トリップorラビューン
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街灯がぽつりぽつりと光る夜道を、ろくに前も見もせずにただ感情に任せて陽子は走っていた。
八戒の好みは分かっても、彼自身は次の恋に進む気がないと、悟浄を追及することでそれを示していた。
結局、自分の恋は叶わない。
悔しかった。
別の世界にまで来て、初めて優しくしてもらえた人に一目惚れして、お膳立てまでしてもらって、好みまで聞き出したのに、傷つけてしまった。
さりげなく簡単なゲームをしながら話題として聞き出す作戦だったのに、最後にあんなに冷たい笑顔で悟浄を責めるとは思わなかった。
それもこれも自分のせいだ。
自分がこの世界に来たから、こうなった。
静かな月夜と街灯だけが照らす夜道をただがむしゃらに周りなど気にせずに走る。
唐突に、至近距離の目の前を蛾が横切って、慌てて走っていた足を止める!
岡田「きゃっ!蛾?」
辺りを見渡せば、街灯の周りに異様な数の蛾が集まっている。
それも一ヶ所じゃない、複数の街灯に蛾が群れていた。
岡田「あれ?蛾ってこんなに群れるものだっけ?」
蛾に遮られて、街灯の光がちゃんと見えない。
???「あらん?こんな夜中に、綺麗な黒曜石みたいな髪の女の子が一人で出歩いちゃダメよん?」
野太い声の女性口調の声が、暗闇の中から放たれる。
蛾に埋め尽くされた街灯の僅かな明かりから見えるのは、尖った耳に、煤けた蛾のような茶色い真ん中分けの長髪の男性。
岡田「あなた、誰?」
妖怪「あら?私を見ても驚かないなんて不思議な子ね?でも残念、あなたには、これから私の可愛い子供達の餌になってもらうわよん?」
そう言うと、男の体が変化する。
周囲にいた蛾が男性の元に集まり、背中から蛾の翼が生えて、下半身も蛾のそれに変化する。
そして、メタモルフォーゼした男は、羽ばたきながら、洋子に向けて手をかざせば、そこから吐き出される無数の糸。
岡田「これって、もしかして、八戒さんが言ってた妖怪?!」
突然の出来事に驚きながらも、すでに無数の糸が、陽子をまるで囲むように円形に取り囲んでいる。
妖怪「ご名答。でも、もう遅くてよ?さっきも言ったけど、あなたは私の可愛い子供の餌になってもらうの」
前が見えなくなり、足元もかすかに地面に足が着いてるものの、周囲は繭で覆われ逃げ場がない所に、ブスリと上から、蛾のお尻の部分が挿入され、卵のようなものを産み落としていく。
半透明の殻の中で、うごうごと芋虫状の生き物が蠢いて、複数の卵から幼虫が生まれようとしていた。
岡田「嘘、でしょ、こんな展開あり?」
洋子の世界ではありえない非日常に頭の理解が着いて行かず、とにかく目の前の気持ちの悪い現象をただ見守る事しかなできない。
やがて、卵の1つが、内側から殻を食い破って中から、薄緑色の気持ち悪い幼虫が出てくる。
1つ目に続いて、続々と他の卵からも幼虫が生まれ始めていた。
その数、およそ10数匹。
岡田「い、いや、こっち来ないでよ!」
近寄ってきた幼虫を足で蹴るも幼虫は、蹴り飛ばされた先で繭にべったりとくっついて落ちない。
それどころか、そのまま洋子に近寄ってにじり寄ってくる。
(嘘っ、気持ち悪い!逃げられない!どうしたら、いいの!)
妖怪「ふふ、慌ててるみたいね。でも、もう逃げられないわ。子供達の餌の時間だもの。ここも塞いじゃうわね」
蛾の親玉が先程、卵を産み付けていた穴から、中を覗いて状況を確認した後、手から糸を出して、眉を完全に閉じてしまう。
妖怪に関する知識が全くなく、戦闘経験すらない洋子はなす術がない。
ただ、幼虫が自分に近寄らないように蹴ったり、鞄で遠ざけたりするだけだ。
それでも、幼虫達は、繭の壁をにじり寄って洋子を捕食しようとする。
(もう、これ、絶体絶命じゃない!こんな所で死ぬなんて、冗談じゃない!)
懸命に幼虫に近寄られないように、鞄を振り回して、遠ざけようとするが、閉鎖された繭の中では限界がある。
誰かが助けに来るのが早いか、洋子の体力が尽きて幼虫の餌になるのが早いかのどちらかだった。
岡田「誰が、こんな所で死んでたまるもんですか!」
洋子は鞄の中から、事務用品でよく使っていた携帯カッターを取り出して、真後ろの繭に突き刺す!
繭は分厚く編まれていたが、カッターが刺さったことで、薄く一枚だけ隙間が出来る。
そのまま洋子はカッターを上下に動かして隙間を作ろうとする。
もちろん、その間に近寄ってくる幼虫達は、蹴ったり、鞄でぶっ叩いたりして遠ざけておく。
(少しでも生き残れる可能性を広げて、誰かが助ける時間を稼がなきゃ)
洋子の頭の中にはそれしかなかった。
懸命に、繭を裂くこと数分。
ついに繭の外が見えた。
片手が入るほどの空間に手を突っ込み、無理やり外側へと引き裂いていく。
時にカッターで穴を広げながら、なんとか、外に脱することが出来た。
岡田「やっと、出れた」
妖怪「ちょっと、なんであんた出てきてるのよ!大人しく私の子供達の餌になりなさい!」
オネェ系妖怪が再び、洋子に手をかざして糸を吐きだす。
走って逃げようとしていた洋子を背後から、糸が絡め取り身動きが取れない。
岡田「ちょっと、離してよ!誰が、あんな気持ち悪い生物の餌になんてなってやるもんか!」
妖怪「小娘ごときが、生意気に暴れてるんじゃないわよ!とっとと、繭に戻りなさい!」
オネェ系妖怪が腕を引き、せっかく這い出た繭の中に洋子を引き戻そうとする。
岡田「嫌だって、言ってるでしょ!」
洋子も必死に足を踏ん張ってそれに対抗するが、羽ばたきながら後退している相手に対して力負けしており、じりじりと、元の繭の中に戻されそうになる。
繭の中では、洋子が開けた出口に幼虫達が集まり、餌はまだかと待ち受けている。