紅と藍の邂逅
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鬼宮「・・・悪いな。悟浄。俺、これでも退治屋だから、自衛は自分で出来るんだ。女だし、こういうことも想定して、唇に神経毒、常に塗ってあるんだわ」
鬼宮の声が、どこか遠く聞こえる。
鬼宮「大丈夫だ。軽く体の自由を奪う程度だから、死には至らない。今日はそのまま寝てしまえ」
椅子から立ち上がり、シーツを自身の体から引きはがして、包帯を巻いた上半身を悟浄に晒す鬼宮。
シーツを布団代わりに、悟浄にかけて、背を向ける。
上着を着て窓辺へと近づいていく彼女を止めなければと、悟浄の本能が告げていた。
このままココを出て行かせたら、二度とこの娘は、戻ってこない。
そんな焦りにも似た確信を胸に、動かない体に無理やり喝を入れて、上体を起こして、腕を伸ばす。
悟浄「凛華ちゃ、ん」
悟浄の行動に驚いて、振り向く彼女。
鬼宮「驚いたな。通常の人間なら、動くことすらできないはずの毒なのに、半妖はやはり生命力が桁違いだな」
上着を着て、振り返った彼女の腕に、悟浄の腕が届いた。
がっしりと力強く掴まれた腕を思い切り、引かれる。
鬼宮「ちょっ、まっ!」
思わぬ力の強さに、バランスを崩して、鬼宮は次の瞬間、悟浄の腕の中にいた。
鬼宮「ご、悟浄?!は、離せ!俺は!」
悟浄「離さねぇよ」
耳元で低く囁かれる言葉に、抵抗しようとしていた鬼宮の動きが止まる。
悟浄「離さねぇよ。俺、守りたいから」
鬼宮「守る、だと?俺は・・・妖怪だ。いつ、負の波動に負けて、暴走するか分からないんだ。そんな危険な奴を守るなんて、馬鹿げてる」
抵抗しようとする鬼宮を、強く、ただ強く、抱きしめる悟浄。
悟浄「たった一日だろ。紅い月なんかに負けるなよ。お前、紅い色が好きって言ってたじゃないじゃねーか。なのに、その色に負けてどうすんだよ。こんな綺麗な藍い髪してんのに、紅に怯えてんじゃねーよ」
鬼宮「・・・るせぇ。こんな半端者。暴走したら、誰が、始末つけるんだ。下手に誰かと仲良くなっちまったら、そいつの前から消える時、辛いじゃんか。こんなの、いつまでも隠し通せねぇし」
抵抗できないと、悟った鬼宮は、口だけでも反論する。
悟浄「だから、ずっと、一人で生きてきたのか」
鬼宮「・・・気楽だろ、その方が。いつ、暴走しても、自分で予兆位分かる。その時は、自分で終わらせられるだけの覚悟はある」
静かな声で紡がれる言葉に、悟浄の胸は締め付けられるような痛みを感じる。
暴走が始まったら、一人で自害して、誰にも看取られずに死のうとしているこの退治屋を、悟浄は放っておけなかった。
悟浄「・・・その時は、俺が殺してやる」
鬼宮「は?お前、何言ってっ」
顔だけ動かして、悟浄の顔を見た鬼宮は言葉を失う。
そこには、真摯にまっすぐ、月と同じ紅い瞳が、待ち受けていた。
トクンと鼓動が跳ねたのを自覚した。
(なんだよ、この感情。何、惹かれてんの、自分)
自身の不思議な胸の高鳴りに戸惑って、次の言葉が出てこない。
固まってしまっている鬼宮に再び、悟浄が唇を重ねる。
今度は、中に舌まで入れてくる。
毒は一度しか、塗っていない。
こんな濃厚なキスをするのなんて、初めてだ。
気が付けば、意識を保つのが精一杯で、悟浄が体制を変えて、自身がベッドに押し倒された状態になっているのに、驚く鬼宮。
なんとか、両手で、悟浄の肩を押しのけて、唇を離させる。
鬼宮「てめー、何しやがる!毒で動けないはずの体でそんなに動いたら、朝まで毒が抜けないだろうが!」
悟浄「るせーよ。惚れちまった女のためなら、男ってのは何でもするもんだ」
自身の腕と、鬼宮に上体を支えてもらいながらも、悟浄は言葉を吐き出す。
鬼宮「はぁ?何、言ってんだ。お前が俺に惚れる要素なんてないだろ?とにかく、寝ろ!」
支えてる腕を、横に押し倒して、悟浄をベッドの奥へと追いやる。
その間に、逃げようと、身をよじる鬼宮の腕を、再び悟浄が掴んで腕の中に収めてしまう。
更に、今度は長い足も使って、彼女を拘束する悟浄。
鬼宮「ちょっ、悟浄、離っせ!」
抱きしめられてる腕を引き剥がそうとして、尖った爪で悟浄の腕に傷を付けようとするが、躊躇いと視界に入った自分の爪が憎らしくて、鬼宮の動きが止まる。
鬼宮「クソっ、離せ!悟浄っ!俺の事なんか、ほおっておけ!」
言葉で反論するが、悟浄は黙ったまま、離してくれる様子はない。
悟浄「・・・暴れんなって。俺だって体痺れて体動かすの、もう限界、なんだぜ?」
鬼宮「だったら、とっとと離せ!俺とお前は、他人だろ!これ以上、しつこいと叫ぶぞ!」
悟浄「・・・俺ら、似たもん同士だろ?俺も、昔、紅が嫌で、嫌でしょうがなかった。けど、今は、昔ほどじゃねぇ」
どこか、覚悟を宿した静かな声に、鬼宮は暴れるのをやめた。