大人の恋愛 不器用男再起をかける
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「あー、その、なんだ。今の仕事ってよ、満足してる?」
当たり障りのない所から遠回りに攻めてみることにした。
「仕事?いたって順調よ?今日も残業してきたくらいだし。でも、残業してもほとんどサービス残業かしらね。やりがいはあるけど、なんていうか、達成感に欠けるかしら。やりがいはあるのよ?だけどね、こう、一つの記事を書き終えても次がすぐに迫って来てて、ちょっと完了した時の達成感に浸ってる暇がないのよね」
悠香の口から、今の仕事に対する不満が出てきたので、虎徹も少し話しやすくなった。
彼女がカシスオレンジを口にしてため息を吐き出し終わるのを待って虎徹は、直球勝負に出ることにした。
「あのよ、もし、悠香さえ良かったらでいいんだけどよ・・・その、戻ってこないか?」
「戻る?って、どこに?」
「あー、だから、よ。悠香さえ良かったらなんだけど・・・ヒーローに、戻ってみないか?」
後半はちょっと小声で、彼女にだけ聞こえる音量で告げる。
「え?私もう30過ぎよ?こんなおばさんが今更現役の子達の中に入っていけるわけないじゃない。虎徹さんも冗談いうのねぇ」
「冗談じゃないって。それ言ったら俺だって30過ぎてるっつーの。あのロックバイソンもそうだぜ?俺達の世代で残ってんのは、俺とあいつだけで、他は若い奴らが多いけどよ。ヒーローに歳なんて関係ないだろ?やる気のある無しじゃねーのかな。悠香が引退したのは恋と仕事は別にしたかったからだろ?けど、現実はどうよ?恋と仕事は別にしてみてさ。仕事は順調かもしんねーけど、不満あるみたいだし。俺らの事を記事にしてくれるのは嬉しいけどさ。その、同じ職種ならよ、もっと一緒にいられる時間、作れるじゃん?」
「うーん、そんないきなり言われても・・・確かに今の仕事に不満がないかと言えば嘘になるけど・・・もっと虎徹さんと一緒にいられる時間が出来るのなら嬉しい限りだけど・・・そう、簡単に答えなんて出せないわ」
うつむいて飲みかけのカシスオレンジを見つめながら、途切れ途切れに話す悠香。
虎徹は畳みかけるなら今しかないと思った。
「あのよ、俺もいきなり復帰しろとは言わねーからさ。能力もしばらく使ってねーだろ?だから、提案なんだけど、明日悠香の仕事オフだったろ?俺と一緒にうちの会社来てくれないか?上司に顔見せるだけでもいいからさ。それで、やっぱり嫌なら無理にとは言わないからよ。考える時間は誰でも欲しいだろ?職種変えるって普通でも迷うことだしよ。ヒーローつったら尚更だ。だから、一晩ゆっくり考えてほしい。今夜は家まで送るからよ」
左手側にいる彼女の肩を、やさしくぽんぽんと叩く。
「即答できなくて、ごめんなさいね」
「謝ることじゃねぇよ。大事な話だからきちんと自分で考えて答え出して欲しいんだ。俺もさ、危険な仕事だからよ、悠香が嫌だってんなら無理強いはしない。けど、今の仕事よりもやりがいも達成感もあると思うぜ。新聞記者と比べて、達成感が味わえるかどうかっつたら、俺は今の仕事に誇り持ってるからよ、忙しくても十分達成感もあると思ってる。実際、悠香はどうしたいんだ?もし、今の生活に満足いってない部分があるなら、ちょっとくらい他の世界を見るのもいいと思うぜ?それに、出戻りなんだから、仕事の容量は覚えてるだろ?一緒の職場になったらさ、分からないこととかもサポートしてやれるし。いや、俺の方が事務仕事とかで手伝ってもらうこともあるかもしんねーけど」
日頃の事務仕事の出来なさを思い出し、情けなくなってそっぽを向く虎徹に対して、悠香は体を虎徹の方に向けて尋ねる。
「虎徹さんと同じ会社に入れるのかしら?」
お?これは、脈あり?
伏目がちに尋ねる悠香の態度を見て、虎徹は現状話せる内容を提案する。
「さっきも言ったけどよ、明日俺の上司に会うだけ会ってみてよ、能力の確認とかしてOKだったら、枠は開けてくれると思う。ほら、アニエスって覚えてるか?あいつも何かと動いてくれてるみたいだし」
「アニエスさん、まだ現役続けてるの?」
「あぁ、今じゃマーベリックが居なくなったから、ヒーロー界の最高顧問やりながら、ヒーローTVの編集の最前線に立ってるぜ」
「相変わらず、アニエスさんは仕事一筋なのね。いい歳なんだから恋の一つや二つしてもいいのにね」
くすくすと悠香が笑った。
やはり彼女には笑顔が一番だ。
心がほっこりして、顔が弛緩しそうになるのをこらえて、何とか言葉を紡ぐ。
「ま、取りあえず明日10時に家に迎えに行くから、出かけられるように準備だけしておいてくれよ。会社に来るのはOKなんだろ?」
「うーん、そのくらいなら、いいかしら。でも怖い上司の方だったらどうしよう。緊張して何も出来なかったらどうしましょう。能力使うのなんて、本当に久しぶりだから、うまくいくか本当に自信がないわ」
「まぁ、そこんところはやってみないと分かんねぇさ。取りあえず、今日の所は飲もうぜ?大事な話だけ、酔いが回る前に話しておきたかったからさ。忘れんなよ?」
「分かったわ。じゃぁ、あとはゆっくり楽しく飲みましょう」
なんとか、悠香にヒーロー界復帰への誘いをかけられた虎徹は、一気に残ってたウィスキーを飲み干して、次は、焼酎ロックを頼む。
悠香もそんな虎徹の姿を見て気持ちを切り替えたのか、チビチビと女の子らしくお酒を飲んでその後の時間を過ごした。