トリップorラビューン
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その日の夜、昼間の内に岡田も交えて一行が旅に必要な荷物を買い終えて、宿の大部屋にて5人で夕食を取っている時の事。
悟浄「あぁ、そう言えば、八戒。前の彼女の事、振り切れたのか」
唐突に、悟浄が八戒に話を振った。
岡田「え?八戒さん、彼女いたの?」
出会った当初は敬語だった岡田一行と一日を過ごして口調がいくらかいつもの調子に戻っていた。
岡田としては、八戒のことがちょっといいなと、思っていたのでこの手の話に敏感である。
悟浄「あぁ、俺達と出会う前にな。でも俺らは会ったことないし、俺なりに今回の洋子ちゃんが元の世界に戻る方法を考えてみたんだけど、俺は八戒からストップかかってるから対象外だろ?三蔵様はそもそも女に興味がないから論外。悟空は女よりも食い気だから、パスな。って考えると残るのが八戒なんだよ。けど、男と女の関係ってさ、昔の事引きずってるとうまくいかないっていうじゃん。で、聞いてみた」
八戒「なるほど、悟浄なりに自粛して考えた答えがそれですか。確かに、現実問題として、洋子さんをこの世界に送り込んだ観測者が現状に飽きるまで、洋子さんを僕らと共に行動させるのは難しいでしょうねぇ。妖怪との戦闘に巻き込まれたら非戦闘員の彼女は皆を危険に晒します。ここは言葉は悪いですが、手っ取り早く誰かとくっついてもらって帰ってもらうのが妥当でしょうねぇ」
悟浄の発言に、八戒が冷静に答える。
悟浄「で、実の所どうなのよ、花喃のこと、忘れられそうか?」
岡田「花喃?それが、八戒さんの昔の彼女さん?」
首を傾げる岡田に、八戒はどこか苦しそうな笑顔を浮かべて嗤う。
八戒「まぁ、一応、死別はしてるんですけどね。状況が状況でしたし、僕らの関係も普通とは異なりましたから、正直、花喃のことを忘れろと言われても無理でしょうねぇ」
(嘘っ!じゃぁ、私の恋、叶わないじゃない!)
せっかく、八戒に対して芽生え始めていた恋心が、岡田の中で凍え始めるのを感じる。
岡田「あ、あの!私、ちょっと、トイレ行ってきます!」
八戒「あ、洋子さん?」
がたたっと音を立てて、席を立ち部屋を後にする。
トイレなんて嘘だった。
自分にあてがわれた部屋に籠り、布団を頭からかぶって気持ちを落ち着かせようとする。
(・・・叶わないって決まったわけじゃ、ないよね?ただ、八戒さんが昔の彼女が忘れられないってだけで・・・そもそも私、外の世界の人間だし、この世界の、しかもすでに死んでる人に嫉妬してどうするの?・・・あー、でも、せっかくいい人に巡り合えたと思ったんだけどなぁ。諦めなきゃダメかなぁ・・・)
どれくらい、そうやって自分で考え込んでいただろうか、突然、部屋の扉がノックされた。
八戒「洋子さん、大丈夫ですか?なかなか戻ってこないので、お部屋に戻ってるかと思って。もう、食事も片づけてもらっちゃたんですが、大丈夫でしたか?」
(八戒さん!ど、どうしよう、なんて、答えよう・・・)
岡田「あ、あの、そのっ、途中で食事、抜け出してごめんなさい。その具合とかは悪くないですから、その、えっと少し、一人にしてもらえませんか?」
八戒「えっ?大丈夫ですか?口調も敬語に戻ってますが、何か失礼なことしました?」
岡田「な、何でもないです!少しほっておいてください!!」
少し大きな声を出して、八戒を拒絶する。
今はとにかく一人になりたかった。
八戒とは特に話したくなかった。
好きだと意識し始めていたが故に、昔の女が忘れられないという男の人との恋を、いまいち受け入れられずにいる。
暫し沈黙が続いた後、八戒が告げる。
八戒「洋子さんの体調に異変がなければ、いいのですが。何かあったら大部屋の方に来てくださいね?僕ら、意外と夜型なんで、遅くまで起きてますから」
それだけ言い残し、遠のく足音。
一瞬、ほっとした陽子の部屋に、5分と経たず、ドダバタと足音が近づく。
今度はなんだろうと、息を潜めていれば、いきなり扉が開く。
悟浄「洋子ちゃん、大丈夫か!鈍感八戒に傷付けられてない?」
悟空「なぁ、なんで俺らまでついてこなきゃいけないんだよぉ」
三蔵「おい、エロ河童。八戒だけ部屋に残して何企んでやがる」
入ってきたのは、悟浄、悟空、三蔵の三人だった。
どうして、この三人が入ってきたのだろう?
疑問ばかりが岡田の頭の中を駆け巡る。
岡田「あの、何の用ですか?私、さっき一人にしてほしいって八戒さんにお伝えしたのに」
悟浄「あーぁ、口調、敬語に戻っちゃってるし。この分だと、八戒の野郎、やらかしたな。いやさ、八戒がショゲて帰ってきたから、何事か聞き出したら、洋子ちゃんの様子がおかしいから、嫌われたかもしれねーっていうから、様子確認しに来たんだよ」
悟空「だからって、俺らまで連れてくることないじゃんか!」
悟浄「馬鹿猿は黙ってろ!ここは、ふざけたトリップ野郎を見返すためにも、洋子ちゃんの恋を成就させて、幸せな思い出持ち帰ってもらおうぜ?そのためにはだなぁ、八戒に知られないようにうまく俺らがサポートしなきゃないの!」
三蔵「そんなくだらねーこと、一人でやれ。俺まで巻き込むな」
ガチャリと拳銃の安全装置を外す音。
なんとなく、岡田でもこれは三蔵の第一段階の怒りの表現なのだと理解し始めていた。
岡田「あの、私、たぶん、すぐに飽きられますよ。きっと恋なんて無理だったんです。元の世界でも恋愛ごととか全然向いてなくて、彼氏もいたことなくて。だからきっと今回もダメなんです。たぶん、明日の朝には観測者に飽きられて、戻されるんじゃないかな?せっかく、私、八戒さんの事、好きかなって思えるようになったのにっ」
知らず知らずの内に、頬に涙が伝う。
敬語も喋るに連れて段々、抜けていって、素の喋り方になっていた。
泣きながら改めて、自分は恋をし始めていたのだと自覚する。
八戒さんになら、心を開いてもいいかなと思えていたのに、昔の人が忘れられないという一言が棘のように刺さって抜けない。