大人の恋愛 不器用男再起をかける
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その日、虎徹は悠香をお洒落なイタリアンレストランに連れてきていた。
ベタな展開かもしれないと思ったが、夜景の見える高層ビルにある人気店で1ヶ月の予約待ちだった所を無理やり押さえた。
今日と言う日は、自分の思いを告げるべく、虎徹はタキシードを着てピシッと決めて来たつもりだ。
もちろん、内ポケットには先日購入したペアリングを忍ばせてある。
悠香は、いつも白のヒーロースーツとは対照的に、グリーンのマーメイドドレスに白いファーを羽織って店に合わせた優雅さを纏って来ていた。
「虎徹さんがこんな所に誘ってくれるなんて思わなかったわ。ここ、三ツ星レストランで、予約取りにくかったんじゃない?」
「ん?、あー、まぁな」
互いに席に着きながら、生返事を返す虎徹はどのタイミングで言うかそれしか頭にない。
「お客様、今日のワインはいかがいたしましょう」
男性店員が虎徹に花を持たせようと、ワインのメニューを見せてくる。
「あー、悠香そんなにワイン得意じゃなかったよな?」
「えぇ、きついのはちょっと苦手かしら」
「じゃ、フルーティ系のアルコール軽めで、今日のフルコースに合うのを適当に頼むわ」
「かしこまりました」
虎徹の慣れていない注文の仕方に軽く微笑を浮かべて、男性定員が引き下がる。
ほっと虎徹が胸を撫で下ろせば、まっすぐ窓の外を見つめる悠香の姿が目に入った。
「悠香、どうした?街なんていつ見ても同じだろ?」
「そうかもしれないけど、この街をこうしてまた守る仕事に再就職するなんて思ってなかったから、改めて眺めてるとね、これが私が守ってる街なんだなって思ってね」
悠香は一度、ヒーローを離れている身だ。
ずっとヒーローとしてシュテルンビルドを守って来ていた虎徹とは違い、感慨深いものがあるらしい。
ある意味これは、チャンスかと思い、虎徹は話を進める。
「あのよ、この世界に戻ってみてどうよ?楽しいか?」
「えっ、楽しい、と言うよりは、充実してるわ。ファンも多いし、成績も二人のおかけで私も上位に食い込めてるし、他の人には悪いかもしれないけれどね」
くすくす笑う悠香とそれを優しい眼差しで見つめる虎徹の元に、料理とワインが運ばれてくる。
「こちら、前菜と、白ワインになります」
店員が丁寧に二人の元に料理を置き、虎徹に試飲をさせた後に、悠香の元にもワインを注ぐ。
「じゃ、街の平和を守れてる幸せに乾杯」
虎徹の声に合わせて、綺麗なスパークリングの白ワインが注がれたグラスを、二人は互いの前で顔から上に少しだけ上げる。
ワイングラスは打ち鳴らさない。
その程度の常識は、告白を控えている虎徹でも知っているし、新聞記者として色んな人物と食事に行っている悠香は当然知っている礼儀であった。
それからゆっくりワインを口に運んで、暫し味の余韻に浸る。
「結構飲みやすいワインだな」
「えぇ、炭酸が入ってるからかしら、えぐみが無くていい感じ」
「だな」
店員が来てしまったことで、告白するタイミングを失ってしまった。
ひとまず、ここは前菜に手を付けて話が膨らんだ所で話を切り出そうと、気持ちを切り替える。
三ツ星レストランと言うだけあって料理はおいしい。
その後も何度か、頃合いを見て話を切り出そうとする絶妙のタイミングで料理の交換に店員が来るので、最後のデザートまで話が切り出せないでいた。
虎徹は、いい加減痺れを切らして、ちょっと声を荒げてしまう。
「、悠香!あの、さ!」
「ん?なぁに、虎徹さん?」
デザートに手を付けかけていた悠香は手を止めて、虎徹にまっすぐな瞳を向ける。
その素直さに息を呑んで、一瞬言葉が出なくなる虎徹だが、勇気を振り絞って口を開く。
「あのよ、俺ら、付き合って結構経つよな。俺が初めて告白した時の事、覚えてるか?」
「うん、覚えてるわよ。あの時もそう言えばこんな感じのお店だったわねえ」
「そ、そうだったよな。それによ!最近だと、仕事でもプライベートでも一緒にいられる時間も多いしさ、その、なんだ、なんつーかぁ」
「なぁに、虎徹さん?」
焦って少し早口の虎徹が言わんとしていることが分からなくて首を傾げる悠香。
黒髪がふわりと揺れて、夜景の下からの光と相まって幻想的に見える。
その光景に見惚れながらも、何とか虎徹は言葉を紡ぎだす。
「あの、よ・・・よかったら、俺の恋人じゃなくてさ、その、えっと、お、」
「恋人じゃなくて、お?」
「お、お、・・・お、奥さん、になってくれませんか!」
勢いで懐からペアリングの小箱を開けて、返事を貰おうとその時、二人の手首にあるヒーロー緊急招集のアラームがけたたましく鳴った。
「だぁー!一世一代の大勝負の時に、世間様騒がすんじゃねーよ!悠香、この続き、また後でな。今は現場行くぞ!」
「えぇ、急ぎましょう」
虎徹はペアリングの小箱を終って、二人は急いで会計を済ませて店を出る。