雨の中にて思ゆる
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~合流~
雨の音が止んだ。
窓辺で、タバコをくゆらせていた三蔵の手が止まる。
目の前の灰皿には、山盛りの灰がら。
何かに急かされるような焦りをタバコで誤魔化すように、ハイペースで吸っていたらしい。
紫の瞳が不機嫌そうに細められると同時に、部屋の扉が大きな音を立てて開く。
悟空「三蔵!雨、上がったな!」
開いた扉と同時に間髪入れず、満面の笑顔のくそうるせぇ奴の声。
何に自分が焦っていたのかさえどうでもよくなる、とにかくうるさい声に、ふっと笑みがこぼれた。
悟空「あ、三蔵、今笑った?」
三蔵「笑ってねぇよ」
八戒「僕ら、見逃しちゃいましたね、悟浄?」
悟浄「あぁ、天下の三蔵様が笑うところなんて、超レアじゃね?」
阿保面に続いて、入ってくる面子もいつも通りで。
どいつもこいつも、自分の趣味の時間を邪魔ばかりしやがる。
三蔵「部屋に入るなと、言ってなかったか」
苛立ち混ざりの三蔵の声に、三人は互いに顔を見合わせて、悟空が真っ先に口を開いた。
悟空「だって、雨あがったじゃん」
三蔵「だから、なんだってんだ」
苛立った声で返す三蔵に、今度は悟浄が口を開いた。
悟浄「濡れずにドライブできるしな、なぁ?八戒?」
八戒「そうですぇ、雨上がりだから、見つけられるものもありますし」
悟空「え、何それ?」
八戒の言葉に悟空が興味津々という眼差しを向ける。
悟浄「なに、しらねーのか?外、見てみろよ?」
世話好きの悟浄が悟空を押して、窓の外を指さした。
三蔵「おい、こっち来んな!」
窓辺にいた三蔵は、やかましい二人に巻き込まれ、一緒に窓の外を見ることになる。
そこに見えたのは、虹だった。
八戒「二重虹ですねぇ」
いつの間にか、八戒も少し離れて外の虹を眺めている。
求めてもいないのに、解説まで始めやがった。
八戒「内側と外側で色の配列が逆になっている二重虹を見れるのは、とても珍しいことで、幸せのサインとも呼ばれるんですよ」
悟空「あ、ホントだ!外の方が、薄いけど、ちゃんと色が逆になってる!」
悟浄「幸せのサイン、ねぇ。幸先いいんでないの?三蔵様?」
悪戯そうな視線を投げてくる赤ゴキブリがクソうぜぇ。
三蔵「~~~!いい加減、離れろ!馬鹿ども!」
いずこから出したのか、いつものハリセンが悟空と悟浄に炸裂する。
悟浄「いって~!毎回毎回、どこから出すんだよ、そのハリセン!」
三蔵「フン、八戒。支度は?」
悟浄の言葉を適当にあしらって、八戒に確認する。
八戒「いつでも、出発できるように準備できてますよ」
笑顔で答える彼の肩には、いつの間にやら小さなドラゴンの姿をしたジープが止まっている。
三蔵「行くぞ!・・・雨は上がったんだ」
部屋を出る直前、小さく言葉をつけ足した三蔵に、悟空も悟浄も一瞬視線を絡めて、笑う。
悟浄「よし、行くか、ちび猿!」
悟空「ちび猿言うな!この、ゴキブリエロ河童!」
悟浄「言うか!くそちび大食らい猿!」
三蔵「やかましい!」
いつものごとく、三蔵の銃声が彼らのくだらない喧嘩を止めて、八戒は「いつもの通りですねぇ」と朗らかに、笑う。
彼らの絆は、彼ら自身が分かっている。
腐れ縁と表面で語っているが、彼らの前にどんな強敵が現れようと、どんな受難が待っていようと、彼らは進むのだ。
彼らなりのやり方で・・・
~「雨の中にて思ゆる」完~