる小さめの毛布が握られている。
「お待たせしました。お部屋は2階になりますので着いてきてください」
そう言って、女性はカウンター脇の小さな可動式の扉を出て、入り口すぐ右手にある階段を上っていく。
一行もそれに続いて、数部屋しかないドアを通り過ぎて、一番奥の部屋に案内される。