紅と藍の邂逅
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鬼宮「あのな、悟浄。落ち着け。俺は・・・ある妖怪を狩り損なった時に、仲間も失ったんだよ。奴は、幻術師だった。俺の仲間は、皆そこそこ腕の立つ退治屋だった。けど、俺を残して仲間は全滅した。どうして俺だけ生かされたのか、今でもわからない。幻術師に操られて、互いに殺し合う仲間を止める方法は、殺してやるしかなかったんだ。信頼していた仲間を手にかける痛みはあまり心地のいいものじゃない。あの痛みを他人に負わせるくらいなら、自害した方がいい。それが、俺の答えだ。信じていた仲間を殺すだけの覚悟がお前らにはあるのか」
飲んでいたジョッキを置いて、静かに一行を見つめる鬼宮。
それに答えたのは、三蔵だった。
三蔵「くだらんな。そもそも、こいつらは仲間じゃない」
鬼宮「なんだと?ずいぶん、仲よしさんに見えるが?」
静かな三蔵の声に、鬼宮は眉をひそめる。
三蔵「こいつらは、単なる腐れ縁だ。もし、こいつらが俺の進む道を阻むことがあれば、容赦なく排除する。それだけだ」
鬼宮「薄情だな。玄奘三蔵と言うのは。まぁ、実際、その瞬間になれば、人の心など簡単に折れる。その覚悟が貫き通せるものかどうか、見定めてみたい気もするが、俺は西に行かねばならん。奴が、西方の玉面公主の元についたと情報が入ったからな。ついでに負の波動の原因も着き止めてやるさ」
三蔵「それは、俺達の仕事だ。下手に横槍を入れられるのは、不愉快だ。貴様が探す妖怪が玉面公主の元にいるのなら、行先が同じだ。共に行動してやっても構わん」
鬼宮「随分と上から目線だな。大切にしていた奴らの命を自らの手で奪ったこともない甘ちゃんが、デカい口を叩くな」
静かに、三蔵と鬼宮の間に火花が散る。
二人の険悪なムードを壊したのは、悟空だった。
悟空「あのさ、鬼宮も西、目指してんだろ?行先一緒じゃん?なら、行こうぜ?ほら、鬼宮に何かあった時は、悟浄がなんとかするって、昨日言ってたんだろ?な、悟浄!」
それまで、居心地悪そうに、長身を丸めていた悟浄が、ピクリと反応する。
悟浄「・・・あぁ。嘘なんかつかねーよ」
低く、まっすぐに鬼宮を見つめて紡がれる言葉。
また、トクリと鬼宮の心の内で鼓動が鳴った。
(昨日からこの胸のざわめきはなんだ?俺は、あいつに何を期待している?)
眉間に皺を寄せて、自身の心の変化を整理しようとする鬼宮だが、正体が掴めないまま、苛立ち任せにジョッキに残っていた酒を飲み干す。
八戒「じゃぁ、話は決まりですね」
鬼宮「あ?八戒。何を言ってやがる?俺は同行しないぞ」
三蔵「話を聞き洩らしたか。退治屋。お前は俺らの役に立つから連れて行く。反論は許さん」
鬼宮「は?三蔵まで、何言いだすんだ?行かないと言ってるだろうが」
悟空「え、だって俺ら、行先同じなんだろ?三蔵もいいって言ってるし、問題ないじゃん?」
鬼宮「だから、俺は一緒に行かないとっ」
流れについていけず、反論しようとしている鬼宮の言葉を、悟浄が制した。
悟浄「凛華ちゃんはさ、怖いだけじゃいのか?仲間の命を奪ってる経験があるから、その罪悪感を誰にも残したくないんだろ?だいじょーぶ。俺らそんなに弱くねーから!俺が責任もって凛華ちゃんのことは見るから」
鬼宮「あのなぁ、そう簡単な話じゃ」
三蔵「恐れてどうする。人はいつか死ぬ。どんな形であれ、な。だから、死に際の事よりも今、どう、生きるかが問題なんじゃないのか。どうせ、生きるってことは死ぬまでの悪あがきだ。なら、最後まで足掻き切ってやろうじゃないか。それが、玄奘三蔵が説く無一物だ」
食後の煙草をふかして、三蔵が告げる。
その言葉は、何故か、すとんと鬼宮の心の中に入っていく。
(なんなんだ、こいつら。俺の心の内なんか知った事じゃないみたく、好き勝手言いやがって・・・けど、いつか死ぬなら、その時は・・・)
鬼宮はずっとこちらを見ている悟浄に視線を合わせる。
血のように紅い瞳に宿るは強い意志。
その紅い瞳と髪を見つめて、彼女は決断した。
鬼宮「・・・奴を、俺に呪いをかけた妖怪を探し出して殺すまで、だ。それまでは、一緒に居てやる。お前ら、、行き当たりばったりで旅してるみたいだし、見ていて危なっかしい。妖怪退治の専門家として、追従してやるよ」
悟空「やったー!鬼宮!これから、よろしく!」
真っ先に、悟空が鬼宮に抱き着く。
悟浄「おい、悟空!俺の女に手を出すな!」
鬼宮「俺は、お前の物になったつもりはない」
悟浄「そんなぁ、凛華ちゃん、冷たい」
立ち上がって悟空に食って掛かろうとした悟浄だったが、鬼宮に軽く拒否されて、肩を落とす。
八戒「じゃぁ、食事も終わって、話もまとまりましたし、そろそろ、出発しますか」
ニッコリ笑顔の八戒が場を収めた。
鬼宮「だな。悟空、離れろ。行動の邪魔だ」
悟空を引き剥がし、長い夜色の髪を閃かせて、席を立つ鬼宮。
一行もその後を追う。
こうして、玄奘三蔵一行に、新たに呪い持ちの妖怪退治屋、双剣使いの鬼宮凛華が加わった。
沙悟浄が、彼女の凍えた心を溶かすのは、まだもう少し時間がかかりそうな、そんな予兆のある出会いの場であった。
―紅と藍の邂逅、完ー