紅と藍の邂逅
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鬼宮「・・・それ、で?」
悟浄「お前も、紅い色が好きとか言いながら、自分の色、否定してんだろ。そんなんじゃ、前に進めないって」
鬼宮「るせぇよ。どうせ俺は、夜だ。夜は全てを闇に屠る。夜に包まれてれば、紅い月も見なくて済む」
悟浄「けど、それ。単に、逃げてるだけじゃん。お前は、紅い色に負けてるんじゃねぇ。紅い月にだけ体が反応しちまってるだけだろ?なら、簡単だ。もし凛華ちゃんが暴走しちまったら、俺が最後に蹴りを付けてやる。最後くらい、好きな奴に看取られてーだろ?」
鬼宮「・・・訳、わかんねー。好きな奴の死なんて、見たく無い筈だろ?」
さっきから、胸の鼓動が収まらない。
なんで、こんなにこんな男に、ドキドキしてるんだ?
自分は、どこか、おかしくなったのか?
悟浄「ちげーよ。たった一人で、死ぬなんて、悲しい事言うな。凛華ちゃんは、十分綺麗だし、妖怪でも人間でも、俺には関係ない。俺は、凛華ちゃんが好きだ」
鬼宮「・・・わけがわかん。好きとか、嫌いとか。他人からの好意なんて、邪魔なだけだ。俺に構うな!俺は、孤独でいい。そう決めて、生きてきたんだ。そう易々と生き方なんか変えられるもんじゃ」
悟浄「意外と、そーでもねーよ」
鬼宮の言葉を、静かに悟浄が遮った。
それは、悟浄自身の経験からの言葉だった。
それをどこかで感じ取ったのか、鬼宮は黙り込む。
鬼宮「・・・悟浄は、何か、紅い色が、好きになることでもあったのか?」
悟浄「まぁ、な。俺様こうみえて、人生経験豊富ですから?」
適当にはぐらかす悟浄に、ついに鬼宮がクスリと笑った。
鬼宮「自分も・・・いつか、自分の色が好きになれるかな?」
悟浄「俺が、そうさせてやるよ。俺ら、今夜みたいに、紅と藍じゃん?さしずめ、凛華ちゃんは夜空そのもの、俺は、夜空に浮かぶ紅い月。なら、今の空見たく、互いに共存してもいいんじゃね?」
鬼宮「半妖と妖怪が、慣れ合うか。変な組み合わせ」
くすくすと笑う鬼宮。
なんとなく、こいつになら、心を許してもいいかと、そう思い始めている鬼宮の耳元で、悟浄が囁く。
悟浄「俺の事、好きになってくれる?」
鬼宮の心の中で、またトクンと鼓動が弾んだ。
耳元で低く囁かれる声に、鬼宮は心の中で凝り固まっていた物が、少しずつ溶けていく気がした。
鬼宮「薬の回ってる体で、女抱き込む奴なんか、そんな簡単に好きになってやらない」
悪戯な笑みを浮かべて、鬼宮はくすくす笑った。
妖怪の姿で、こんなに心から心地よく笑ったのは、初めてだった。
悟浄「やっと、笑いやがった。やっぱ、女の子には、笑顔が一番だ」
鬼宮「悟浄って変な奴だな。今日は、毒も回ってるんだ。ゆっくり休め。俺は、どこでも寝れるから」
そう言って、体を離そうとする鬼宮を、きつく抱きしめる悟浄。
悟浄「離してやらない。俺、気に入った女は、離さねータチなの♪」
鬼宮「ちょ、悟浄!離せって!恥ずかしいっ」
悟浄「離さねーよ。好きだもん」
悟浄の声には、明るい笑み。
鬼宮「ったく、お前が、俺の事、好きになる理由なんか、わかんねーけど、今晩だけ一緒にいてやる。離してくれないなら、何もしないって条件で、このままでいてやる」
悟浄の声に、毒気を抜かれて、大人しく丸くなる鬼宮。
悟浄「そそ、大人しくしてれば、可愛いんだから」
鬼宮「自分は、可愛くなどないっ」
悟浄「あら?そう?体温、上がったみたいだけど?凛華ちゃん、さっきより、暖かいよ?」
そう言って、さらに強めに抱きしめる悟浄。
それに対して、慣れていない鬼宮は、顔を赤くして、布団に顔をうずめる。
鬼宮「き、気のせい、だろ!はっ早く、寝ろ!バカ!」
本人は気付いていないが、鬼宮はぎゅっと、悟浄の腕を抱きしめていた。
妖怪の爪で傷つけぬよう、配慮して、その温もりに縋るかのように。
悟浄「へーい、おやすみ、凛華ちゃん♪」
それに気付いてる悟浄は嬉しげに笑って、長い鬼宮の髪に顔をうずめる。
悟浄「あぁ、やっぱ、女の子の髪って、柔らかくてさらさらしてて、気持ちいいな。寝心地良さそ♪」
鬼宮「ちょっ、人が動けないことをいいことに、髪を枕代わりにするな!」
悟浄「や。気持ちいいもん♪」
嬉しそうな悟浄の声は、やがて、静かな吐息へと変わる。
鬼宮「・・・やっと、毒が利いたか。やれやれ」
そう言って、空を見上げる鬼宮。
そこには、変わらず、闇夜に浮かぶ紅い月。
いつもは、いつ暴走するか分からなくて不安に駆られ眠れない夜。
けれど、今夜だけは、ゆっくり眠れるような、そんな気がした。