紅と藍の邂逅
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乾いた風が吹き荒ぶ荒野。
今日も、西を目指す三蔵一行は、妖怪の襲撃を受けていた。
悟浄「だぁー!毎回毎回、こいつら飽きないよな!」
悟空「俺、腹減るから、あんまり動きたくないんだけど!」
八戒「仕方ないですよ、この人達もシゴトで来てるんすから」
悟浄「なぁ、いっそ、誰かさんの経文、渡しちゃった方がラクなんでない?」
ガウン!ガウン!ガウン!
悟浄の顔面すれすれを3発の銃弾が駆け抜けていく。
彼の背後にいた妖怪達が、音も無く崩れ落ちた。
三蔵「もう一回、言ってみろ、クソ河童。次、言ったら、貴様の脳天に風穴開けてやるよ」
悟浄「うっわー、おっかねぇ」
そんな他愛のない戦闘中のいつもの会話に、突如、乱入者の声が入る。
「これは、随分な数の妖怪だな。狩りのしがいがありそうだ!」
突然の女の声に、一行の動きが止まる。
それを好機と取った妖怪達が、一行に遅いかかろうとするが、鋼の巨大な双剣が彼らを切り刻んでいく。
悟空「おわっ!なになに!女の人?」
「妖怪倒すのが、女で悪かったか?俺は妖怪退治屋だよ。詳しい挨拶はあとだ。これだけの数だ、あんた達だけでもやれるだろうが、手伝ってやるよ。探してる妖怪がいるんだ」
言いながらも、妖怪達の間を巨大なクナイが舞い踊り、夜色の長い藍色の髪が、遅れてふわりふわりと舞う。
八戒「これは、予想以上の援護ですね。ここは彼女の好意に甘えましょうか、ね、三蔵?」
三蔵「るせぇ、女なんぞの手を借りなくとも、こんな奴ら片付けてやるよ」
悟浄「はは、三蔵様らしい発言だぜ!」
そう言って、沙悟浄もご自慢の錫杖を奮って鎖鎌で、敵を切り刻んでいく。
八戒「じゃぁ、僕も行きますか!」
沙悟浄に続いて、猪八戒も、気孔を放ち、妖怪達を撃破していく。
玄奘三蔵は、無言で拳銃をぶっ放し、孫悟空は如意棒で、敵をなぎ倒していく。
彼らの士気を上げるように、謎の妖怪退治屋が振るう巨大なクナイが刻んでいき、戦闘は終了した。
八戒「ジープ、降りてきていいですよ」
敵のいなくなった荒野に、空から白い小さなドラゴンが、彼の元へと舞い降りてくる。
「変わった動物を連れてるな。そいつは何だ?」
戦闘に途中参加した妖怪退治が声を発しながら瞬きをする。
すると巨大な2本のクナイの双剣は、光となって収縮して、彼女の首元へネックレスとして収まった。
長い藍色の髪をポニーテールにして、簡易的な防具を身に着け、黒いコートを着た謎の妖怪退治屋。
髪と同じ、藍色の瞳に興味の色を示し、ジープを眺める。
悟空「ジープだよ。こいつ、車にもなるんだぜ」
にかっとした笑みを浮かべて、退治屋に近付く悟空。
悟空よりもやや身長が小さめだが、自身より大きい武器をなんなく使いこなす彼女は、戦闘には慣れている様子。
「へ―、変わってるなぁ」
退治屋の目の前で、ジープは車へと姿を変えた。
「うわっ、マジで車になったし・・・移動に便利そうだな」
マジマジと、ジーブを眺めている女妖怪退治屋に、悟空が気軽に声をかける。
悟空「ねぇ、ねぇ、良かったらさ、おねぇさんも、一緒に次の町まで行かない?すっげー強いし、俺、次の襲撃あったら動きたくないもん」
悟浄「おい、バカ猿。レディを働かせて、自分だけ楽しようとするんじゃねぇよ」
悟空「えー、だって俺、もう、お腹空き過ぎて、あんま動きたくないんだもん」
「くっく、面白い奴らだな。挨拶が遅れたな。俺は、鬼宮凛華。苗字でも下の名でも、好きなように呼んでくれていい。俺も次の町まで行かなきゃないし、乗せてってくれるなら助かるな。俺に出来ることがあれば、力は貸すよ?」
悟空と悟浄のやり取りに笑みをこぼしながら、妖怪退治屋が名乗りと提案をする。
八戒「だ、そうですよ?どうします。三蔵?」
三蔵「腕の立つ護衛が居ても、たまにはいいだろ。次の町まで、食料も時間もない。乗るならとっとと乗ってけ」
悟浄「そうと決まれば、ささ、どうぞ、お姫様?」
丁寧に腰を折って、手を差し出す悟浄に、鬼宮は戸惑う。
鬼宮「あー、悪い、そういう女の子らしい扱い、されたことねーんだわ。もっと気軽に扱ってくれていい。それにお姫様ってなんか、むずがゆいよ。鬼宮か、凛華で頼むわ」
恥ずかしそうに、夜色の前髪をかき上げて、答える鬼宮の手を悟空が掴む。
悟空「じゃ、早く行こうぜ、鬼宮!」
鬼宮「あぁ、よろしく。えーと」
悟空「あ、俺、悟空。そっちの背の高い赤いのがエロ河童」
悟浄「おい、クソ猿!人の事なんつー紹介しやがる!俺は、沙悟浄だ。悟浄でいいぜ。ささ、凛華ちゃんは、俺の隣にどうぞ」
八戒「僕は、八戒です。もう助手席に座ってるのは、三蔵です。凛華さん、悟浄の隣は気を付けてくださいね?」
鬼宮「何か、あるのか?」
三蔵「エロ河童は、手が早いからな」
鬼宮「???よく、分からんが、気を付けよう。俺、一人旅長かったからな。世話になるよ」
会話をしながらも、三蔵一行は定位置に、鬼宮は、悟空と悟浄の間に座る。
悟空「じゃ、しゅっぱーつ!」
八戒「はいはい、では、飛ばしますよ」
八戒の言葉を合図に、ジープが走り出す。
鬼宮「うわっっと!」
あまりの勢いに、後ろに転げ落ちそうになる鬼宮を悟浄が支えた。
悟浄「しっかり、捕まってないとあぶねーよ。凛華お嬢様?」
鬼宮「なっ、え。・・・か、顔、近い」
腕を引っ張られて引き戻されたが、悟浄との距離が急に近くなり赤面する鬼宮。
悟浄「あららん?もしかして、こういうの、初めて?その先も?」
悟浄が面白半分で、鬼宮に顔をさらに近づける。
顔がくっつきそうな程近くて、彼女は反射的に、空いてる手で平手打ちした。
パーンといい音が辺りに響く。
鬼宮「ば、バカを言うな!ちょ、ちょっと、驚いた、だけ、で。てか、その先とか、恥ずかしいこと、言わせるな!」
完全にそっぽを向いて、悟空寄りに座り直す鬼宮に対して、悟浄は(ウブで可愛いな)と思ってしまった。
悟空「やーい、悟浄、嫌われてやんの!」
鬼宮「い、いや、嫌ってるわけじゃ、えと、その悟浄。い、今のはだな。その、えと、反射的な物で、なにかを意識してとかじゃないからっ」
悟浄「だいじょーぶ、だいじょーぶ。女の子の平手打ち位で、へそ曲げたりしないから、俺。懐、デカいのよ?」
そう言って、元気な笑顔を見せる悟浄の顔には、きっちり楓マークがついてしまっている。
いたたまれなくて、鬼宮はそっと、目をそらした。
鬼宮「ご、ごめん、自分。そういう、加減、慣れてない、から」
下を向いて、顔を前髪で隠している鬼宮が愛らしくて、悟浄は思わず、その頭に手を置いてくしゃくしゃと撫でる。
悟浄「気にすんなって。慣れてない事されたら、誰だって驚くしぃ。男と女なら尚更じゃん。俺、マジで、気にしてないから。顔、上げなって」
鬼宮「ほ、ほんと、に?」
恐る恐る横目で、悟浄の様子を探る鬼宮の姿も、彼の心を揺さぶる。
(やべ、すっごい、可愛いわ、こいつ)
男所帯で、長い間生活していたせいか、久々に感じる女性への感情に、心躍らせる悟浄であった。
三蔵「からかうのも、その程度にしておけ。エロ河童。おい、女!悟浄にだけは気を付けろと言ったろが」
鬼宮「女だからって、舐めるな!てか、名前で呼べよ、クソ坊主!」
三蔵に女呼ばわりされて、反射的に顔を正面に挙げて、彼に食って掛かる鬼宮。
三蔵「あぁん、俺に喧嘩売ろうってか」
どすのきいた低い三蔵の声。
彼はやや振り向き加減で、鬼宮を見やる。
そこに、悟浄が割ってはいった。
悟浄「まぁまぁまぁ、三蔵様。ココはひとまず俺の顔に免じて許してやってくんね?凛華ちゃんは悪くないし」
三蔵「元はと言えば、お前らが悪いのだろうが」
フンと鼻を鳴らして、三蔵は腕組みをする。
鬼宮「いや、俺の不注意だ。悪かった。あと、あんたら、もしかして、あの有名な玄奘三蔵一行、だったりする?」
三蔵が前を向いて、険悪な雰囲気が落ち着いたので、改まって鬼宮が問うた。
それに答えたのは、悟空だ。
悟空「え?そうだけど、なんで、鬼宮が知ってんの?」
鬼宮「玄奘三蔵一行と言えば、退治屋の間でも有名だよ。三人の妖怪を連れた法師が西を目指して旅してるって。でも、こうやって会ってみれば、実際妖怪なのは、2人だけで、悟浄は半妖なんだな」
悟空「はん、よう?」
鬼宮「あー、一般的には、禁忌の子って言った方が通じるか?妖怪と人間の間に生まれた子供の事。俺ら退治屋の間では、それを半妖って呼ぶんだよ。半分だけ、妖怪の血が流れてるから。でも、実際、こうして見ると綺麗な色してるな。まるで、血の色みたいだ」
今度は、鬼宮が悟浄に向かってにかっと笑う。
悟浄「なっ」
不意の笑顔に、身を引く悟浄である。
悟浄「・・・別に、好きで、こう生まれたわけじゃねーし」
暗い表情で答える悟浄に、鬼宮が慌てて謝罪する。
鬼宮「あっ、気を悪くさせたなら悪い。俺、赤って色が単純に好きなんだよ。こういう職業柄、血を見る機会が多いってのもあるけど、純粋に、生きてる証拠って感じがして、さ」
身振り手振りをつけて、謝罪を示す鬼宮に、今度は悟浄がきょとんとする。
悟浄「生きてる証拠って」
鬼宮「あー、うー。ほら、怪我とかするとさ、血が出るじゃん。すっげー痛いんだけど、俺、その血の赤を見てるとさ、安心するんだよ。別にマゾとかじゃなけど!ほら、なんつーか、まだ、俺は生きてるって実感できるから。だから、俺にとって、赤って特別でさ。安心できる色って言うか、一人で旅してるから、生きてることがたまに忘れそうになることあってぇ」
なんとか説明しようとするも、旨く伝えられないのがもどかしいのか、鬼宮の声は段々尻すぼみになっていく。
鬼宮「だから、さ、悪い気にさせたなら、ごめん!禁忌の子ってさ、髪と眼が紅いってだけで、迫害されて大人に成れない子供多いから、悟浄を見た時に、純粋に、綺麗で力強い色だなって思ったんだ。うんと、えっと、純粋に惹かれたって言えばいいのかな?だー、この話、やめよ!自分で言ってて恥ずかしくなってきた!」
懸命に弁明したかと思うと、ふいっと、悟浄に背を向ける鬼宮に対して、悟浄は不埒な感情を抱いていた。
(何この娘、超可愛いんだけど)
我知らず、口元に手を当てて、悟浄も背を向けていた。
悟空「悟浄、何、やってんだ?」
悟空の一声に我に返る悟浄。
悟浄「い、いーや、別に、何も!てか、あれ、見えてんの、町じゃね?」
悟空の声に、半分裏がった声で返して、前方を指さす悟浄。
彼の言う通り、町が見え始めていた。
八戒「いやぁ、女性がいると、いつもの不毛な争いがなくていいですねぇ。町もすぐに着きそうですし」
ニッコリ笑顔で、答える八戒に悟浄がぶっきらぼうに食って掛かる。
悟浄「不毛な争いなんて、してねーっつの」
八戒「そうですか?今日は、三蔵の銃声が聞こえなくて、いい日じゃないですか」
悟空「あ、そういえば、ハリセンもないや。三蔵、どっかおかしくなった?」
三蔵「どこも、おかしくなってねーよ、下がってろ、バカ猿」
悟空が前に身を乗り出せば、相変わらずの不機嫌そうな声が返ってきた。
鬼宮「なぁ、三蔵って、あの顔で、けっこう沸点低いのか?」
悟浄「あぁ見えて、けっこうな。煙草切らした時なんか、最悪よ」
悟空と三蔵のやり取りを見て、鬼宮と悟浄がひそひそと話す。
さっきまでの気まずい空気はなく、むしろ、三蔵に対しての憐みの情が深い。
三蔵「おい、女!いつ俺をそんな目で見ていいと言った!貴様の脳天にも風穴開けてやろーか?」
いつもの切れかける寸前の三蔵。
鬼宮「うわー、綺麗な顔して言ってること、こわーい」
悟浄「だろ?いつもだと、ココで弾丸が飛んでくるから、鬼宮ちゃんも気を付けてねー」
鬼宮「うん、そうするー」
三蔵「貴様ら、どこぞの高校生か!」
八戒「ほらほら、そんなこと言ってる内に着きましたよ」
三蔵の鋭い突っ込みを八戒が遮った。
三蔵「ちっ、貴様ら、あとで見てろ」
半分立ち上がって、後ろを向きかけていた三蔵は、どかっと座席に座り直す。
鬼宮「あー、怖かった。この中で一番、ヤバいの三蔵じゃん」
それをみて、ボソッと呟いた鬼宮の言葉を聞き漏らさずに、三蔵の鋭い突っ込みが入る。
三蔵「ぁあ!なんか言ったか!」
鬼宮「いいえー、何にも!」
姿勢を正して答える鬼宮に、フンと鼻を鳴らして、前を向く三蔵であった。
早くも三蔵の扱い方を学び始めている鬼宮を、(何気に順応性、高いのね)と何気なく観察していた悟浄だった。